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脳みそに関する反省文

この度は耳から脳みそを出してしまい、大変申し訳ございませんでした。夏の浜辺で熱気に揺らめくパラソルのような色の脳みそだとのご指摘には弁駁の余地はなく、真摯に受け止めて今後に活かしていく所存でございます。
口から脳みそが出た場合、早急にこれを飲み込み、鼻から出た場合は啜れるのですが、耳から出た場合は自身で押し込むしか方法がなく、京都の小料理屋で酒のアテにした生麩のようなその感触を想像するだに逡巡し、結果として三時間もの長時間に渡り脳みそを出しっぱなしにしてしまいました。周囲の皆様におかれましては、私の脳みそのすり潰したピーナッツのような匂いにより空腹を感じさせる結果になってしまい、深く反省しております。
今回脳みそが出てしまった原因としまして、出そうだな、という兆候を感じていたにも関わらずこれを放置し、消しゴムでレシートに印刷された消えない文字を消すことに没頭し続けたことが挙げられ、その結果として、耳から射精するような感覚で脳みそが出てしまいました。
今後の対応につきましては、出そうだな、と感じたときには速やかに舌を引き抜いて頭蓋骨内部の気圧を下げ、脳みそが出ないように致します。その際、舌の付け根と上顎が擦り合わさることにより、カイツブリの鳴き声のような音を立てないことを意識致します。また、万が一脳みそが耳から出てしまった場合はすぐに祖母の形見であるドライヤーにて乾燥させ、マキタのインパクトにて孔を穿った上で黒曜石のピアスを嵌め、匂いが周囲に立ち込めないように細心の注意を払います。それでも匂いが抑えきれなかった場合には周囲の方々の小指の爪を迅速に剥ぎ取り、各人の意識を嗅覚から痛覚へと転換させる等、出来うる限りの配慮をいたします。
耳から脳みそを出してしまったことに関しましては、重ねてお詫び申し上げます。
大変申し訳ございませんでした。

2022年23月√-9日
                      伊藤万次ノ輔

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