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『下津光史・Transient World』アルバムレビュー【音楽】

下津光史

Transient world

はいと言うことで本日は下津光史さんでTransient worldを紹介していければと思います。

今作は下津さんの二枚目のソロアルバムになっていて、

一枚目のアルバムも丁度3年前の1月頃にリリースされたので、

この季節になると下津さんの声が無性に聞きたくなってきます。

前作の1stアルバムはアルバムでは聞くことができなかった

下津さんの弾き語りを音源で聞くことができて、

日曜の木漏れ日を音で体現した様で

安らぎを与えてくれました。

今作は前作とは雰囲気が変わり、バンド編成にて一部楽曲にはヤナセジロウ(betcover!!)、UCARY VALENTINEをゲストに迎えていてこれから行われる東名阪のツアーには『下津光史&THE STRANGE FOLKS』としてバンド編成にてTHE STRANGE FOLKSのバンドメンバーはucary valentine、syu(HAPPY) 、照沼光星 、元踊ってばかりのギターリスト林さんが参加予定となっていて、

踊ってばかりとは違った雰囲気の音楽を楽しむことが出来ると思います。

『下津光史&THE STRANGE FOLKS』ってなんかいいですよね。ディランが参加していたローリング・サンダー・レヴューを連想させられてしまいます。

今作はアルバム発売に伴い下津さんのこれまでの全ての楽曲の詩を収録した詩集も発売されているので、良かったらこちらも読んでみてください。

このアルバムを制作するにあたり下津さんはコメントを残しております。

「2枚目に当たるソロアルバム。 現代を僕なりに生きてみて、出来た楽曲を自分のグルーヴで届けたくベースとドラムも自ら担当しました。 ゲストミュージャンに12年来の幼馴染であるucary valentineと 最近出会った新しい風を吹かせてくれるヤナセジロウ(betcover!!)を迎えました。 少しでも一歩でも平和な穏やかな日々が来ますことを。」

日常の中にある下津さんの視点を音楽を通して飾らずにスーーと入ってくるそんなアルバムになっていると思います。

01. Transient world

キラキラ光るアコギのサウンドが朝焼けと夕焼けの両方の眩しさを体現しつつも

後ろで曲にピッタリと張り付いているベースの音が日常の真っ黒いアスファルトを想起させ、

日常にある幸せや風景、人々、日常をこの曲を通して感じることが出来ると思います。

今作は特に下津さんの日常が曲を通して自分のものになっていく感覚が非常に強いです。

下津さんが見ている物や感じていることがそのまま曲に投影されることによって、

下津さんが見ている景色を音楽と言うフィルターを通して感じることが出来ると思います。

Listen to the my song

痩せてく世界を

弱気に愛を

So Transient world

ひだまりの中

また会えたなら、

あの日のままで

So Transient world

と言う歌詞に

この残酷な世界の現実と個人の生活圏の中で溢れる人々の幸せの間で生まれる感情が詰まっていると感じます。

02. Michel

春風のように爽やかなメロディーに、

煌びやかになるアルペジオ

色気のある下津さんの低音ボイスがどんどん高くなっていく様で

曲はどんどん明るくなり

ヤナセさんのフルートがとても心地よく

フルートと言う古典的楽器がサイケデリックに鳴り響く様が

曲に大きなアクセントを加えます。

「よくぞ生まれて今日まで生きてくれたね」

と言う歌詞にもある通りミシェルとはこの曲のように

愛おしい人を歌っていて、下津さんの愛を感じ取ることが出来ると思います。

それは

03. Super sun goes down にも通じていて


眩しすぎる陽気なメロディーに

求めない何も くりかえす波よ

過ぎ去りし日々の もどらぬおもいよ

置き去りの僕は 時間の渦の中へ

チャイムが鳴って 荷物が届くと

中身も見ずに あなたは泣くの

その音を聴いて 旅立つ決心がついて

眼球の網膜をみかん色に染めるのよ

Super sun goes down

と言う歌詞が普遍的な自然との関係性を歌い

最後は最愛の人と別れる時を

太陽の落ちる時に比喩した

2人別つこの時を みかん色に染めるのよ Super sun goes down

と言う歌詞は美しくも寂しいです。

05. 満月

狼の叫びのように聞こえるフルート

さざなみの音

前半の曲で出会いや生命についての曲でしたが、

5曲目で別れの曲になっていきます。

太陽が出会いを歌い

月で別れを歌い

二つの対比構造を表現しています。

とても切ない歌詞」

「24時間ね

おさまらなくて

眠れない日々を過ごしたよ

そんな季節もさよならね

最後の手紙を綴ったの。」

誰に対しての歌について考えませんが、

この1節がとても切なかったです。

06. ベンガルタイガー

は70年代のジャパニーズフォークロックとサイケの要素が組み合わせって

下津さんのスローで色気に溢れたテンポと声で始まっていくのですが、

曲が進むに連れそれが一つになって

バッキングをも下津さんの声と一体化して1stアルバムのように弾き語りに聞こえてきます。

なぜか分からないですけど、全く関係ないのですが、

江戸時代にタイムスリップしたかのような気分になりました。


07. 愛しのコンピュータ ー

愛しのコンピューターというタイトルとは対照的に

「i don’t like you you don’t like me アオイ光を放って

聞いてもないこと勝手に話すあなた。」

とテクノロジーなしには生きられない世界を皮肉りつつ

テクノロジーのない自然や思い出の美しさを同時に表現する

「美しい思い出は数字にはならないし」

と言う歌詞は真実や本当の美しさを追求する美しい思想が現れています。

バッキングのユカリアンドザバレンタインさんのハモリも非常に美しいです。

08. Rainy sunday blues

個人的にアルバムの中で一番のお気に入りの曲で、

曲のスタートダッシュが疾走感がありながらも、転んでしまいそうな不安定さも同時に兼ね備えられており、

「耳元でルシファーがささやくベイビー心臓半分くれよ。」

下津さんの歌詞では光という言葉が多く登場するのですが、

ルシファーはサタンに変貌を遂げる前の光の天使なんですね。

光と影はいつも表裏一体で、その狂気と美しさのどちらに転ぶか分からないところに

下津さんの美しさの源泉があるのかもしれません。

09. bird song

日常にある美しさが潜むようになってきて

ありふれた奇跡は自分で見つけなければいけなくなってしまった世界で

まだこの世界は美しさに溢れていて、

暴力ではなく平和的な世界は今もこの先もこの世界にはあるんだよと

言われているよう気がする

「僕らが望んだのは鳥籠の中、海や空のない景色ではなく

花をみて笑う、カモメをみて泣ける。ありふれた奇跡を。

いつかこの子達が大人になり

光が差し込むように、何も恐れないで、ビートの奥で、コードの隙間まで」

と言う歌詞からもわかる通り

未来ある子供たちにも平和が訪れるように願う下津さんの美しい心が体現されたソナタです。

私は月へは行かないだろうでも表現されていた、

子供たちを思う優しい気持ちはこのアルバムでも表現されており、

他のアーティストにはない

ありのままの美しい日常や景色を

下津さんのフィルターを通すことで

世界は美しいんだと

何気ない日々に感謝をさせてくれる優しいアルバムです。

カッコつけてはなく、ありのままの音楽が

ここまでカッコよく自然体に鳴り響くことに感動します。

トゲがなく不満をいう変わりに

自分の音楽で世界を変えようという気持ちに勇気を与えられたアルバムでした。

5月にはツアーも予定されているので、ライブを楽しみにしています。

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