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手塚治虫記念館を訪れてみた


手塚治虫記念館(以下、記念館)は、手塚治虫(以下、手塚)が幼年から青年期を過ごしたゆかりの地に建設され、1994年に開館してから30年経っている。手塚マンガに少なからず影響を受けた私にとって、記念館に一度行かねば!と思っていたのだが、このたびようやく訪れることができたのでここに報告したい。

手塚治虫記念館

阪急宝塚駅改札口を出て、そのまままっすぐ800mほど歩いていくと記念館にたどり着く。
入口の前にオブジェの「火の鳥」が待ち構えていて、
「ようこそ! 手塚ワールドへ!」と歓迎されているようだった。

オブジェ「火の鳥」

館内には、手塚のゆかりの品や原画、キャラクターのフィギュア、オリジナルアニメを上映するアトムビジョン、手塚マンガライブラリー、手塚マンガ・アニメの情報検索システム、アニメ作りを体験できるアニメ工房がある。

記念館のホール内

◆印象に残った展示物
手塚が初期の頃に描いた作品『マァちゃんの日記帳』や『新宝島』などの原画をじっくり見た。絵やストーリーに味わいがあって、これらの作品が世に出て80年近く経つというのに今も色褪せることなく生きているように感じられた。弱冠20代のときに描いたなんて驚きだし、畏敬の念さえ抱く。

『手塚治虫文庫全集 新寶島オリジナル版』
出版社 講談社

一番印象に残ったのは、絵本『びいこちゃん』の表紙。かわいらしいびいこちゃんの姿を初めて見たとき目が釘付けになった。擬人化されたミツバチのびいこちゃんが花の蜜を吸っている子にいたずらしようとしているおちゃめな雰囲気が漂う。手塚の細やかな描写に強い印象を残す。

『びいこちゃん 手塚治虫の絵本館別巻①』
出版社 河出書房新社

いやはや、マンガやアニメだけでなく絵本も描いていたとは知らなかったなぁ。後で調べてみると手塚は他にもいろんな絵本を描いていたそうだ。

◆フィギュアを見て思うこと
記念館のキャラクターのフィギュアは、火の鳥、鉄腕アトム、サファイア、ブラックジャックがあった。火の鳥と鉄腕アトムはなかなか精巧に作られていて手塚マンガとそっくり。つい、しげしげと眺めてしまうし、触りたくもなるではないか。
サファイアとブラックジャックは、顔がマンガとあまり似ていなかったのがちょっと残念。

左から「火の鳥」、「鉄腕アトム」、「サファイア」、「ブラックジャック」

記念館の裏庭にもヒョウタンツギ、ピノコ(ピノコはフィギュアではなくボードで演出)があるそうだが見逃してしまった。

フィギュアはインターネットでは味わえない楽しさがあるからこそ、ひげおやじやお茶の水博士など、他のキャラもどんどん追加していったらもっと楽しくなると思う。

◆オーノー!日本語字幕がない!
小さな映画館のようなアトムビジョンで手塚アニメ等の作品が観られる。今回は『しずく』、『ある街角物語』や『手塚治虫伝 マンガ篇』の短編アニメを観た。残念ながら日本語字幕がついてなかったので内容を理解しづらかった。ぜひ日本語字幕をつけていただきたい。(『しずく』は台詞無し)

◆便利な検索システム
3階に手塚のマンガ・アニメの情報検索システムがあり、数多く手掛けたマンガ、アニメのタイトルを年代別、五十音別、代表作、ジャンルから検索できるので何かを調べるのになかなか便利そう。アニメ作品もこの検索システムを通して観ることができる。これは記念館の強みでもあるだろう。

手塚マンガ・アニメの情報検索システム

◆島本和彦のマンガは素晴らしい!
企画展では島本和彦の原画展をやっていた。島本のマンガは昔読んだことがあるが内容を殆ど忘れてしまっていた。あらためて読んでみると、独特のコミカルなタッチ、エネルギー溢れんばかりの台詞にひきこまれてしまった。島本のマンガ力はめっちゃ凄い!とあらためて認識した次第である。
企画展は、年に2,3回テーマを変えながら展示をやっているのでおもしろいテーマをやっていたら見に行こう。

◆手塚マンガライブラリー
手塚マンガライブラリーに約400冊のマンガ、さらには英語、韓国語、台湾語など外国語に翻訳されたマンガもあり、実際に外国人がマンガを読みに来ていた。
記念館の入場券は昼食などで一度出て再入館することは認められているそうでその気になれば一日中マンガを読むことだってできる。
手塚マンガの読み放題、これも記念館の強みだろう。

◆昔、手塚邸宅があったところへ行ってみた
1階には、手塚が少年時代を過ごした当時の宝塚駅周辺のジオラマが展示されていた。手塚邸宅の周辺には森林と溜池が点在していて、自然に囲まれた環境のなかで住んでいたと分かる。

手塚が少年時代を過ごした当時の宝塚駅周辺のジオラマ

今は、溜池の一部が埋め立てられて住宅街や公園になっていたが、鉄道と道路は当時とあまり変わっていなかったので現在の地図で手塚邸宅のおおよその位置を特定できた。
手塚邸宅の周辺はどんな感じだったのだろうか? と、ふと興味がわいてきたので、展示を見終えた後に行ってみた。しかし、手塚がそこに住んでいたことが分かるような形跡は何一つも無かった。手塚がどのような環境で育ったのか想像しながら周辺を見て回った。それはそれで楽しいひと時だった。

◆記念館を後にして
展示内容そのものがインターネットで調べれば分かるものが多かったので、わざわざ見に行かなくてもよかったんじゃないかとも思ったが、振り返ってみればフィギュアや手塚マンガライブラリー、マンガ・アニメの情報検索など、インターネットでは分かりえないこともたくさんあったし、日にちが経っても展示で見た内容を忘れないでいる。だから見に行って本当によかったと思っている。


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