名曲プレイバック 第2回 サイレントマジョリティー

唄: 欅坂46

作詞: 秋元 康   作曲: バグベア   編曲: 久下 真音

2016年(平成28年) ソニー・ミュージック・レコーズ

 今年一番の驚きとともに迎えられ、あらゆるジャンルの音楽関係者を驚かせたのはこの楽曲であろう。何かを予感させるようなA♭mのキーで奏されるの印象的なイントロとリズムを強調したメロディーにのった強い言葉の数々、そして選抜メンバー20名の真ん中に躍り出た民衆を導く自由の女神。その軍服風の衣装はまさしく、時代に楯突く少女たちの気概を示すかのようだ。

 センターを務めるは、グループ最年少14歳(当時)の平手友梨奈。彼女の姿は時に山口百恵と重ねられ、時にモーセの十戒に例えられ、民衆を導く自由の女神といわれた。フッと流す目線、強くカメラに睨みを利かせる眼力、ショートカットの髪を振り乱しながら踊る姿に誰しもが、時代のスターの影を見ただろう。目の奥に宿る強さは山口百恵や中森明菜に匹敵する。今の時代にこのような眼を持つものが君臨すると想像できた者がいただろうか。まさに流星のごとく地球に降り立った女神だ。

 そもそも欅坂46というグループは、同じくソニー所属で先を行く乃木坂46の妹分として2015年8月に結成された。乃木坂46と同じく、発足2か月で冠番組(テレビ東京系『欅って書けない?』)を持った。そして8か月後にはこの楽曲でデビューを飾った。しかもその週間出荷枚数は歴代女性歌手のデビュー曲のなかでトップ。彼女たちはデビュー曲にしててっぺんをとってしまったのである。無論、楽曲の良さ、彼女たちの魅力もあるが、先んじて公開されたYouTubeの動画も効果的であった。今や最高の宣伝手段となった動画再生サイトであるが、同曲の世間的認知もYouTube発といって過言でない。

 アイドルらしからぬマイナー調の音楽、激しいダンス、時代や大人への抵抗、ブルーグリーンに染められた軍服。渋谷の再開発域で撮影されたMVはその場が失われる一種の無常観を示すかのようである。曲を一貫する虚無感、無常観、そしてそれに抵抗する野心、これらはまさにサイレントマジョリティー。

 人々を魅了するこの曲は今後色あせることなく存在するだろう。

 平手友梨奈という伝説とともに。

(Imitation Gold 創刊号掲載)

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