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玄岳ドライブイン

あらすじ 
玄岳ドライブインとはなんだったのだろうか。
私はこの施設の異様さと不気味さについて記す。この物語は現実にある施設をもとにしたフィクションで実在の人物、組織とは一歳関係ありません。


玄岳ドライブイン
この施設は昭和40年にみその商店が作った建物なのだがそもそも建てられたこと自体が何かおかしい感じだ。みその商店はこの施設を建てたことにより倒産しているがなんだかどうしてもこの施設を作らなくてはならなかったのかという感じだ。
私はそれに興味を持ち玄岳ドライブインについて調べている。
この施設はなにもかもがおかしい。まず形だ。
ロープウェイの駅だそうだがロープウェイの駅が螺旋状である必要はなにもない。この建物はなぜか螺旋状だ。螺旋状の建造物というものはそうない。推測だがとりあえず螺旋状の建造物を建てることが当初の目的な気がする。中にはレストランだっただろう痕跡があるがレストランだったとしたらめちゃくちゃ狭い。厨房跡地のようなところもあったがそこもめちゃくちゃ狭いところに調理器具が無理やり詰め込まれていて実際にここで調理を行うとしたらとても使いにくいだろう。想像ではあるが予算的に螺旋状の建造物というのは普通の建造物より予算がかかり予算的にこの大きさが限界だったのだろうかと思われる。なんだか螺旋状の建造物を建てるというプランが先にありロープウェイの駅とかレストランなどは無理やりこじつけたのではないかと思わせる。とにかくみその産業はここに螺旋状の建造物を建てた結果倒産した。運営期間は三年だそうだが失敗というよりもともとロープウェイは螺旋状の建物を玄岳に建てる言い訳のように思えてならない。運営中の玄岳ドライブインはネットで検索するとパンフレットが出てくるがレストランも螺旋の建物に無理に設営してあるためパンフレットに載っている状態でも薄い棚を壁に打ち付けていたり、なんとか螺旋状の建物でレストランなどを配置しようとしたことが窺える。
つまりレストランなどは後付けでとにかく螺旋状の建造物を玄岳に建てたいという感じに思える。
私はこの施設に興味を持ち実際に訪れることにした。2024年現在ではロープウェイの形跡は取り外され、ロープウェイの駅の跡地を見ることができるようであった。
そこに行くには車で首都高速から東海道国道1号線を走り、箱根峠を越え、熱海峠から伊豆スカイラインに入り玄岳に着く。途中はほぼ山道で熱海は観光地とはいえ本当に人気のない山でありここに観光施設というのもなんだか妙な気もする。山を登るにつれ剥き出しの自然が多くなり、道路越しから見える木々も自然の脅威といった感じでなんだか観光という感じではなかった。玄岳の頂に位置しているであろう玄岳ドライブインに着くと、気圧の差で持ってきた菓子パンなどの袋は膨らんでいた。私は入り口から玄岳ドライブインに入る。草がたくさん生えた石作りの階段を登ると入り口になる。建物の中はめちゃくちゃにガラスが破られたくさんの英語表記の落書きがしてあった。私は足を踏み込むにつけ不気味な気配を感じ取った。昼間の光で見てもなんだか不穏な感じだ。同行者も変異を感じ取ったのか口数が乏しい。この同行者は高橋と言う人物で霊感があるといい私の玄岳ドライブインに興味を持っていることなどの経緯でSNSで知り合った人物である。
高橋との出会いは、SNS上のある心霊スポット紹介グループだった。私が玄岳ドライブインについて質問を投げかけたところ、唯一返信をくれたのが高橋だった。
以前も何度か心霊スポットを訪れた経験があるという。私たちは意気投合し、今回の探索を決めた。私はこの高橋の車でここまできたわけだ。
高橋はなんだかすごくめちゎくちゃに割られてるね。廃墟って感じと言う。
私は確かにそうだと返す。とりあえず全体的に見てみようとの話になり私たちはその廃墟の全体を回ることにした。足元は壊されたガラスや設備の残骸などが色々と落ちていて注意しないと釘などを踏んでしまう。そこかしこに椅子が散らばっている。螺旋構造の建物なのでなんだか方向感覚がおかしくなりそうになる。まず私たちは一階のおそらくここがパンフレットに載っていたレストランの跡地なのだろうなというところに行く。螺旋状のところから突き出したカウンターのようなところがあった。高橋はすでに何かの気配を察知しているようでなんとなく怯えたような様子を見せる。高橋はここさすがにやばいねと言いあたりをいろいろと見渡す。廃墟だけあってさまざまなものが残されていてとても不気味な感じだ。いろいろなものが残されているが私は一冊の大学ノートがあることを見つけた。私はそのページを開くと何かとても厳しい規約がびっしり書いた紙がノートの背表紙の裏目に貼り付けてありそこには東京拘置場と記されていた。その紙が貼り付けられているだけで他にはなにも書かれていなかった。高橋はそのノートなんか怖い感じがすると言った。そしてその下には本屋で買ったばかりのようだけれども古い絵柄の漫画が置いてあった。何かドラゴンと儀式がどうとかの内容だがよくわからなくそもそもなぜこの漫画は明らかに昔の漫画なのに経年劣化していないのだろうと不気味に思った。私は古びた大学ノートを手に取りながら、心の中で疑問が渦巻いていた。なぜこの場所がこんなにも不気味なのか?なぜ、東京拘置場のノートがここにあるのか?答えを見つけることができるのだろうか、そして見つけた答えが私たちに何をもたらすのか。私は一瞬、不安と恐怖に押し潰されそうになった。高橋はここはかなりやばいと思うと言った。私は古びた大学ノートを手に取りながら、心の中で疑問が渦巻いていた。なぜこの場所がこんなにも不気味なのか?なぜ、東京拘置場のノートがここにあるのか?答えを見つけることができるのだろうか、そして見つけた答えが私たちに何をもたらすのか。私は一瞬、不安と恐怖に押し潰されそうになった。階段を降りると階段の横には鳥小屋がありなぜここに鳥小屋があるのか?と私は疑問に思った。私はこの建物自体なんか変な感じがすると高橋に言うと高橋はここに鳥小屋もそうだけど…なんか和室みたいなところがあるよね。そこにシャンプー台とかついてるし…どういう使い方をするか全然想像できないと言った。
私もたしかにそう思いその和室のようなところを見ると建物が螺旋状のため奇妙な形の窓や押し入れがある狭い和室がなぜここに?と疑問に思った。和室自体もおかしいが唐突にあるシャンプー台だか洗面所と一人用の風呂もよくわからなかった。高橋も和室に洗面台を置くのも意味わからんしこの建物なんたんだよと言っていた。高橋は真ん中を割ってトイレになっているところでそこのトイレが赤く塗られていることを不気味がりここのトイレ嫌だなと言っていた。すると誰かの話し声が聞こえてきた。私たちがここに着いたときには車は他になかったのに誰だろうと思った。新しく人が入ってきたんじゃないかと高橋には言ったがそうである確信は私にはなかった。とりあえず一番上の階に行くことにし階段を登っていると踊り場がありそこは展望台と思われ、外に突き出していて山を一望できるというものだったが安全のための柵などがないためもし足を滑らせて落下したら確実に死ぬだろうといったもので観光客の出入りを想定していたとは思えなかった。高橋も同じように思ったようで危ないねここと言った。その反対側には部屋があるが壁はコンクリート剥き出しでなにに使われているかわからないかんじの部屋だった。
そのまま階段を登っていくと最上階に着き、ロープウェイの名残がある大きな歯車などが残っていた。しかしその部屋で最も目を引いたものはピラミッド状に積み上げられた椅子であった。私たちはその階につくとともにこんなふうに椅子が組まれているのは人生で初めてみるといったかんじのピラミッド形に組まれた大量の椅子に圧倒された。高橋はなんなんだよここと言っていた。ピラミッド状の椅子をよく観察すると白い羽のようなものがたくさん落ちている。これも意味不明だ。私は羽毛布団の中身か?と思ったが布団のようなものはなく鳥の死骸もなかった。この白い羽はなんなのだろうかと思う。この施設は当たり前に電気がなく昼間でも薄暗いので私たちはその部屋で懐中電灯を点けていた。建物の構造上か光がやたら反射するようでいろいろなところに影ができていたが私はおかしな影に気がついた。その影どうみても柵越しにこちらをみている小さな女の子の影であり、光の加減でできたとしても不自然すぎる。高橋もその影に気がついたようで重苦しい空気の中影を見ていた。あれは影ではなくシミかそういう形に誰かが書いたものでは?といった合理的な解釈が私の頭によぎったがその影の中の女の子は時々動くのでそうとることもできず私たちはその階から引き上げることにした。いや話してた内容以上にやばいよと高橋が言う。私はそうなのかと思いこれからもっとも出ると言われる地下に降りることにするがどうすると尋ねた。高橋はここまできたからそりゃいくけどさ、俺霊感あってもこんなにはっきりした影とかそんなに見ないよ。ここなんかやばいよと言っていた。私は話し声がしたので他の人も来ているだろうと思いその人たちもいるから二人きりよりは怖くないだろうと高橋に話した。高橋は確かに話し声してたね。その人たちと合流していこうかなと提案してきた。しかし私たち以外の人は見当たらず、駐車場を確認しても車は私たちの車だけだったためさっきの話し声は誰の声なのかというのが話題に出すのをためらうほど恐ろしく思えた。
高橋は地下に降りるのかと嫌そうにしていたがとにかく全貌を確認しなければと言い懐中電灯を手に地下に降りることにする。地下へ向かう階段は、廃墟の中でも特に不気味な場所だった。薄暗い照明の中、私たちは一歩一歩慎重に進んだ。高橋は神経質に辺りを見回しながら、ここ、本当に大丈夫か?と小声で呟いた。
調べに来たんだ。ここまで来て引き返せないと私は自分に言い聞かせるように答えた。階段を降りるにつれて、周囲の空気がひんやりと冷たくなっていくのを感じた。まるで、地下に何か異様な存在が待ち受けているかのようだった。
やがて、私たちは地下の入り口にたどり着いた。
地下は二つの部屋でのほ構成されていて暗くて埃っぽくコンクリートが剥き出しの壁があるだけで床にはさまざまなものが散乱している部屋と一人用の浴室であった。私たちはとりあえずこの施設の全てを見たことに達成感を感じた。
高橋が地下室から早く帰ろうというので私たちは地下から出て一階でとりあえず状況を整理しようと話し合った。高橋は想像以上に何かが変だと言い、私もそう思ったと高橋に伝えた。高橋はこの建物なにもかもめちゃくちゃに怖されてるけど鏡だけは全部割られてないの不自然だとは思わないか?と言う。
私は思い返すと確かにこの施設のトイレや洗面台の鏡など鏡はあったがそのどれもが割られていないことを思い出した。高橋は二つ風呂場があったがそもそもここロープウェイの駅でしょ?なんで風呂場がそんなにいるんだ?と疑問を口にした。私はもっともだと思い風呂は普通ないよなと答えた。高橋はここ山だけど水道管とかここにも通ってるってことかなと話した。私は確かにこの施設のために水道管を山の頂上のここまで引いたのならなんだか変な感じがすると思った。高橋はこの設備のために水道管が引かれてたとしたらものすごい工事をしたことになるよな。と話した。私は確かにと思った。確かにレストランやトイレなどにも水道は必須であり山の頂上に現実に水道管を引いた事実がまず大変な工事と巨額の費用がかかるわけだからもとのみその産業の計画がロープウェイの駅で観光収入を期待して建てたとしたら計画の時点で破綻してるんだよと言う。高橋はつまり君の推測どおりここに螺旋状の建造物を建てること自体が目的のようだな。そして水道だ。こんな山の頂上まで水道管を通すのはめちゃくちゃ大変だからレストランやトイレなんてこんなところに作るのはそもそもおかしいんだ。これは逆にこの山の頂上にどうしても水道管を引かないといけないからレストランやトイレを配置したと考えてもいいかも知れないと言った。私はそれならこの施設の風呂場は重大な意味を持っているのではないかと思う。高橋もそれに賛同した。風呂場ってなんなんだろうな。考えられるのは身を清めるとかそういう何か儀式的なことがあったのかも知れないと言った。私はそうかもしれないと思うが一体なんの目的でなんの儀式がひらかれていたかわからないと思う。高橋はここにはたくさんの残留物があるから何か手がかりがあるかもしれないから探してみようと言い私もそうしようと思った。何か手がかりになるものはないかと探索をはじめた。私は高橋に東京拘置場のノートのことを話した。高橋はそのノートは気になると言いそのノートのところに向かうことにした。そのノートは2階の和室のところにあった。高橋はノートを手にとると私にこのノートは白紙に見えるかと確認してきた。私は見えると言った。高橋はこれは霊感がある自分にしか見れない文字で何かがびっしりと書いてあると言った。私には読めないので高橋に音読してもらう。一ページ目 実験体 Y 男性。42
死刑囚 身長179 体重85

22:34 Yを地下の風呂場で清める
23:56 Yを手筈通りに建物を巡らせる。
0:47 Y最上階に入る。
0:50 呪文 
1:23 Yに薬剤投与
1:     Y転送

ここまで読んで高橋は何か死刑囚を使って実験をしていたみたいだと話す。転送ってなんのことだ?と高橋は独り言をいいながらノートをめくっていく。
高橋は音読をやめ、このノートに記載されている情報を得ることに集中しているようだ。ノートを読み終わったらしい高橋に私はノートに何が書いてあったかと尋ねる。高橋は想像よりやばい内容だったが聞きたいか?と念を押す。私は高橋に聞きたいと言い高橋はノートの概要について話し始めた。
このノートにはこの施設で死刑囚を使って異次元へ他人を転送する儀式について書かれてる。そう高橋は言う。ここはこの世界と異次元の境界らしい。ここに螺旋のエネルギーを集めることで異次元に人間を転送する実験をしていたみたいなんだ。
そのやり方とか薬剤とかも詳しく書いてある。と高橋は言う。私はそれって昔の話?と高橋に尋ねる。高橋はいや、次元が歪むと時間はそんなに問題じゃなくなる。多分今もこの施設を利用して異次元に出入りしている存在がいるはずだと言った。
私は少し考え、私たちも異次元にいくことはできないかと尋ねる。高橋はできると思うと言い、残留物から必要なものを集めることになった。高橋は施設にある大量の落書きを目にするとこれはただの落書きじゃないと思う。結界を張ってると言った。そして落書きの中の矢印はこの建造物の螺旋のエネルギーを貯めるために移動する方向を示していると言った。
高橋はさらに浴室についてなんでこんな山の上まで水道管を引いたのか謎だったんだけどこのノートに書いてあることでだいたいわかったよ。儀式に浴槽と水が必要なんだ。高橋と建物内を探し回ることになった。高橋は浴槽の儀式にも特殊な薬剤が必要なんだけどと言う。私は大量の残留物からその中にあるのではないかと高橋に言う。高橋はこんな大量のゴミ山から探し出すなんて…と言っていたが赤いトイレってあったよね?と言った。私はここの男子トイレが赤く塗られていたことを思い出した。高橋はそこかもしれないと言い私たちはトイレに向かう。トイレは誰かのいたずらかなにかわからないが小便器と個室があり全体的に赤く塗られている。洗面台には鏡が取り付けられていて高橋の指摘通り鏡だけはなぜか割られていなかった。私はこの割られていない鏡に映りたくないと直感する。高橋と二人でトイレの中を探す。高橋は鏡の落書きに書いてあったといい二つ目の個室の天井を開けるとそこには埃を被った段ボール箱があった。
段ボール箱には熱海丹邦屋と青い文字で印刷されている。箱はガムテープや紐などで閉じられていて埃だらけのそれらを剥がすだけでも結構大変だった。箱の中にはビニールに包まれたピンク色の塊がぎっしり入っていた。高橋はこれは浴槽の儀式で水を変質するために使う薬剤だと思うと言った。多分投与剤もあるはずだと高橋はさっきの天井裏を再び探り出した。確かに高橋の言う通り誇りを被った小さな箱がありその中には透明なアンプルの中に緑色の薬剤が入っていた。私はだんだん高橋の様子が何かおかしいことに薄々気がつきはじめた。
高橋は箱からアンプルを取り出し、真剣な表情でその中身を確認していた。私はその様子を見ながら、彼の変わりように不安を感じ始めた。
これが儀式で必要な薬剤だ。これで浴槽の水を変質させることができる。高橋はそう言いながらアンプルを慎重にポケットにしまった。
なんでそんなに詳しいの?は高橋に尋ねた。この施設について詳しすぎる気がするんだけど
高橋は一瞬ためらった後、深呼吸して答えた。実は、このノートだけじゃないんだ。僕の祖父もこの施設のことを知っていて、いくつかの儀式に関わっていたんだ。それで、ある程度の知識は受け継いでいる。
私は驚きと共に不信感を抱きながらも、その話を信じるしかなかった。それなら、この儀式を再現することは可能なの?
高橋は頷いた。ああ、できると思う。でも、完全に安全という保証はない。それに、この儀式を行うには特定の時間と場所も重要だ。
私たちはその後も施設内を探し回り、儀式に必要な他の物品を見つけるために尽力した。高橋は施設の図面を広げ、特定のポイントにマークをつけながら説明を続けた。この施設の中心にある螺旋階段は、エネルギーを集めるための重要な場所だ。ここで儀式を行うことで、異次元への扉を開くことができるはずだ。
私たちは螺旋階段に向かい、その場所を清掃し始めた。埃と廃材を取り除きながら、高橋は儀式の準備を進めていった。
まず、この薬剤を浴槽に投入して水を変質させる。それから、螺旋階段のエネルギーを集めるために特定の動作を行う必要がある。最後に、エネルギーが頂点に達した瞬間に扉が開くはずだ。高橋は一連の手順を説明した。
私はは一抹の不安を抱えながらも、その準備に協力することに決めた。私は高橋がすでに何かに取り憑かれているのではないかという可能性を頭から必死で振り払おうとしたがすでに高橋は異次元の存在と共鳴しているように思えてならなかった。
高橋はみその商店なんて一企業が死刑囚なんて動かせるはずはない。みその商店は隠れ蓑で多分国家ぐるみのプロジェクトなんじゃないかと話し始める。高橋はすでに異次元とかなり共鳴しているようでもう私には止めることはできなかった。高橋は地下と二回の浴槽に水を溜め、薬剤を投入した。高橋は男女の異なるエネルギー二つでないと異次元に行けないといい浴槽が二つあるわけを話した。私に2階の浴槽に入るように指示する。私はもう高橋が異次元の何かと共鳴していると確信したが逆らえなかった。私もまた何かにより支配されているようだ。高橋と私は地下と2階の浴槽に水を貼り水に薬剤を投入しそこに浸かりアンプルの中の液体を飲んだ。

そしたら意識がありえないほど混濁し私は自分の体が今まで味わったことのないような奇妙な歪みという感覚に襲われる。
目を開けると浴槽はなく天井もなかった。空は一面に緑色と紫色と青色を毒々しく混ぜたような色で地面には植物が生えたいたが花の中から違う花が生えていたり茎から違う植物が分岐していたり普通の植物ではなかった。高橋もいるようで高橋はそれらの植物を観察していた。
私は高橋にここは異次元なのと聞くと高橋はマーガレットの花のような花の中心から小さなチューリップが無数に生えている花を見せて多分そうだと答えた。その植物は生理的に不快感を催すほど不気味だった。高橋はこの世界を調べてみようと言った。
僕たち以外にも人がいるかもしれない。そう高橋は言う。確かに高橋の言葉を信じるならここには実験体として送られてきた死刑囚たちがいるはずだ。私は高橋に死刑囚って普通の人とは違う。接触は慎重になった方がいいと言うと高橋は確かにそうだと言い身を潜めながら他に人がいたら観察することにした。
私たちは奇妙な空の色や奇妙な植物の中を進んでいく。進んでいくと建造物があった。その建造物も螺旋状でそこに人がいるかもしれないと思うと話す。
高橋はこの建物に侵入してみようと言う。私は確かにこの建物に入らないと元の世界に帰れなさそうだと思う。建物に近づいていくにつれその建物が玄岳ドライブインに酷似していることに気がつく。しかし螺旋の方向は逆周りで私は玄岳ドライブインの逆周りの建造物が異次元にあることに驚いた。以前の廃墟の探検で建物の構造はわかっているので私たちはなるべく人目につかない箇所から建物に侵入した。建物内の造りは逆回転であることを除けば玄岳ドライブインと同じだった。しかし玄岳ドライブインの中はめちゃくちゃに破壊し尽されていたのに対してこの建物は全ての設備が綺麗な状態である。内部の構造も同じようだが人の気配がするため無闇に動くことはできない。
以前玄岳ドライブインインで見た狭い調理場のようなところは調理場として機能しているようで私が転送に使った洗面台と浴槽のある和室はここでは襖が閉められていて人の気配がした。
確かに十数人の人物はこの建物内にいるようで話し声や生活音が聞こえる。私はその音が玄岳ドライブインで聞いた謎の話し声に似ていると思った。私たちはここにいる人たちに見つからないようになるべく音を立てないように動き状況を把握することにした。
高橋はここで立てた音が元いた玄岳ドライブインに聞こえていた可能性はあるし玄岳ドライブインが不自然なまでにめちゃくちゃに壊されていたのはここで行われたことが玄岳ドライブインにも反映されるのではないかと言う。私はそれなら玄岳ドライブインの最上階にあるピラミッド状に積まれた椅子は何か意味があるのではないかと言う。高橋は最上階は調べてみる価値が高いと思うが、ここにいる人たちに気が付かれないように潜伏しないといけないからチャンスを待とうと言った。高橋はここにいる人たちは多分死刑囚だと思うけど彼らは元の世界に戻ったところでどのみち処刑されるのだからここで暮らすことを考えたのではないかと言う。それは私たちにとって想像以上に危険な状況だった。死刑囚たちは確かにこの建物内で生活をしているようだが彼らに見つかることは避けたい。高橋はここで死刑囚がどういう生活をしているか調べる必要があると思うと言った。私はそうだと思いここで死刑囚がどのような生活をしているか調べることにした。私たちはあまりここの人たちが立ち入らない一階の物置のようなところに潜伏することにした。人の気配がして誰かがこちらに向かってくる足音がした。私と高橋は恐怖心から身がすくむが息を潜めて身を隠す。人は二人のようでなにか話しながら歩いていた。こちらに近づくにつれて会話の内容がはっきりしてきたので内容を聞き取ろうとするが建物の構造の問題なのか音が反響して内容がとても聞き取り辛い。断片的な単語しか拾うことができないし、会話の節回しもこの次元に適応したのかなんとなく違和感のあるものだった。音が反響する中
集会、ナルコ 八時 といった断片的な単語がやっと聞き取れた。高橋はとりあえず八時に集会があるようだと言った。場所は多分最上階の椅子が積んであった部屋だと思う。ここはなにもかも玄岳ドライブインを鏡に映したようだからあの椅子のピラミッドはここではとても神聖な場所なはずだと言う。
私はそうだろうと思い八時の集会の様子を伺うことにした。
この次元にも時計はあり今は七時半だ。30分後に集会があるということを予測し八時より少し遅れて最上階の階段の踊り場のところにあった部屋に身を潜めていれば何を話しているか聞き取れるだろうということだ。確認はしていないが多分玄岳ドライブインと構造が同じなので最上階の階段には踊り場があり身を潜めることに適した個室があることを確信する。高橋は多分集会には全員が参加するだろうから八時になればここにいる人間はたぶん最上階に集まるので移動しても問題ないだろうということだ。私はその話にどこまで信憑性があるかは怪しいが、とにかく情報を集めなければならないと思い同意する。八時を少し過ぎたころ私たちは息を潜め最上階に向かう階段の踊り場に向かう。そこは高橋の言う通り確かに玄岳ドライブインと同じ構造だが左右が違う。左手にあった展望台は右手にあり右手にあった部屋は右手にあった。踊り場の横の部屋は機材スペースのようでたくさんの棚が置かれ色々なものが雑然と棚にぎっしり積み上げてあった。
高橋と私は物音をたてないように注意しながら倉庫のような部屋の入り口からは見えない四角になっているたくさんの箱や書類が積まれた棚の影に身を潜める。高橋はここからならなんとか上の階で言っていることは聞き取れそうだという。私たちは息を殺し最上階で行われている集会の様子を伺うことにした。
ありがたいことにマイクを使って話す人物がいたためその人物の話す内容はよく聞き取ることができた。というよりマイクを使って話す人物以外はほぼ無言で八時の集会はそのマイクを持った人物の話を一方的にその他の死刑囚が聞いているという感じだった。マイクを持った人物は男性のようで私はこの独特な声や話し方をどこかで聞いたような気がしていた。その声はマイクを通してさあみなさん集まりましたね。救済の日が近づいてきました。と言う。その声は救済の日が近づくにつれてみなさんもやることが多く大変だとおもいます。しかしこの試練をのりこえ全人類を救済することこそ私がここにいる意味。まさに運命的なものを感じています。とマイクの音声が言う。そして別の声が尊師に指示してもらいたい者はいるか!と言った。誰かが名乗りをあげたようでその人物にマイクが回される。その人物は、尊師に質問します。救済はあちらの世界をすべて尊師が救われることになるのでしょうか?と言う。またマイクが指導的立ち位置のような人物に回され指導者的人物が返答する。そうです。あちらの世界を全て救済する。そのためにいままでの苦しい期間がありました。しかしみなさんの努力のおかげで準備は滞りなく進んでいます。あちらの世界は私たちを警戒しているようですがそれはハマームドラーの苦しい段階だったと思います。これによりあちらの世界のすべての人が救済されマハーヤーナの段階に至ることができると思います。救済の日は近いです。今日もみなさん張り切って修行に励んでください。とマイクの音声が告げる。そしてまた別の人物にマイクが回され、尊師が言われた通りマハーヤーナの準備は確実に進んでいます。皆さんも全人類の救済を目指し、あちらの世界の公安に気が付かれることのないよう滞りなく救済を進めることを尊師一同望まれています。あなたたちの努力により一日でも早い救済が実現することを願ってやみません。これからも精進を続けてください。と言った。その後は尊師に栄光あれと大勢の死刑囚たちが合唱している声が最上階に反響していた。
私はこの声と内容から壇上の人物は有名なカルト教団の死刑囚Aではないかと思った。高橋も同じことを思ったようでこれはAに間違いない。Aも死刑囚の実験体としてここに送られてきたんだ。そしてここで死刑囚たちを洗脳してカルト組織を作っている。と言った。
私は私もこの声に聞き覚えがあるしAだと思う。このAが言う救済ってもしかしたら…と最悪のシナリオを口に出すか躊躇ったが高橋は、多分Aは異次元のこの施設と死刑囚を利用して再びテロを企てている。Aの言う救済とは虐殺のことで異次元のこの建物からもとの次元に大規模な何か、毒ガスや危険な薬品を散布しようとして死刑囚たちを使って準備しているんだと思う。と言った。私はそんなことが…なんとか止められないかと高橋に言う。高橋は難しいがやるしかない。Aの計画はかなり危険で実行されたら元の世界に多くの犠牲者が出るのは確実だと言った。私はどうやってと聞く。高橋はまだ情報が少ないからなんともいえないが状況を整理することが必要だ。まずAはどのような手段で向こうの世界に危害を及ぼそうとしているか知ること、次にこの世界から元の世界に通じるルートが確立されているかどうかということだ。まずそれを確認するべきだと言う。私は確かにそうだと思い高橋に同意しどのように調査するかを話し合った。高橋はこの建物は玄岳ドライブインと部屋の作りや構造はほぼ同じだ。どこの部屋が何につかわれているかはまだわからないが多分レストランの跡地は食堂だろうし和室のような部屋は彼らが寝起きするのに使っているのだろう。そして今いるここの倉庫のようなスペースもありそこにはあまり人の出入りはないようだが確実に気が付かれないという保障はない。幸い僕たちは玄岳ドライブインを一周して正面口以外の出入り口を含めだいたいの建物の見取り図は頭に入っている。集会が最上階で行われていたことを考えると最上階は集会場所として使われている。そしてAはほかの死刑囚と違い特別な部屋にいるはずだ。Aが普段どこの部屋にいるかも把握したい。という。私は玄岳ドライブインを思い出しAが普段使っていそうな部屋を考えた。一階は大きな広間があって一つ個室があった。二回は和室がありトイレや浴槽があった。そして地下は浴槽とその隣に広めのスペースがあったことを思い出す。私は地下の広めの部屋が可能性が高いのではないかと言う。高橋も同じことを思ったようで僕もそう思う。多分一階と2階で死刑囚たちが何らかの作業、もしかしたら毒ガスを生成する薬品を作っているのかもしれない…。そしてAは普段地下室にいるだろうと思う。そしてこの部屋もこれだけ資材があるということは誰も来ない保証はない。とりあえず僕たちは今のうちにここから出て集会が終わる前に安全な隠れ場所を確保しないといけないと思うという。私はその通りだと思い音を立てないように踊り場にある物置からでて階段を降り、2階に下る。二階は高橋が言ったように死刑囚たちの生活スペースになっているようで2階を避け一階に降りる。一階に降りると一階の部屋は何かの実験をしていたかのようでさまざまな実験器具や薬品が雑然と置かれていた。高橋は多分死刑囚たちは生活は2階で行い一階では何か危険な薬品を生成しているだろうと答えた。私はここにいたら見つかってしまうからとりあえず潜伏は外の方が良いのではと言う。高橋はこの建物の外はたくさんの植物が茂っていて身を隠せるし一旦外に出るのが賢明かもしれないと言う。私たちは建物の外に出て少し離れたところで高橋とこれからどうするか話し合うことにした。高橋はさっき見た通りもうかなり向こうの世界にテロを起こす準備は進んでいると思って間違いなさそうだ。しかし彼らはその材料をどこから入手しているのか?死刑囚である彼ら元の世界と気軽に出入りできるとは考えにくいし…と言う。私はもし元の世界にとこちらを出入りできる方法が確立されているとしたら目立たないように変装して元の世界に行くことはそこまで困難ではないかもしれないと言った。そもそも玄岳ドライブインを現在管理している会社もなにか得体が知れなく、この組織と協力関係になってもおかしくない。そしてAの逮捕後も教団は名前を変えて存続していることから物資の到達は難しいものではないかと言った。高橋は私の話に納得がいったようで確かにここの死刑囚が直接物資を調達しなくても僕たちがここにこれた以上はここの死刑囚たちが直接出入りしなくても後続団体の誰かが定期的に物資をここに運び入れることは簡単だ。しかしさっきAが言っていたように公安にどこまでしられているかはわからないがすでに警戒されている可能性もある。と言った。
私は彼らに私たちは物資を運びにきた後続団体の構成員だと言って元の世界に戻り警察にこのことを知らせるべきなのではと高橋に言う。高橋はそれはかなり危険だし僕たちの話をどこまで信頼してもらえるかわからない。しかも僕たちは彼らに渡すべき物資を持っていない。その行動に出るのは危険だと言う。私はでもこうしていたら彼らは向こうの世界に大規模なテロを起こすことはわかりきっているので黙って見過ごすわけにはいかないと思うと言った。高橋は僕も同じ考えだ。でもどうやって止めるかは慎重に計画をたてないといけないと言う。私はそうだけど…と言う。私は何気なく上を向いた。この建物には玄岳ドライブインと同じように展望台があり外の景色を内部から見ることができる。そして私は2階の展望スペースから誰かが私たちを見ていることを見た。高橋にそれを伝えようとしたが私たちはすでに見つかっていたようで建物から出てきた人物たちに捕らえられる。私と高橋は建物の中に連れていかれた。
建物の中に連れて行かれるとAがいた。Aはテレビなどで見ていたAそのもので実物を目にすると確かに大勢の人を洗脳しただけあり何か得体の知れないカリスマのようなものを感じた。Aは私たちになぜここにきたのかと驚くほど優しい口調で問いかけた。高橋は少し考えたあと私たちは廃墟の調査をしていて偶然ここに辿りついたと話した。Aはそうなのかと言い君たちも教団に入るかと尋ねられる。私たちはここで断ることはできないと思い、はい。と答える。Aは新しいメンバーが加わった。皆彼らに拍手をと言う。私たちは教団に受け入れられAに今日から修行や救済に向けての作業を手伝ってもらうことになるからと言った。
私と高橋はAに指示されるとおりに2階の和室に行き、ここが君たちの生活エリアにあると言われた。和室の中は押し入れに布団が入っていて簡素な感じだった。ここで修行もしてもらうことになるけど修行の成果が認められたらイニシエーションも授けることができるから頑張ってねと言われた。簡単な修行は先輩から教えてもらいなさいと言われ、私たちはKという人物から教わることになった。Kはあまり背が高くなく眼鏡をかけた痩せ型の男で私たちにKですと名乗るとここでの生活や修行について説明を受けた。Kは完全にAに心酔しているようでここに私たちがきたのも尊師の導きだと思いますと言った。Kはまず簡単な修行から始めてみようかと言い、左足を前に両足を前後に開いて立ち右足を外側に回して上半身を前に倒すなど奇妙なポーズをとるように言った。私たちはそれに従いKの指示に従いポーズを取る。周りを見ると他の人たちも同じようなことをしていた。
私たちの他の人は死刑囚とは思えないほどおとなしくAの言うことに従っていたが一人Tという人物だけが少し反抗的な態度をとっていた。
Tは他のメンバーたちといつも衝突しているようでKはTのことをあいつはカルマが溜まりすぎているからああなんだと言っていた。確かにTは他のメンバーと違い反抗的であった。高橋はTに興味をもったようでTに話しかけていた。
高橋はTに新入りなんですけどよろしくおねがいします。と言っていた。Tはあーなんや、お前ら死刑囚ちゃうん?と聞かれたので私たちは
はいと答えた。Tは死刑囚以外でここに来るやつは珍しいと言い私たちの名前を聞いた。高橋は高橋と答え私は吉田と答えた。Tはなんで死刑囚やないのにきたん?と尋ねる。高橋はTに心霊スポットとしてここにきたんだけど急に自分でもわからなくなって転送装置を作ってしまったんだ。と言った。Tはなんやそうやったんか、Aはおまえらを洗脳しようとするで、みんな洗脳されてもうた。だけどなんかおれだけあんま洗脳されへんみたいなんで尊師も手を焼いとると言うわけや。と話した。
Tは徐々に洗脳されると思うがどうするんや?と尋ねる。私たちは洗脳されるのはなるべく避けたいと言う。そうしたらTはそれやったらいつも配られる薬飲んだらあかんで、あれ頭おかしくなって洗脳しやすくするために作られとるものやと思うねん。と言った。
私たちはいつも薬が配られていることを当たり前に行っている集団は恐ろしいと思った。
Tはあいつらはなんかこの世界が狂ってるとかぬかしてそれを浄化するとかほざきおるけどやることはあれや。高橋が毒ガスとか…というとTはそうや、俺ら毒ガス作らされてんねん。と答えるTはなんか救済とかスケールでかい話俺ようわからんのよ。俺は目の前に女がおったら犯してやろうと思うけど俺みたいなやつをあいつは嫌いで殺したいのかな。と言う。高橋はそうかもしれませんねと言う。Tは俺は元の世界も嫌やがこっちも嫌やと言う。 
TはAはほんまに好かん。なんかわけわからん来世とかカルマとか言ってきて気持ち悪いんや、でもあっちの世界に毒ガス撒く計画はおもろそうやからここにおるんや。と言う。高橋は毒ガスを撒く計画があるんですか?とTに言う。T はそうや、Aは有名なあの事件で逮捕されてからこっちに実験台として送られてきてん。向こうの警察はこっちに送ったら多分死ぬる思って送りよってんけどAは別に死ねへんかってまた同じようなけったいな教団をここに作ったんや、なんか他のやつもAに洗脳されとってAの手下や、なんかA向こうの世界でも洗脳で有名やったそうやないか。と言う。高橋はAは死刑になったはずではと言った。Tはそんなもん嘘や、わしも死刑判決がでてこれでやっと死ねるわ思ったらなんや目隠しされて変な施設に連れてかれて気がついたらここにおったんや。ニュースではわしも死刑になったことになっとるんちゃうのか?と言う。私はTを見た。確かにニュースになっていた凶悪な殺人犯だった。高橋は死刑になるような人でもAは洗脳できるんですか?と言う。Tはそれなんやけどなんかここに生えてる植物で暗示にかかりやすくなる特殊な薬を作れるみたいなんや。わしは飲んだふりしてトイレに流しとる。それを飲んだやつはみんなAに洗脳されとるんやと言う。高橋は教えてくれたことに礼を述べ、Tはここの人たちが毒ガスを撒くことには反対ではないんですか?と言う。Tはわしは別にAがなにしようが知ったこっちゃないしわしもあっちの世界のやつらにはむかついとったからべつにやってもええと思っとると言った。
その後就寝の時間になり押し入れから各々布団を取り出して眠ることになった。私と高橋はとても疲れていたので泥のように眠った。
起床時刻になり目を覚ますと布団をしまい皆Aに向かって正座している。Aの隣にいた男から今日のイニシエーションとして白い紙に包まれた緑色の錠剤が全員に渡される。私たちはAがお経のような呪文を唱えることが終わると共に皆その緑色の薬剤をそれぞれの隣に置かれた茶碗で飲んでいることを見て同じように緑色の錠剤を手に挟み、Tに教えられた通りに口に入れたふりをしてポケットに隠す。高橋も同じように薬を隠した。その後Aは現代の向こうの社会がカルマに包まれていてもう救済の道は一つしかないから今日もそれぞれの作業に勤めて欲しいと言った旨を話す。私たちはKに指示され一階に降りて何かの薬剤を作る作業を手伝うことになる。Kからこれを着るようにと薄緑色の作業着を渡されそれに着替える。休息時間にTが話しかけてきておっその服わしがパクってきたやつやんけとTに話しかけられる。高橋はどこから?と尋ねる。Tはお前知らんのか?最上階のピラミッドあるやろ?あそこから向こうの世界に行けるんや、場所は指定できひんけどな。わしは向こうの世界にいついたろか思ったらけど結構騒ぎになるから結局戻ってきて時々わしが向こうと出入りして向こうから物資をパクってくる仕事をやらされとるんやと言われた。
その日の夜私たちはAに呼び出された。Aは君たち今日Tと親しく話していたようだがどんな話をしていたのかきかせてくれるか?と言う。私と高橋は返答につまりここでの生活のことを色々教えてもらったと答えた。A はTは厄介でねと話し始める。なんだか私の教えを真面目に聞かなくて困ってるんだよ。それは彼に相当なカルマが溜まっているからだろうからね。Tは修行もまともにしないしあまりTと関わらない方がいいよといわれた。
私たちはそれで解放され、これってTと接触するなってことだとおもうんだけどなんでAは私たちがTと話してたことを知ったのかなと尋ねる。高橋は周りに人がいないか警戒しながらこういうカルト教団でお互いが監視カメラや盗聴器みたいなもので自分たちが何かをしたことはすぐにAに伝わると考えた方が良いと思うと言った。私は確かにそうだと思い高橋にこのAの計画を止めることはできないかと相談する。高橋はまず無理だろうね。もし僕たちが戻って警察に話したとしても異次元からAが毒ガスを撒こうと計画しているなんて信じてもらえるわけがない。精神病院に送り込まれるだろう。と言う。私はだからってこのまま見過ごすとか…と言う。高橋は一番簡単な方法はAを殺せばいい。それにはたぶんTの協力が必要でなんとかTがAを殺す方向に仕向けることだと言う。僕たちがAを殺してもAの意思を継いで作戦は続行されるだろうからTがAを殺すことで他の死刑囚たちにTに一瞬のカリスマを覚えてTについていくようにすればいいんだと言う。私はでもTは毒ガスを撒くことには賛成だったと高橋に言う。高橋はTはAほど周りを巻き込まないし大きな思想もないから毒ガスを撒いたらめんどくさいとかおもったらやらないんじゃないかと言う。私は確かにTとのやりとりからそうした傾向を察知していたのでそうかもしれないと思うと言う。高橋はどうにかしてTにAを劇的な形で殺させるかしないと実際にここから毒ガスが元の世界に撒かれてしまう。かなり今まずい状況だと言う。私もそう思うと答えた。私たちは ふたたびTに接触しなければならないが警告された以上それを見られたら自分たちにも危険が伴うためどうすればよいか考える。
高橋は僕が使った浴槽って地下にあったけどその隣に部屋があったと思うんだけどその部屋ってここではどうなってるんだろう?と言う。私はそこは確かに調べてみる価値があると思うと言い作業の合間の自由時間にそこに行くことにした。二人でそこに向かうとそこはあまり人が出入りしていないようで色々ながらくたや生活ゴミを置いているスペースになっていた。しかし人がいられなくもないといった感じであった。するとTの声がした。Tはなんやお前らもここにおるんかと話しかけてきた。
高橋はTに私もAが嫌でなるべくAから離れた場所にいたいんですと言う。Tはそら気が合うなわしも同じやと言う。高橋はTにAって僕結構嫌いなんですとTがAの悪口を言うように仕向けた。私もそれに乗り私もAって気持ち悪いと思ってますと言った。そしたらTはAに対して悪口を言う相手がいなくよっぽど鬱憤が溜まっていたようでAの悪口を話し始めた。TはわしははじめからあのAゆうやつ気に食わんなっておもっとったんよ。なんかわしがここにきたことからわしのこと君はカルマが溜まりすぎてるとかぬかしおってむかつくしな。なんかわけかわらんことごちゃごちゃ言ってきよるけどわしそんなんわからんしなんであんなのに周りがついてくかようわからんけどあいつに反抗したら周りに怒られて反省文とか書かされるからな。刑務所と同じや、ほんまだるいねんと言う。高橋はTにそれは嫌ですね。Aになにかほかに嫌なことされたこととかありますか?と聞いた。Tはそうやな。あれは結構前のことやけどわしがここにおくられてきた時のことや。なんかAが出てきて君も選ばれた人なんだねとか言ってきてホーリーネームを授けようとかなんや意味わからんことごちゃごちゃぬかしてくるんや。わしも死刑になってこれで死ぬる思っとったら時にそんなけったいなおっさんにそんなこと言われたらなんかようわからんくなってなんかそんな気がしてきてなんとなくAがやることに従ってたんやけどだんだんなんかAが偉そうにわしに説教たれてくるのにだんだんムカついてきたんや、なんかAがわしにカルマが溜まりすぎてるからとかわけわからんこと抜かして逆さ吊りにされてカルマ落としや言われて逆さ吊りにしたわしのことをバンバンたたきよるからわしはムカついてきてやめろっていったんやけどAとその取り巻きは薄笑いしながらわしを見とってわしは痛いし苦しいしわけわからんなかでAとその取り巻きがニヤニヤ笑ってるのを見てて覚えとけよただですまさんからな。と思ったんやと言った。
高橋はそれはひどいですね。しかしなぜTさんはAに従ってるんですか?そんなことをして仕返ししないなんて普通はないと思いますけどと言った。それを受けてTは確かに言われて思ったけどその通りや。なんでわしはこんな簡単なことに気が付かんかったんやろとなんだか一人でぶつぶつ言い始めた。Tはなんかわしもわからんくなった。一人で考えてくるわと言ってなにやら独り言をいいながら立ち去った。高橋はこれで導火線に火をつけることはできた。あとはいつTが爆発するかを待つだけだ。
そう言った。
私たちはそのままTの動向を見守ることにした。Tは何か考えているような様子だったがなかなか実行しようとはしない。私たちはだんだん不安になってきた。日毎にTは何か様子がおかしく何かを考えているようだった。高橋は多分Tはやると思う。いつかはわからないけど、それで巻き添えになる人もいると思うから警戒した方がいいと言った。私たちはTを警戒しつつTが計画を実行に移す日を待った。
その日いつものようにAが皆に話し始めた。
みんな、救済の作業は滞りなく進んでいるね。
私はそれをとても嬉しく思う。この救済が完了することは人類にとって大きな貢献であり、皆それを誇りに、思って良いと思う。皆よく頑張ってくれた。この世はカルマに満ちているから私たちのように救済する者が必要なんだ。そのAの声に皆感銘しているかのようで皆Aに対する信仰心に満ちていた。しかしTだけ様子が違う。Tは何か鬱屈したものが爆発寸前であるかのような様子であった。
一瞬、何が起こったのか皆わからなかったと思う。がTがAの喉仏を一瞬で切り裂いた。
Tが持っていたのは調理場で使う包丁の特に鋭いものであった。Tは服の中に包丁を隠し持っていたのだと思う。Aの横にいた人物も何がおこったか理解できていないようで表情が固まっていた。
一瞬止まったような時間はTの声によって元に戻った。Tはなんや大袈裟な計画立てよったけどこんなけったいなおっさんに刺されて終わりじゃ。しょうもないのう。なにが世界平和じゃ救済じゃ。お前ら死刑囚やんけ。なにわけわからんこといっとるんや。
そうTが言う。放心していた他のメンバーも何か洗脳から徐々に自分を取り戻していったようで周りは混乱状態だった。
高橋はAが座っていた後ろ、ちょうど玄岳ドライブインで大量の椅子がピラミッドになっていた場所にあった布を払う。
するとそこに大きな光のピラミッドがあった。
高橋はこれが異次元のエネルギー源だ。と言いたぶんAはここから力を得ていたのではないかと言う。高橋はTはこのピラミッドから元の次元と出入りしていたようだけどそのやり方は運だよりでめちゃくちゃすぎる。Tは多分悪運が強いからこれで移動できたと思うけど僕たちはともきた方法で戻った方が安全だと思うと言った。
私たちは混乱に乗じもとの世界に帰ることにした。
私たちは、ここにきた時と同じように施設の中を回った。事件があって混乱状態なので私たちは混乱しているふりをして条件通りに前こちらの世界にきたときと同じ作業をすることにし、浴槽に使う薬剤はどこにあるのか探さなければならなかった。高橋は前はトイレにあったからトイレなのか?と言う。私はここ鏡だけ割れてなかったよね。と言う。高橋はそうだけどなぜ、と言ったので私は、ここが玄岳ドライブインと反転してる施設なら鏡を割ってしまったらこことのつながりが消えて戻れなくなることってあるのかなと言った。高橋はその仮説は面白いが今はそれどころじゃない。とにかくあの薬剤を見つけないと、と言う。私たちはやはり元の場所にあるのではないかと思いトイレに行く。ここのトイレは玄岳ドライブインと赤くも塗られていなかった。しかしなぜここのトイレは赤く塗られていたのだろう?と高橋に聞くと多分このトイレで殺人が行われたことが玄岳ドライブインに反映されて赤く塗られているんだろうと言った。つまり殺人が起こったということは何か隠さなければいけないものがあったってことだ。だからここにこの薬剤があったんだと言ってトイレの天井裏の板を外しピンク色の薬剤と緑色のアンプルの入った箱を出した。
私たちはそれを二人でわけ高橋は地下、私は二階の浴槽に向かう。
私が浴槽に向かっている間にも特定の動作をしなければならなかったがなんとか特定の動作をして浴槽に水を溜める。私はこの間に誰か来たら終わりだと思い誰も来ないように祈る。それは高橋も同じだったと思う。浴槽に水が溜まるまでの時間は私にとって永遠にも長く感じられたがやっと浴槽に必要な量の水が溜まった。
私はピンク色の薬剤を浴槽に投入し緑色のアンプルを飲み浴槽に入る。
意識が混濁してまわりの風景がぐにゃぐにゃとしてきた。私は脱出がうまくいくように祈る。
気がつくと周りの浴槽は壊れていて元の玄岳ドライブインに戻っていた。地下に行くと高橋も無事で高橋はきみの言うことにも一理あるし念の為にと玄岳ドライブインの鏡を全て壊すことにした。
近くにある廃材から適当に鏡を割る道具を取り出して高橋と鏡を割っていく。
鏡は割れてなかったのが以外なほど普通に割れた。高橋は何か特別な力で守られていて割れなかったらどうしようかと思ったと言う。
2階の赤いトイレに鏡があったので私たちはそこの鏡を割るために鏡に向かってコンクリートブロックを振りかざす。トイレの鏡にはたくさんの落書きがしてあったがそこに血まみれのAが映っていてこちらを見ていた。
私は怖くなったがコンクリートブロックをか鏡にぶつけて鏡を割る。
割れた鏡の破片からAの視線を感じたが気がつかないふりをして私たちは玄岳ドライブインを後にした。

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