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『Japanese Breakfast・Jubilee』アルバムレビュー【音楽】

本日はリトル・ビッグ・リーグのミシェル・ザウナーによるソロプロジェクト、ジャパニーズブレークファストの3rdアルバムjubileeを紹介していければと思うのですが、

前作で母の死を乗り越えることを題材にしたアルバムsoft sounds from another planetはその明るいサウンドと暗い歌詞の対称性で一躍彼女の名を世間に轟かせました。

前作は一貫したテーマの上に様々な楽器やサウンドが交錯することである種の違和感を他の惑星と繋ぎ止めることでジャパニーズブレイクファスト等いう音楽を提示して、彼女のらしさを私たちに認識させ同時に彼女自身のアイデンティティを確立する上で大きな意味を持ったアルバムになったと思います。

今作は前作に比べ尖がなく柔和で前作の死というテーマからは離れ幸福に追求がサウンドや歌詞からも感じることができるアルバムだと感じていて不安から解放された一時的な安心感という言葉が正しいかわかりませんか休息と幸福の間のような音楽をこのアルバムから感じることができると思います。

1. Paprikaはフリートフォクシーズの1stを連想させる中世古代の壮大な雰囲気がドラムやトランペットから繰り出されるのに対し彼女のキラキラ光るハイピッチな声を持った近代ポップの対称性を持って同時にこれまで聴いたことのない高揚感を私たちに与えてくれます。

2. Be Sweet

太陽がギラギラ照らす夏真っ只中の原宿を連想させるシンセサイザーが80年代のトレンディなディスコポップの雰囲気を醸し出したと思ったら、

それは歌詞の If I could throw my arms around you For just another day Maybe it’d feel like the first time Now that you’re away I’ll just spend my life not knowing How it’d feel to...

からも感じ取れます。

5. Posing in Bondage

前半と後半で違う顔を持っていて、

同じメロディーに全く違うサウンドとトーンが鳴らされ、

それはどこか月と太陽のように感じます。

前半のシンセの音が宇宙的で徐ゆったりと奥行きのある広がりを見せていきます。

その広がりを持った壮大な宇宙的なサウンドが後半では徐々に収縮していき燃え上がっていきます。

7. Savage Good Boy

これまで壮大に慣らされてきたサウンドとは対照的にこの曲で子供部屋に戻されたかのような

良い意味で敢えて子供のような幼心に満ち溢れたピアノとウォームなベースとシンプルなドラムメロディーが前半までのシリアスなムードを中和させます。

8. In Hell

このヘルはヘロインのヘルと地獄を掛け合わせていて

オーバードーズで死にゆく愛する人を歌っているのですが、

歌詞とは裏腹にとても穏やかなサウンドトーンが

前作から続いている彼女らしさを感じることができます。

ポッピーなサウンドに隠されている悲しい過去を見るような感覚になります。

9. Tactics

終盤のバラードは中盤のポップな展開からの

奥行きのあるトーンと

一度愛から離れると決意する彼女の失意の念が

Move a great distance from you Cross a sea, keep you from me

という歌詞から感じ取れます。

10. Posing for Carsはゆったりと厚みのあるギターが喪失感を倍増させ、

途中で入るドラムは曲の幅を広げ重く、

寒い日の車の中のような殺風景なんだけど心にあるモヤモヤが彼女の内側で燃えている情景がサウンドから感じ取れると思います。

個人的にはとても良いアルバムのフィナーレだと思います。

全体的に見ると

有名になった自分と有名になる前の自分の心情を上手に融合させ、

その上でサウンドや歌詞この作品の全てで並列と対比を巧みに使い分けている作品だと思いました。

どこか北欧の雰囲気を感じたと思ったら、とてもアメリカンだったり

そして韓国な伝統的な雰囲気も曲の芯に必ずあり、

アイデンティティを確立した彼女が次の進む道を模索する一歩目のように感じました。

大きな世間の期待と自分の音楽性をどう融合してこれからどんな音楽を作っていくのか

とても楽しみです。


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