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サタンタンゴを見に行く、アスファルトのフロッタージュ

2019/11/02(Sat.)

 出町座で上映されている「サタンタンゴ」という映画を見に行きました。この映画は7時間という長時間の作品で、1994年に公開されたものを4Kリマスターして再上映したものです。3月に予定している山下残さんとの公演では長時間の構成や映画的な見せ方が参考になると思い見に行きました。

 実際に映画を観に行くと4Kなのかはわかりませんでしたが、確かにリマスターされてフィルムのノイズが一切除去されていました。先日、京都みなみ会館でソクーロフの「孤独な声」という映画を見たのですがフィルムでの上映だったため、シーンによってはフィルムのノイズを前面に感じるシーンもありました。音楽の世界ではアナログレコードとデジタルデータというメディア体験が区別されていますが、おそらく映画にもフィルムで見るかデジタルで見るかの体験の違いがあるのでしょう。
 サタンタンゴは長時間の映画にも関わらずカットが少ないことで話題になりました。個人的に印象に残ったのはセリフの少ない長回しとセリフの多い長回しの対比です。セリフの少ない場面ではパンやカメラのズームアウトによって場面構成が変化していき、また映像的に変化のない場合には音楽を変化させることで状態の変化を表していました
。セリフの多いシーンでは背景の音楽は静かになり、カメラは役者の動きに合わせて忙しく位置を変えていました。こうした長回しのシーンでの工夫はパフォーマンスにも応用できそうです。またカメラの構図の工夫を至るところで感じることができ、絵画のような伝統的な構成を想起させるシーンや手前の人物の動作によって場面が大きく覆い隠されるシーンなどが印象的でした。

 夜はスケートボーディングしながらカメラを手に持って動画撮影を行いました。はじめは手でカメラを持つと手振れが激しいと思い、Goproなどのアクションカムを別途購入する必要があると思いましたが、まずは手持ちの機材で実験してからアクションカムの購入を検討することにしました。実際に手持ちのZoom Q2n 4Kで撮影すると手振れがひどかったですが、一方で臨場感もあります。今回の作品ではライブ感や荒々しさも欲しいので手振れも演出の一つとして使えるかもしれません。ひとまずはアクションカムは置いておいて、手持ちのカメラで撮影を続けようと思います。
 あとアスファルトの状態によってスケボーの音が変化するのですが、いつも走行しているルートを参考に走りやすい場所と走りにくい場所、路面が特徴的な場所に限定してアスファルトをフロッタージュしました。フロッタージュとは凸凹したオブジェの上に紙を敷き、上から鉛筆でこすることで形状を浮かび上がらせる絵画手法のことです。これをアスファルトの上で行うことで、路面の凹凸を視覚的に体験できると考えました。実際に実験してみると、予想通りアスファルトの状態が線の濃淡で現れました。走りやすい場所では道路の凹凸が少ないため線の密度が濃くなり、全体的に黒い画面になります。走りにくい場所では凹凸が大きいため線の密度は薄くなり、点のように表示されます。また段差では空白が現れ、その端に直線が出てきます。このようにして滑琴のプロジェクトにおいて聴覚だけでなく視覚的にもアスファルトの状態を表現することができそうです。

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▲様々な路面のフロッタージュ

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