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霧矢あおいちゃんの10th STORYまでの成長の軌跡を補間しながら考える

この記事は、2022年7月現在公開中の映画「劇場版アイカツプラネット! / アイカツ! 10th STORY ~未来へのSTARWAY~」のアイカツ! 10th STORYの方の内容が含まれています。ネタバレを避けたい方は読まないでください。

2021年3月の芸カ24で出したあおいちゃんイラスト本の表紙



いちご世代リプライズ

今回の映画は、1期50話へのカウンターのような、1st & 2nd シーズンのセルフオマージュのような、カレンダーガールに対するドラマチックガールのような、そういう雰囲気を感じた。
随所にいちご世代本編を見ていたら気づいてしまうセリフや言い回しが散りばめられており、しかも当時の話し手と聞き手が入れ替わっていたり、それにより描かれる関係性の変化とその受容など、一言でいうと成長が感じられる作りだった。

とくに霧矢あおいちゃんは、今回ある意味主人公と言えなくなくなくもないわけで、あおいちゃんにフォーカスしてみると、あの頃(50話)、大切な人の旅立ちを突然知らされ手を繋ぎとめきれなかった(とはいえ最終的には旅立ちを応援する)あおいちゃんが、その後に繋ぎ直した手を今度は自ら放す(という言い方は語弊あるが)ことも厭わず、それでいてソレイユ3人の気持ちは互いにより強く結びついて、しっかりとした絆があるように感じられた。

あおいちゃんが誰よりも先に進路を決めたこと、ソレイユがそれを受け入れる度量のあるユニットであったこと、がとても嬉しかった。

霧矢あおいの自立

霧矢あおいというアイドルを皆どのように見ていたんだろう。
雰囲気に流されやすい?空気読みすぎ?ものわかりよすぎ?自分を抑えがち?自己評価が低い?……
無敵のトップアイドル美月・いちごに対し、普通の女の子のような側面も持ち合わせて身近さを感じさせるアイドルみたいな印象を持っている人もいたのではないかと思う。

ただ、そんな初期の印象をまとったあおいちゃんは映画の中にはいなかった。もちろん変わらず魅力的な存在ではあるのだけれど、スターライト学園編入したての頃から比べたら遥かに自立したひとりのアイドル「霧矢あおい」がスクリーンには描写されていたと感じた。個人的には前述のように、そんな自立したあおいちゃんが主体的に将来を決断する姿が嬉しかったし、違和感もなかった。

これまでのあおいちゃんの成長を辿ったり、また、本編では語られない、あかり世代以降のあおいちゃんやソレイユの成長を想像してみることで、スターライト編入初年度の駆け出しアイドル「霧矢あおい」から、夢のためにソレイユ活動休止も視野に入れ留学を自ら決断できる「霧矢あおい」になっていく姿が、見えてくるんじゃないかと思う。


いちご世代本編で伺い知れる成長

まずは1st & 2ndシーズンでも伺い知れる人間的成長を、まったくの主観でいくつか挙げてみる。

まずは7話、つぶやきに御用心ではネットの情報に振り回され、大切なことを見失う様子がみれる。が、同じ話数内で、目の前にいる大切な人をちゃんと見て、その言葉に耳を傾けることができるようになっている。

次いきなり飛んでもう1stシーズン最終話なんだけれど、予期せず知ってしまったいちごちゃんのアメリカ行きに関して、知らないふりしたり、その挑戦を歓迎して応援したり、見ているこちらも辛くなってしまうほどの感情の押し殺し具合をみれる。が、カレンダーガールBGMで空港へ向かう描写ではもう涙を流しているし、バスの中では押し黙っていちごちゃんにもたれかかっているし、空港では周りにも支えられ、感情を吐露してしまう。書いてて泣けてくるなこれ。
聞き分けがよさそうなのって、このときの印象が強いと思うんだけれど、ちゃんと気持ちは吐き出してるよ、ってところ忘れないでいたい。

さて、次は本編中の時間はそれなりに経つけど、話数的には前述1stシーズン最終話から連続した2ndシーズン開始当初、星座アピール出せる自信がなくて帰ってきたいちごちゃんにステージ譲るのあるけど、ここでの自己評価の低さ、も印象に残りやすい。ただ、のちのち71話、キラめきはアクエリアスにてこの壁を乗り越えるのもご承知の通り。

その71話より後でもなお、引っかかる描写は出てくる。79話、パートナーズカップの相手選び関連にて、寮の部屋でふたりともそれぞれのベッドの入った状態での会話。
「いちごはセイラちゃん(と組むのが)がいいと思う」ってあおいちゃんから切り出して、最後、いちごちゃんが「美月さんが言ってた。運命のパートナーがわたしにもいるって。セイラちゃんがそうなのかな…」を聞いたのときのあおいちゃんの、もの悲しげな笑みを浮かべる様子は、この時点でのまさに「THE・霧矢あおい」というエモさ満点。ここもまた、自分を抑える、ものわかりのよさ、みたいな印象あると思う。
でもこのときは50話前半のような、ただただ感情を押し殺している状態じゃなく、アイドル博士でありつつ、さらにこの時点では71話を経てプロデュース能力も上がってるというのがあり、WMに勝つにはいちご & セイラしかないという道筋が見えてしまっているがゆえに、自分はいちごの隣には立てないって気付いてしまって、の表情だと思う。これはプロデュース能力やアイドル博士能力とセットでついてくるので、霧矢あおい自立への最後の試練として壁になるものだと思う。

これ以降「自立」への成長という切り口でみていくと、そんなに取り上げるエピソードがないと思っている。大スター宮いちごまつりで活躍して、一層プロデュース能力高めたくらいで、次はもう明確にあかりちゃんらにバトンタッチする125話で、そこではもう、ソレイユを続ける目標を語る力強さ、絆の確かさ、など、よくよく考えるとなにがあったんだってくらい、ひとまわり成長した「先輩」になってしまっている。

追記:
大事な話について書き漏れていた。146話「もういちど三人で」。それぞれがソロで活動しつつもソレイユとしての活動も大切に考えていて、それぞれががんばることで、3人一緒になったとき何か一つのことを達成することができる、と語るいちごちゃんがいる。この想いはソレイユ3人とも同じだろう。同話では大スターライト学園祭の企画発表までもしており、この時点でのソレイユは125話からさらにまた一皮剥けたような印象がある。ただ、やはりあかりジェネレーション期間中の話なので、ソレイユの3人がOurDreamツアー中にどんな時間を過ごしたのか(や、
この後過ごしていくのか)は想像するしかない。


あかり世代でのソレイユ

あかりジェネレーション以降のソレイユは、先輩アイドルの風格を漂わせ、後進の道標として存在してるのは言うまでもないと思う。125話でツアーに行く様子や、146話で大スターライト学園祭を企画するところなどからも。
もちろん霧矢あおいちゃん自身も、ソレイユのひとりとして同様の存在感を放っていて、ソレイユの進むべき道を自分の言葉で語れていて、いちごちゃんが決めたことに乗っかっているわけではなく、3人ともが納得して導き出した未来を見ていて、自信に溢れている姿に感じる。

ただ、そこに至るまで、2ndシーズン終盤〜125話でのOurDreamツアーに出るまでソレイユとしての活動エピソードはほぼないし、霧矢あおいちゃんソロとしての成長エピソードなどもない。WM戦で復活したソレイユがOurDreamツアー開催に至るまでに何か一皮剥けるようなことがあったんじゃないか。
さらに146話では、125話時点よりもソレイユがまた成長した様子も伺えるが、間で何があったかは具体的には描写されいるわけではない。

作品上での世代交代を果たしたため出番が減った、125話(102話)〜178話やそれ以降ではソレイユや霧矢あおいちゃんはどんな成長をしているのか。10th STORYで見せた、自立したアイドル霧矢あおいとしての姿に至るまでを補間してみたい。

二次創作を通じてたくさん考えたこと

ここからは、手前味噌だけれども、自分がこれまで描いてきた二次創作作品の一部を交えつつ、霧矢あおいというアイドルやソレイユの関係性がどう変化していったか、本編では描写されてない様子を(想像でしかないけれど)考えてみる。

まずは、2ndシーズン終盤から125話OurDreamツアー開始に至るまでの間について。きっとこんなことがあって、ソレイユとしての絆が深まったんじゃないか、というものを。

▶︎ ソレイユがOurDreamツアーをやるに至る話(時期的には大スター宮後)

10th STORYと若干被るところはあるんだけれども、卒業後含め、3人それぞれの将来ということを考え始めたことをきっかけに、ソレイユの絆がより一層深くなった、という話を描いた。もともと信頼関係はあるけれど、これまでは踏み込みきれてないところもあったというか、そうする必要すらなかったのかもしれない。それが、それぞれの卒業後の進路を視界に入れようとすると、一歩踏み込まざるを得なくなり、互いの想いをぶつけあって自分達がどうしたいのかを導き出した答えが「ソレイユを続けたい」で、そのためのOurDreamツアーが生まれた、という想像。自分の感情に嘘をつかず、言いたいことをちゃんといちごちゃんに言えるあおいちゃんと、それをよしとする蘭ちゃんさん、がいる。この頃に、ソレイユを続ける目標ができて、その過程で3人の絆が深まったんじゃないか、だからこそ、125話でのソレイユの存在感があるのでは、という考え。


次は、キラめきはアクエリアスを経てもまだ燻っていたと僕が考える「プロデュース能力やアイドル博士能力とセットでついてくる、客観視しすぎて一歩引いてしまう癖」をどう乗り越えたか。

▶︎ あおいちゃんがいちごちゃんとユニット組む話(178話以降想定)


ユニットカップのリベンジみたいな気持ちで、いちあおユニットが見たい!って動機で描いた話ではあるんだけれど、その中であおいちゃんは、アイドルとしても成長しプロデュース力もつけて自信がついたからこそ、自分含めいちごちゃんに対してまでも客観的に見てしまうところがあり、それゆえ「一歩引いて」しまう壁にぶちあたる。それでも、本当に自分のやりたいことは?いちごちゃん自身の気持ちは?、と、自分自身の想いにも相手の想いにも向き合うことで、下手に気を遣うことなくむしろ想いを伝え合って一歩進む。いちごちゃんとのユニットきっかけに、周囲の人はもとより、自分の気持ちも大切にして主体的に行動できるようになっていった…ってなお話を描いた。まあいちあおユニットという妄想はおいといて、高等部在籍中に、こういった、主体性アップの過程がなにかしらあってもおかしくはないんじゃないだろうか。先に挙げたソレイユのところでも自分の気持ちに正直に、というのは出てきたけど、こちらは、あおいちゃんのスキルの高さ故の壁、の乗り越え方という意味で若干別口ということで。


さて、10th STORYでは先生を目指すって目標ができてたけれど、そこに繋がる根本的なところってこういうところにあるんじゃないか、とも思えるものも描いてたので、それを。

▶︎ SHINING BLUE*(178話以降想定)


これは美月→いちご→あかりのSHINING LINE*の霧矢あおいちゃん版を考え、どんな子があおいちゃんの輝きのバトンを継ぐんだろうと考えることで、あおいちゃん自身を深掘りできるのでは、というコンセプトで描いた本。これを描いたことで、霧矢あおいがアイドル霧矢あおいでいる理由ってものを、以下のように考えることになった。

  • アイドルが好き

  • アイドルには輝いていて欲しい

  • 自分もアイドルとして輝きたい

  • 一緒に輝きたい人がいる

10th STORYの方で、指導した後輩ちゃんたちが輝くのをもっと手伝いたいって思いつつ、自分自身のアイドル活動も続けるつもりって言っていたのに、ちょうど当てはまるんじゃないかと思う。これは成長エピソードではないけれど、先生目指す動機の方に対する、掘り下げにもなると思ってる。


ここまで、主体性持てるようになったよ、ソレイユも絆深まったよ、先生目指す動機ってこういうことじゃない?、ってこと書いてきたけれど、ソレイユ活動休止はそうはいっても大決断だよね、とも思う。それに対してはツイッターに載せたこの8p漫画がいい線いってるんじゃないかと思う。

▶︎ ある年のいちご誕(178話以降想定)
https://twitter.com/piyotori/status/1107341172370870272

いちご誕をテーマに描いたのだけれど、50話のことを思い返す描写を入れている。かつては見送るしかできなかったいちごの旅立ちに対し、もし今度そういうことがあってももう大丈夫、っていうかソレイユの誰しもが新たな挑戦をする可能性はある、といった感じに。ソレイユとして飛躍するためには1人1人がまた新しいことに挑戦していくこともあり、むしろ必要になるかもしれない、そしてそのときは(いちごちゃんがアメリカ留学したくらいに)一時的に3人が離れて活動することも起こり得る、という考えをあおいちゃんが持てるようになったと想像した(そこに至るまでは、前述のソレイユとしての絆の深まり、あおいちゃん自身の成長、など含めた総合的な進化だと思う)。146話で垣間見えたソレイユの姿の延長上にきそうではあるけれど、(一時的に3人が離れて活動することも起こり得ると、)そう考えられるようになっていたら、ソレイユ活動休止という大決断に至る道筋も、あり得る話だなと思える。


ソレイユの存続とそれぞれの成長という両輪

ソレイユっていう拠り所があるからこそ、1人1人がもっと挑戦していけるし、そうして1人1人が成長していくからこそソレイユも進化できるし、だからこそソレイユの存続も可能になる。それには3人とも自立しなきゃいけないし、でも独立しているわけでなく、互いに競い合い、支え合い、求め合う、そういう関係。あおいちゃんをはじめとして、そういう風に3人ともが成長し考えられるようになってきて、そしてその観点であおいちゃんは次の目標をアイドルを輝かせる方面に置いた……

この10th STORYで確定した未来は、自分が本編の情報を元にしつつ想像して考えてきたことが繋がったかのような、めっちゃあり得る未来を見せてくれたように感じた。

製作陣に対しては、可能性としては無限にあったいちご世代の未来に対して、これ、という道筋を選び取って作品にしてくれたことがとても嬉しく、2023年公開の続編(になるのかな?)もとても楽しみにしている。


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