今日は山の日
山に向かって叫びたいことは?
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今はたまにしか読まないが、昨年はヤマケイものをよく読んだ。
ヤマケイ、山屋御用達の版元『山と渓谷社』である。
例えば根深誠『白神山地マタギ伝 ー 鈴木忠勝の生涯』
https://ameblo.jp/darshaan/entry-12597965753.html
や、羽根田治の遭難本。
羽根田氏の遭難本に外れなし。単独行遭難、気象遭難、道迷い遭難・・・いずれも事実を丁寧に辿り、検証。
なぜ彼らは遭難したのか。その様は、不謹慎ではあるが、あたかもミステリー小説のようである。
山岳モノを読むようになったきっかけは、松本清張の短編『遭難』。東京の銀行に勤める三人が、8月末に鹿島槍をやる。山小屋に一泊して翌日、雨中で道に迷って遭難。うち1人が疲労と寒気で精神錯乱し、黒部渓谷に転落死する。
さて彼らは本当に道に迷ったのか。彼が転落死したのは偶然か。疑念を抱いた被害者の姉は、山のプロである従兄弟に支援を頼み・・・
これがめちゃくちゃ面白い。
山もヤクザ界も、身近な異界。こと前者は日常から離れ、下界とは位相の異なる、ある種の〝閉じた世界〝である。
自分は山をやらないが、だからこそ覗き見たい誘惑にとらわれる。
そして山には怪異譚も多い。
ヤマケイではないけれど、例えば安曇(あずみ)潤平『山の霊異記』シリーズ。角川から文庫が5冊ほど出ており、うち「アタックザック」「笑う登山者」(『赤いヤッケの男』所収)、「豹変の山」(『幻惑の尾根』所収)がけっこう良かった。あとは大したことないですな。
安曇氏のは『学校の怪談』みたいな軽い読み物。いっぽう文豪たちも書いている。
泉鏡花の『薬草取』は、怖いというよりロマンティックな話。岡本綺堂の『木曽の旅人』は有名で、木曽の山中に猟師の親子が住んでいる。そこへ夜、1人の旅人が泊めてくれとやってくる。
旅人は海苔巻きや酒を勧める。山中で海苔巻きなど貴重であるから漁師は喜び、泊めてやろうと思い始める。
が、小学生くらいの息子が隠れて出てこない。挨拶もしないから親父は叱りつけるが、それでも。
息子は旅人を指さし、「怖い、怖い」と泣きじゃくる。息子にはいったい、何が見えているのか。
この話は木曽のみならず、日本各地に同じような逸話が残っている。
小泉八雲が『怪談』に採りあげた『雪おんな』は、山中じゃなくて実は調布 ー そう、東京の、あの調布だ ー の話だが、これまた東北や北陸の山中に、同じ話がある。
土地土地に伝わる逸話は日本の風俗・民俗史のひとつの断面。源頼光(よりみつ。または「らいこう」)らに退治された酒呑童子も丹後の大江山に住んでいたが、彼ら「鬼」とは山地に隠れ住む異民族を指すとの説もある。
◆大江山酒天童子(1960)予告編
映画は基本、大映なわけだが・・・
しかし国津神を天津神が退治していく、すなわち大和朝廷の祖が日本を征服していく過程が現にある以上、この説はあながちデタラメじゃないかもしれない。
※源頼光と共に鬼退治したのが坂田金時、つまり「マサカリ担いだ金太郎」。そうして彼も、丹沢の山ん中出身。
柳田國男『山の人生』や山窩(サンカ)の暮らし、現代モノなら森村誠一の山岳ミステリーや日航機の御巣鷹山墜落事故をモデルにした横山秀夫『クライマーズ・ハイ』・・・
◆クライマーズ・ハイ(2008)予告編
「降りるために登る」というね。
JAL123便墜落、俺は友人と飲んだ帰途、渋谷駅のホームで知りました。
そして別の友人の妹さんが、この便に乗っていました。
いやだから、ハイキングで〝ヤッホー〝言うてる場合じゃなくて。