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コピーライターの日

1956年1月28日に著作権(コピーライト)を表すマークとして”©”が制定された。それで発音が似ているコピーライター(似ているのか?)の日である。発音が似ているからという理由がなんか腹落ちしない。が、ほとんどの語呂合わせも同様に腹落ちしないのでこれも同様であるのか。。。

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スペースシャトル「チャレンジャー号」は1986年に打ち上げられた。
大勢が生中継でその様子をみていた。73秒経過後、渦巻上の大きな白煙をあげて爆発した。乗組員7名は死亡した。その中に高校教師クリスタ・マコーリフが含まれていたため、悲嘆にくれる人が増え、メディアは報道を過激にした。
事故原因はすぐにわかった。Oリングといわれる部品である。チャレンジャー号のロケットブースターの接合部分の隙間を防ぐ。この接合部分のうち一箇所の密着がうまくいかず、漏れ出した燃料ガスが支柱を伝わって発煙筒のように燃えてしまったのだ。発射場所がケープ・カナベラルで、この地の低温度がOリングのゴムに甚大な影響を与えていたと説明された。
この懸念は実はすでに製造会社であるモートン・サイオコール社の研究員から出されていたという。

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制作途中までは、サイオコール社はこの接合部分の機能に自信があった。マーシャル宇宙飛行センターがこの自信とは反対の意見を出していたのだ。この食い違いを解決するため、ハイドロバーストテストが重ねられた。圧力をかけた水を接合部に吹き付け打ち上げ時にかかるストレステストを実施したのである。このテストではたしかにマーシャル(=NASA)が正しく、Oリングを吹き飛ばした。しかし、サイオコール社はこの実験結果に承諾はしなかった。第一にこのテストの環境自体が、現実の場合とかけ離れている。実際の飛行では1回しかこの圧力を受けない。なのにテストは20回も施行された。しかも、最初の8回までは正常に機能していたのだという主張である。
ウィトゲンシュタインは、

2つのものが似ているのか違うのかは、常に人間による判断を含んでいる

今回のこのテストはこの問題の派生だ。このテストは、本番(打ち上げ)とどれだけ似ているのか、サイオコールは似ていないと判断し、NASAは似ていると判断したのである。
どんな部品も100%安全とはいえない。どこまでを安全とするかは設計思想にかかわる。これには他の多くの事象関連しているため、その全部に対して耐えうるようなものは現実には作り出せない。
このあと、この不一致を解消すべくさまざまなテストが実施されたが、新たな不一致を生み出すだけであった。良いテストを行うまでは、何が正しいのかわからない。なにが良いテストなのかは、テスト実施までわからないジレンマがずっと続く・・・ましてや宇宙開発は未知の分野、定量的に測る正しい”ものさし”を定性的な経験を積んで作り出さないといけない段階である。
研究者たちは、技術的な問題に真摯に取り組んだ。改良を重ねていって、やがて、100%は無理でも、許容範囲で十分に冗長性を保つことをマーシャルとサイオコール社で一致をみることになったのである。
 しかし、打ち上げ本番が近くなったころ、「噴き抜け」が発生した。噴き抜けとは、密閉が行われるほんのわずかな時間に高温の燃料ガスが通り抜けてしまうことを指す。サイオコール社のボージョレー氏は、寒さが密閉能力に影響あるのではないか、と思い始めた。寒い中ではゴムの能力は低下する。この能力の低下がもたらす影響に技術者たちは不安を覚えていた。
サイオコール社は長い議論の末、打ち上げ中止の結論をだした。とくに摂氏12℃未満では見合わせるべきだと勧告した。
けれども、チャレンジャー号の打ち上げは決定されてしまったのだ。
NASAからみれば、なんどもテストをしてお互い合意にいたったのに今更なにをいうか、という感じであった。もちろん議論は重ねられた。
いまは我々は打ち上げ決定が間違いだったことを知っている。その見地からは、言いたい放題言えるだろう。

NASAが低温がもたらす危険性を知っていないこともない。議論はつくされていた。NASAは低温と「噴き抜け」の因果関係が解明できないこと、Oリングについては十分テストされており、しかも冗長性も確保できているという科学的根拠によってサイオコール社の勧告を退けたのだ。

シャトルの成果を求める圧力は大きかった。チャレンジャー号には、15回にわたる飛行が予定されていた。積荷にはハッブル宇宙望遠鏡を含む科学実験装置があった。すでに何度も打ち上げが中止や延期を繰り返していた。宇宙計画をめぐる財政面での懸念も取り沙汰されていた。

Nachträglichkeit(事後性)をもって、こう解釈せざるをえない。NASAの経営陣はプレッシャーに屈服し、技術者が危険だと想っている打ち上げを強行したのだ。チャレンジャー号の乗組員たちはその決定によって犠牲になった。

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作家の大江健三郎は、チャレンジャー号の大爆発を、
「宇宙意志からの警告」
だとした。
これをたしかめるテストは浮かばないが、いい”コピーライター”になったことは間違いない。

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<来年の宿題>
・キャッチコピーと江戸
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●見出しの画像
マスナビBookから出版された「これから絶対コピーライター
という書籍。(画像はお借りしました)


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