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遺伝かなあって言えるのうらやましいわあ

と、長女がさらっとつぶやいた。

夫の親族は皆やたらと食欲旺盛で胃袋がたくましく、総じて皆長命で、これってそういう家系なんやろなあ、遺伝かなあという話になった時のこと。

「遺伝かなあって軽く言えるのうらやましいわあ」
と長女。

ちなみに長女は、とてもスリムで食欲もそこまで旺盛ではなく、脂っこい食べ物を一切好まないにもかかわらず、コレステロール値が基準より高いせいで毎年検査に引っかかり、毎年採血をしてはまた引っかかる。
最初は食事に気をつけろだの運動しろだのと医師から指導されていたのだが、ある時結局「家族性高コレステロール血症だろうね」という診断になった。
お父さんかお母さんもコレステロール値高いんやろ?と医師に言われたが、我々夫婦は全くそうではなく、考えられることはただひとつ、長女と血縁関係にある人(遺伝上の父か母)がそうなんだろうけれど、それも私たちには実際に確かめようもないのだ。

子どもを迎えるにあたり、子に関する遺伝情報を知る術もなかったことを思い出す。
その当時は、知りようがないものは仕方がない、くらいに思っていたけれど。

わたしがコレステロール値高いのって、私を産んだお母さんもそうだったってこと?マジかーいやとりあえず毎年病院で血ぃ取られるのそろそろイヤなんよねーコレステロール値がノーマルな人から産まれたかったわ!採血めんどくさい!とぶつくさ文句を垂れる長女に、まあ仕方ないやん、学校の検査で引っかかってしもたんやからさぁと応じる。

出生直後からすぐさま個性を発揮してくれ、この上なく扱いにくく、今日に至るまで大小問わず様々なことをやらかし、私たち夫婦を振り回してくれた長女だが、お互い血のつながりの有無などクソ喰らえと真正面からぶつかってガチンコのかかわりをしてきた結果、今の私たちがある。
だいたいのことは何でも言い合える関係だけれど、それでもふとした呟きのなかに、養子当事者である娘にしか知り得ないものを垣間見る。

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