意志による身体の力は完全に抜け、彼の指先の動きに、無意識の緊張が身体に拡がり、彼の腕を握り締めるしかできない。快楽の白い霧が頭の中に渦巻き理性の欠片が中心部で弱々しく輝く感じがしていた。  
 昼間から、しかも会社の車の中で、そんな罪の意識も遠くで瞬く程度となり、彼の指先がスカートの中で、ストッキングとショーツを破り、いやらしい愛美を直接、淫靡な音をたてながら掻き回して欲しい、、、消えゆく理性に代わり、白い霧の中心から徐々に現れるのは、そんな感情だった。
  もう女性としての本能による細い脚を閉じる力は消え失せ、自ら彼の指を招き入れるように力なく開いていく脚、指先で強く摘ままれ手の平で転がされるのを待ち望むかのうように期待で膨らみ硬直する乳首、彼の自由で優しい指の動きに、滑らかな曲線を描いて反応する身体、、、、 
「霜田も感じているんだね  
 嫌だって言いながらも・・・」
 耳元で囁かれた。
と同時に、耳元まで赤くなり、また蜜が溢れ出るのを感じたが、 
「そんなこと・・・  
ないもん。。。」
と声にならない声で答え、無意識の内に彼の首筋に腕を伸ばすのだった。


 そして耳元で 
「いじわる。。。」と・・・ 
 胸元に潜りこんだ彼の指先が、たどたどしくブラウスのボタンを外していく。その指の動きに一層、愛美の鼓動は速くなり、もどかしさを覚えたが、ボタンが外され放たれた白い胸元に陽の光が反射するよういなると、愛美の理性の最後を守るかのように、Cカップでアメジストパープルのレースのブラジャーが露わになった。 
 ブラジャーの布地と柔らかな膨らみの間に、ぎこちなく彼の指が潜りこむ。窮屈そうに目当ての場所に辿り着いた指先が、愛美が待ち望み覚悟していた快感を一気に与えるように、強く、その部分を摘み上げ、直ぐにまた全体を覆いつくように優しく包み込むのだった。汗ばむ彼の掌は熱く、同じく気持ちが高ぶっているのだと愛美に安心感を与えてくれた。 
 彼の温かい手の平が、リズミカルに張りだした胸を揉み続け、反対側の手が・・・スカートの中から出たと思うと、そのままお腹の所からスカートの中に潜りこんで行った。そのままストッキングの中へと伸びた手指は、薄いショーツの上へと進んで行くのだった。 
 最初に身体に触れられて以来、熱と痺れを発し、熱い蜜で充分過ぎるほどに潤っている部分は、当然ながら愛美自身もどうなっているか判っている事だ。たとえショーツの上からと言えども、触れられれば淫らに男を待ち望んでいる事は容易に判ってしまうと思うと、なお一層身体中に快感を供給し、彼の腕を掴む手の平に力が加わり、熱く荒い吐息を彼の首筋に掛けてしまうのだった。  
 彼の中指が愛美の身体の中心に達し、その曲面に合わせて指先があてがわれた瞬間、背筋に走る鳥肌のように甘美な快感が走り、その秘部は待ち焦がれていたかのようにヒクつくのを覚えた。
  「あ・・・あん・・・」
 今まで耐えていた女の鳴き声が、堰を切るように愛美の口から溢れ、またその声を聞きとった彼の指は、そのタイミングを逃さまいとするように、ショーツの上から愛美の身体の割れ目に沈み込んでいった。 
 愛美自身が発する淫らな声を聞きながら、彼の指の動きに合わせて、やらしい吐息を漏らして続けていたが彼の指がショーツの横から直接愛美に触れる事が出来る場所を探そうとした瞬間、
「もう、だめ、、、 
 お願い、、、、」
 と声を漏らしてしまった。 
 しかし意識とは別の部分からの言葉で、愛美自身この言葉の意味が『我慢できない』なのか『もう止めて』なのかは判らなかった。  
 

 その時、秋本の携帯が賑やかな着信音を発して震え始めた。秋本には着信音で、その電話が課長である事が直ぐに判ったのだろう。気まずい顔をし、愛美の唇に唇を合わせ
「ごめん、課長だ・・・」と、
愛美は黙って頷いた。 
 課長からは直ぐに戻るように指示を受けたらしい。しばらく二人の間に重く悲しい空気が漂い、愛美は今後の社内での関係を考えると憂鬱な気分になってきた。 
 黙って服装を整え、もう秋本と目を合わせる事も出来ないでいると、秋本は 
「軽い気持ちじゃないからな・・・ 
 今夜は無理だけど、 明日の夜、食事しないか?」
と笑顔を添え、沈黙から愛美を救い出してくれた安堵感と、嘘でも『軽い気持ちじゃない』と言ってくれた事が少し嬉しくて
 「うん。」
 と答えてしまう愛美だった。
  
 完全な出来心である。愛美には秋本に対する愛情は少しも無いはずだった。今までも男性経験はあったが、終わってしまったとは言え、すべて愛情とも呼ばれる感情で結びついていたはずであり、愛情を持たない相手に最後までとは言わないが身体を自由に委ねた事に後悔もするが、それよりも逆らう事が出来ない、拒めないほどの快感を覚え、性欲に溺れて行く自分に驚き、また嫌悪感を覚えずにいられなかった。 
 先程まで熱く濡れていた愛美の秘部は濡れたまま身体に張り付き、冷たい不快感を与えながら愛美を惨めな気持ちへと沈めて行くのだった。 
 帰社の途中も秋本は何かと気を遣いながら色々と話し掛けてくれたが、どれをとっても今の愛美には真剣に答えるべき内容とは感じられず、車窓からの景色を眺めるだけだった。
 『どうしよう やっぱり断らなくちゃ。。。』
とも思うのだが、そう思った直後には
 『でも、意外に好い奴かもしれないしな・・』
などと自分が溺れた事を正当化するようにも思うのだった。

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