見出し画像

世界は俺のためにある


実家の母に電話しました。
母は90、父が93。前者はほとんど盲人で、後者はツンボ。会話するのに骨が折れる。実際、母は声がかすれておる。
音声(母)から文字(父)に変換し、直ちに見せれば無問題。そんなアプリはあるけれど、年寄りには設定も操作も不可能。

じゃ、ボタンひとつで出来る機械があればいいんじゃね?
そう思い、買って差し上げようと探したら、ないことはない。3万円はするけれど。
問題は値段じゃなく機能と操作。よしんば翻訳機にせよ日本語から日本語に音声文字の変換ができますか。そう質問した、今は途中。

てなわけで、映画を観ました取り急ぎ。
◆ビーチバム

https://youtu.be/JBdi5tJUm4o

もう最高ですもん。

かつて天才と言われた詩人ムーンドッグ(マシュー・マコノヒー)はキーウエストで、相変わらず飲んだくれている。女と戯れガンジャをキメ、時々タイプライター叩いて。
同じフロリダとは言い条、奥さんとは離れている。めっちゃ美人の奥さんミニー(アイラ・フィッシャー)は、実はムーンドッグの悪友ランジェリー(スヌープ・ドッグ)とやっている。

ミニーはクソ金持ちである。ムーンドッグは天才だけれど、それで贅沢な暮らしをしている。
2人の娘ステファニア・ラビー・オーウェンの結婚式。久しぶりにムーンドッグは家族の元に帰る。おお、久しぶり! 言うて。

ムーンドッグはシステム的に、式に遅刻す。奥さん怒る。
新郎のキャン玉掴む。娘、怒る。
が、ステファニアは新郎に「父はあんなにクレイジーだけど、実はブリリアントなのよ」。

ムーンドッグはノリノリで、ベロンベロンに酔っ払ってフェラーリを運転し・・・

ミニー、死ぬる。

彼女の遺言は「遺産の半分は娘に。夫ムーンドッグが小説を1本書いたら残り半分渡すけど、それまでは1銭もあげない。彼の口座を凍結すべし」。

いやこれはチャレンジですよ。ジャンキーで酔っ払いのムーンドッグが、果たして小説1本書けるのか。

カットが短くテンポ最高な本作は、超プラス指向。オレ、ガッツリ来たもん。
ムーンドッグはホームレス化するのだが、常にヒャッハー![m:46]  めっちゃ。

これは凄い。異邦人より凄い。音楽座がそうだが、押して押して押しまくると、あらゆることが反転するのだ。
例えばガンジャきめつつ葉巻吸いつつ、キーウエスト。
バーティ・ヒギンズ、Key Largo。

https://youtu.be/OaCuR-nfFTQ

異邦人は黒と明るい色の対照。ヴィスコンティ監督の映画は、色が特徴的。
そしてビーチバムは、常に明るい色遣い。奥さんが死のうが自分がホームレスになろうが。
ガンジャ決めつつ。

ムーンドッグはしかし、友だちだらけ。スヌープドッグはもちろん、いかがわしい観光船の船長はイルカツアーで大儲け。イルカと間違えてサメの群れに飛び込んで足を喰われるというね。
こんなクレイジー🤪な友だちが、結局彼の財産。Bookエージェントのあいつもね。

世界は俺のためにある。そんなムーンドッグの超ポジティブな求心力が、彼と世界を救う。

映像はフロリダの海と夜明けを映して美しい。
ヒャッハーものではあるけれど、存外涼しげな、これは人間を救う映画だ。いやマジで。
「ビーチバム」とは、海岸をうろつく人の意。ムーンドッグはいっつもうろついている。
施設に収容されても脱走す。そしてまた海へ。

映画館を出たら、夏の夕暮れが美しかった。女子中学生が、友だち同士でこんな会話をしていた。

「今日のテストは復活祭? そんなやったよね」
「キリストが殺されたけど復活した、的な?」

俺はふと空を見上げた。青い空に、いらかのような雲が。

そうして父母も、超ポジティブ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?