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自分語り Part2(前編)

ごめんなさい、Part1から恐ろしいほど時間を空けてしまいました。

今年度の太鼓の達人楽曲公募もひと段落ついたところで、去年私が応募した楽曲である『Destination 2F29』について掘り下げていこうと思います。

その時の曲↓

※曲の詳細な構成や理論なども交えた話は後編に回す予定です。


参加動機とひとつ前の公募について

ご存知の通り、太鼓の達人は私にとって一番親しんできた音ゲーであるため、2021年度楽曲公募の話を聞いた時点で興味は湧いていました。
しかし太鼓公募に出る気にさせた最大の要因というのは、実は2021年度公募でのChallengersの採用でした。まるろん氏は元から私と知り合いだったこともあり、太鼓公募という存在がかなり近く感じられた出来事だったと考えています。

これは私の個人的な印象になりますが、太鼓の達人は他の音ゲーと比べてより複雑なリズムの配置に特化した譜面が多いと感じています。5連符やそれを超えた奇数連符の配置を多用した譜面や、異なる分割のテンポを同時再生させる技法を落としこんだ譜面などを見ていただければ分かると思います。

私のこれまでの作風としても、例えばシャッフルストレートごちゃ混ぜのようなリズム的アプローチを深掘りしたような曲を何度も作ってきた(下記資料参照)こともあって、先述の譜面傾向とは一定の相性があると感じていました。2022年度公募では、自分の作風を100%注ぎ込んだ名刺代わりの曲を出して挑むことにしたのです。


準備…あえて非採用作を聴き漁った

実は、実際に楽曲制作を始める前に私が得た情報が2つあり、これらが制作で与える影響は少なからずあったと感じています。

一つは数年間のゲームプレイを通して、推察ではあるが太鼓の達人の譜面の仕様を把握していたことです。
プログラムは運営側でしか覗けない領域のため、有志が太鼓の達人のあらゆる譜面を分析した結果得られた仮説(…だと私は認識しています)ですが、仕様として譜面の作り方には以下の制約があるらしいのです。

・ノーツ同士の間隔は、48分音符(16分音符の1/3の長さ)が最小単位
・48分音符で刻まれたグリッドに当てはまらない音符間隔(32分音符や5連符など)は、"そのままでは"配置することができない

これを信じて『Destination 2F29』では、太鼓チームが譜面制作を円滑に進められることを願い、
・5連符や9連符は『Challengers』などでの配置方法を参考にして、処理しやすいような音の置き方をする
・必要性の薄い32分音符はできるだけ置かない
といったことを頭に留めながら制作しました。

もう一つは、2021年度公募で『佳作』をつけられた曲とそのコメントを一通り読んだことです。

もちろん過去の公募での採用作品とその譜面を鑑賞することでも学びを得ることができますが、採用に一歩届かなかった佳作を聴くことは、選考者のコメントからその曲に何が足りなかったのかが分かるという採用作品にはないメリットがありました。実際に読んでみたところ、採用しなかった理由としては下のようなコメントが多かったように感じられます。

・曲構成に明瞭なコントラストが欲しい、曲としての個性が足りない。
細かい音を置きすぎていて、(主に下位コースの)譜面に落とし込みづらい。
音ゲーに疎い人でも馴染めるような作風ではない。

特にsteμさんはそれぞれの公募楽曲をかなり深く分析してくれていました

今でもこれらの指摘は、太鼓がターゲット年齢層の広いゲームであることから重要な視点であるように思えます。この点を踏まえて、曲構成自体においては、「無窮動になりすぎず、口ずさめるような旋律はどこかに入れる」「下位コースで拾えるような、リズムが単純な音も入れる」などの方針を立てるに至りました。

ちなみに私は佳作の中では7maiさんの『Lumiere』が一番好きでした。

戦略と見え透いてくるタイトルの意味

ドンだーとしての私は低速耐性リズム分析の早さにある程度の自負があり、当時私が譜面として最も好きだったのが、『ラ・モレーナ・クモナイ(裏譜面)と『What's in the box?』でした。『Destination 2F29』においてどんな譜面をつけて欲しいかを考えた時、この2曲が大きなリファレンスになったことは明言しておきます。曲の基本BPMが241.46なのは、譜面中でHS(スクロール速度)0.5を掛けて見た目BPMを120.73にしてもらう想定だったからに他なりません。

参加したことのある人にしかわからない話なのですが、太鼓公募では曲を送信する際に選考者に向けてコメントを添えることができます。私は当時以下のような(原文が失われたため記憶から補完)文言を書き記しました。

太鼓の達人は、新たなリズムを追求して他の音ゲーには無いような譜面傾向を常に作り出していくのが強みであり、私自身もその個性に魅了されてきました。
この曲が、今後の新たな譜面傾向を生み出す手助けになれば幸いです。

12073

私はこの曲を採用してもらい、太鼓チームが模索する新たな傾向の譜面のひとつの提案をする心持ちで『Destination 2F29』を応募しました。Destinationは「目的地」を意味し、2F29は16進から直すと「12073」= 私自身を指します。『太鼓チームの目指す新たな場所として、私の持つリズムアプローチはいかがでしょうか?』 というのが、曲名が持つ真の意味なのです。


次回に続く




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