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蛸の日

蛸の足が八本あることから、広島県・三原観光協会が制定。
関西では半夏生に蛸を食べるので7月2日がタコの日である。

タコの生態は奇妙で、脳が9つに心臓が3つあるらしい。足は切っても再生できるのだとか・・・じゃあ生ダコで足を食べても、また再生できるかといえばそうでもなく、ストレスがかかるとこの機能が働かなくなるという。。。
遺伝子的にみてもタコは常識ハズレらしい。
タコ(pieuvre)は正確には”地球外生命体(エイリアン)”ではないが、まずは遺伝子の研究者達を驚かせたのはその遺伝子情報の複雑さである。タコの遺伝子は非常に進化していて、33000の遺伝子からなる。ヒトの遺伝子がそれに比べて少なく25000である。

On pourrait croire à une plaisanterie, et les pieuvres ne sont pas exactement des "aliens" venues d'un autre monde au sens où on l'entend généralement, mais c'est la complexité de leur matériel génétique qui a frappé les scientifiques. Le génome des pieuvres, connues pour être des créatures extrêmement évoluées, contient ainsi quelque 33.000 gènes, contre "seulement" 25.000 pour l'homo sapiens.

タコは他のどの生物とは違ったように見える。ほかの軟体動物とも違っている。補足機能を持つ8つの”腕”、大きな脳、そして問題解決能力をもつとRagsdale氏はいう。270億年まえから、我々の祖先が下品な魚にしかみえないとずっとみなしてきながらも、ずっと刺激的な動物だったのである。
この動物がエイリアンであると云われても誰も驚かない。

La pieuvre apparaît totalement différente de tous les autres animaux, même des autres mollusques, avec ses huit 'bras' préhenseurs, son grand cerveau et sa capacité à résoudre des problèmes", note Clifton Ragsdale, ce qui en fait un animal d'autant plus passionnant qu'il est apparu il y a quelque 270 millions d'années, alors que nos ancêtres ne ressemblaient encore qu'à de vulgaires poissons. Pas étonnant que l'animal ait si souvent inspiré des personnages... d'aliens.
●mollusques ... 軟体動物
●préhenseurs ... 補足器 

蓋のついて器の中に餌を入れておくと、タコはそれを器用に蓋を開けて中の餌を食べるらしい。たしかに驚くべき解決能力だ。

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タコが恐るべき遺伝子情報をもっていると書いた。
この遺伝=génétiqueという言葉を創ったのはウィリアム・ベイトソンで、
1861年の今日が誕生日である。

William Bateson est le premier à suggérer le terme de génétique pour décrire l’étude de l’hérédité et la science de la variation dans une lettre à Alan Sedgwick datée du 18 avril 1905 (et non à Adam Sedgwick qui fut professeur de Charles Darwin). Il utilisera publiquement ce terme lors d’une conférence internationale de 1906. Trois ans plus tard, Wilhelm Johannsen (1857-1927) utilise le terme de gène. Traducteur de Mendel en anglais, on lui doit également d'avoir donné un nom aux facteurs mendéliens : allélomorphes et d'avoir conçu les termes : homozygote et hétérozygote, ainsi que celui d'épistasie.

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 遺伝というのはある程度の不可能を人々にもたらす。
それは特に教育現場にとって、”不都合な真実”だ。でもある程度、誰もが、うすうすは気づいている事柄だ。
 認知科学の領域ではかなりの程度、知能は遺伝であるという研究が進んでいる。ところが、リベラル派はこれを認めたくない、なぜなら”肌の色以外は人は平等であるべきだ”という信念があるからだ。
 この信念から”やればできる”という結論がでてくるのだが、こいつがかなりやっかいな代物である。ある程度真実らしく見えて、その実、大嘘だからだ。ある部分に関しては人間は蛸に敵わない。遺伝子数8000の違いは努力でどうなるものではない。
 アドラーがいうように、世の中の鬱のほとんどは、人間関係からである。
その根本原因は、能力を超えた多くの物を引き受けてしまうことが大きな要因の一つだ。引き受けた手前、努力でカバーしようと頑張る。そして、これは正しい行動でもある。何事にも努力が必要なことは遺伝と関係はない。
 実際、”やればできること”は世の中に多くある。しかし、”やってもできないこと”もあり、その見極めがつかないことが実に多い。そして見極めに失敗すると、能力を超えて、”やってもできないゾーン”に知らず突入してしまう。
 このゾーンに突入しても、”やればできる”という信念が人を支配する。
話は飛躍するが、世の中のシンデレラ物語、ヒーロー物がこれに拍車をかける。イチローは努力の人だ。でも努力すればイチローになれるものではない。
 ところが、リベラルはこの事実に目をつぶる。そして、できないのは、”やる気がない”から、というモチベーションを盾にとる。努力したのにできないことは複雑化・高度化が進む社会では多々あり、モチベーションだけでは実はどうにもならない。ところが、それをモチベーションのせいにすると、人間関係がこじれてしまう。
 努力を美徳ととる歪な美学が自分のクビをしめる。できないのは努力が足りないせいだ。。。でも本当に努力の必要な意味は、自分の能力を見極めるためである。人間関係をこじらせないためにゾーンを見定めるためである。(将来、AIがこれを判定してくれるようになるかもしれない)この見極めは失敗や試行錯誤でしか学習できない。負荷をかけて自分の能力を推定するのだ。これが信頼をつくる第一歩である。

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中宿の内儀(おかみ)おどけて脈をみせ

古川柳にこうある。僧侶は遊郭にいってはならない戒律のためだ。しかし欲に勝てない僧侶はお坊さんに変装をして遊郭にいった。女将のほうは万事承知で脈をみてもらっているのである。「偽医者と人に語るな女郎花」なんてのもある。”女郎花”は、僧正遍昭の「名にめでて折れるばかりぞ女郎花われ落ちにきと人に語るな」から文句をとっているからで、元の句がわからないとなぜ女郎花が出てくるのかわからない。

酢天蓋などこしらえてかこいまち

仏堂にある天蓋は蛸に見えることから 蛸の隠語である。
お妾が酢だこをつくって坊主のくるのをまっている姿を滑稽として詠んだのだ。戒律は守られないのが世の常、世の中の矛盾を蛸の姿の奇妙とともに笑いに変える江戸の包容力が見て取れる。

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 利己的な遺伝子に逆らって戒律を守り通すことは難しい。
戒律を破ることは厳罰で立派な僧侶なら島流し、若い修行僧なら日本橋に3日間晒し者になる。

生臭い毬栗(いがぐり)の出る日本橋

 けれども、それが人間である。
 僧正遍昭は馬から落ちたときに、”名にめでて・・・”を詠んだ。落馬したときに誤って女郎花を折ってしまったのを”名に愛でた”ことにしたのである。こんなふうに自分を取り繕っても、滑稽なだけであるが綺麗事が好きな人は実に多い。

Le concept de monnaie hélicoptère a été défini pour la première fois par l’économiste américain Milton Friedman. Il y développait une métaphore : les autorités monétaires impriment des billets et les jettent d’un hélicoptère dans les rues. Les gens les ramassent et les dépensent, ce qui permet de faire repartir l’inflation en territoire positif.

 フリードマンは、ノーベル賞をもらった程の偉い経済学者さんである。リベラルの旗手でもある。ヘリコプター・マネーを撒いてインフレを奨励したり(これがアベノミクスを招いた)
また、AIがもたらす、世の中の変化に対する対策として、

”このとてつもない変化に遅れないようついていくには、すべての労働者が「生涯教育」によってスキルを高めていかなくてはなりません。そのためにはAI(人工知能)を人間の競争相手にするのではなく、知的支援(インテリジェント・アシスタンス)のような「IA」に変えて、職務に必要なスキルを低コストで身につけられる教育機会がすべてのひとに与えられるようにしなければならないのです──。”

 教育バウチャー制度がここからでてくるのであるが、無駄金に終わることは明らかだ。教育すればAIに勝てる人材を作れると本当におもっているのだろうか。。。
 そんならいいや、ならばそれを利用しよう。ということで、私もリベラルを標榜するのである。
 能力高い遺伝子をもった人から、能力の低い私のような人々に生きていく糧をヘリコプターマネーのごとく撒いてくれるような社会を望む。AIがそういう結果を出すようになればいいな、と思うのだ。
 私は努力して”知の巨人”になり、蛸のように飄々と生きていこうと思ったが、どうやら遺伝子をもっていないことに気付かされた。しかしながら、気づいたからって私は諦めない。そこで、若い人に教育する道を選んだ。私の教え子の中から将来私を養ってくれる人を探し続けているのである。
 能力を遺伝だけで決めつけるのはたしかにおかしい。環境因子があるからだ。環境を整えるべく努力していこう。

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<来年の宿題>
・AIと遺伝子
・章魚
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