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仕事で分からないことがあったら、奇声を上げたらいい

そろそろ4月だ。

来月から新社会人になる方々は、初めての生活を前に不安を抱えていることだろう。

この記事では、私が大学生の頃に、先に就職した演劇サークルの先輩(※1)から教わったアドバイスを紹介したい。これは、私が今まで教えてもらった仕事関連のアドバイスの中で、もっとも役立ったアドバイスであり、私はこのアドバイスにずっと助けられてきた。

そのアドバイスとは、「仕事で分からないことがあったら、"うおおおお!"と叫べ」というものだ。

やり方

具体的なやり方だが、以下の手順である。

1.  仕事中に、自力での解決が難しそうな問題に直面する。
2. 自力で10-15分くらい調べてみる。
3. まったく分からない。
4. "うおおおお!"と奇声を上げる。

一つずつ詳細を見ていこう。

1.  仕事中に、自力での解決が難しそうな問題に直面する。
私も先輩もWebエンジニアであったが、仕事をしていると、なぜ起きているのか分からないエラーや、自分だけの業務知識では判断できない設計の問題などに直面する。

「これはヤバそうだぞ」という匂いがしてきたら、その段階で、独り言で「来ましたねぇ〜〜⤴️」「今日も始まったゼイ」などと言っておくと良い。奇声を上げるにはテンションが重要なので、この段階から自分をドライブさせておく。

2. 自力で10-15分くらい調べてみる。
Webエンジニアなので、ネットで調べるとかなりの割合の問題は解決策が転がっていることが多い。困ったら、とりあえずGoogleで調べてみることが大事だ。

調べている最中も、「上半身がリズムを取って揺れ始める」「頭を抱える」などで、体を動かしてほぐしておこう。自分の気持ちにのるのが重要だ。

3. まったく分からない。
検索してもわけがわからなかった。検索結果の上の方に出てきた記事を読んだが、書いてある単語がほとんどわからない。基本知識から足りないようだ。基本を勉強しようかと思ってその分野の本を見てみたが、読むのに3日くらいかかりそうだ。このままだと締め切りに間に合わないかもしれない。

4. "うおおおお!"と奇声を上げる。
10-15分くらい調べても分からなかったら、調査は続行したまま、職場の他の人に聞こえるくらいの独り言で

「うおおおお!分かんねえ〜〜!!!○○ってなんのことじゃ〜〜!!イミフ〜〜〜!!」

などと声を上げはじめよう。もし職場で声を出しにくい環境なら、身振りだけでもよい。

大事なのは「ヤバそう」な言動である。"本人がヤバいのか、状況がヤバいのか、どちらとも判断できないが、なんかヤバそうな感じ"が周囲から一目で伝わるような言動が重要だ。事態の「ヤバさ」に合わせて、声の大きさや身振りの大きさを変えるとより効果的である(※2)。

効果

1. 自分のヤバそうな状況が周りに伝わる

新人の入職時は、(良い意味か悪い意味かはさておいて)職場の先輩方も、「新人がちゃんと仕事ができているかどうか」を気にかけているものであり、状態を知りたいと思っている。

そして、先輩がもっとも恐れるのは、「新人が、仕事で詰まっているのに、問題を一人で抱えこみ、事態が手遅れになってから相談がくること」である。

そんな時、「仕事に詰まっているか詰まっていないかが外から見て一眼でわかる」というのは、先輩方からすると大変便利である。原因はわからないが、とにかく「新人がヤバそう」なことが分かれば、話を聞くなり援助するなり、アクションが取れるからである。

理想を言えば、どういう事態なのかを逐一新人が先輩に報・連・相してくれればいいわけだが、入職してすぐの人間が、自分の置かれている状況と課題をちゃんと言葉にして説明するのには無理がある。それは、高度な社会人スキルなのだ。全ての人ができるわけではないし、訓練が必要だ。

「自分の能力不足が原因だから」という理由でなかなか人に相談できない場合もあるだろう。だが、それは傲慢というものだ。新人が「自分の能力が足りないのか、それとも状況が悪いのか」を判断するのは難しいし、しばしば誤っている。

新人が判断できるのは「このままではヤバそうだという感じ」だけだ(※3)。それ以上、詳細な情報を伝達するには、状況を整理し、どの先輩に、いつどうやって相談するかを考え、先輩とのミーティングの時間を抑え、話を聞いてもらう、という膨大なコストがかかる。だが、"奇声"なら、これらのコストは全部不要だ。一目見ただけで、その場にいる全ての人に「今、アイツはヤバそうだ」という情報だけが簡潔に伝わる。

2. 話を聞いてもらえたり、助けてもらえたりする

自分のヤバそうな状況が周りに伝わると、先輩方や同僚が近寄ってきて教えてくれる。よっしゃ。

3. 仕事が遅れた場合でも、周りの理解が得られる

もし教えてもらえなくても、それは上司や他の先輩方が「まだ介入しなくてもいいだろう」と判断したということである。その結果として、仕事が遅れた場合、何も言わなかった時に比べれば、「そういえばあの時、明らかに仕事に詰まってたけど、誰も助けてあげなかったもんね、仕方ないね」という周囲の理解を得やすくなる。

利用上の注意点

1. 職場の他の人を批判する気持ちがある時は使用を控える

Twitterの空中リプライ然り、「他人に向けられた独り言」はしばしば思いもよらぬ害をうむ。特に、人は他人の声に「自分が責められている感」を読み取ると、途端に耳障りに思い、ストレスを感じるものだ。

「なんで他の先輩方は私を助けてくれないの」という恨みがましい気分の時にこの方法を使用すると、人を責める含みが入ってしまうことがあり、職場全員に嫌われる要因を生むので、これは大変危険である。

"奇声"は、あくまで独り言として仕事の進捗状況の「ヤバさ」を実況するものである。なぜ仕事が進まないのか、「自分の能力が足りないのか、それとも状況が悪いのか」という判断は別の話なのだ。

2. 言葉にできる時は、ちゃんと言葉で報告・連絡・相談する

言うまでもないが、"奇声"は言語化するのが難しい時の手段であり、言語でちゃんと伝えられる時は伝えよう。特に緊急度や危険度が高い事態の場合は、できるだけ早く、責任者に報告・連絡・相談するとよい。

3. 職場に困っている人がいたら、普段から話を聞く、助ける

"自分の業務範囲ではなくても、困っている時はお互い様"という価値観があるからこそ、"奇声"は成立する。職場の人に普段から話を聞いておき、自分にできることがあれば助けておこう。

どう相談するか悩んで動けなくなる前に、声を出せ

自分の弱さを晒すのは難しい。仕事で分からないことを聞くこと、仕事が遅れていることを伝えること、周囲に助けを求めること、どれも、恥ずかしいことのように思える。

だが、新人のうちは、これらができなければ仕事にならない

今回紹介した"奇声"は、使う人を選ぶ突飛な方法ではあるが、職場の人と、最低限の助け合いの関係を築くのにとても効果的である。これがなかったら、私は社会人として働けていないと思う。マジで。

言語化が苦手な人、人に頼るのが苦手な人ほど、「とりあえず声を出す」というのが大事だと思う。お試しあれ。

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※1 Twitter(@jugglertansan)。余談だが、私は在学中に彼と彼の奥さんの両方から恋愛相談を受けており、二人が結婚した後にそのことを打ち明けたら、「そんな武器商人みたいなことしてたの」と言われた。

※2 私の場合、弱い時だと「独り言が増える」「リズムに合わせて上下に揺れ始める」くらいから始まり、中くらいで「椅子に大きくもたれかかる」「頭を抱える」「落ち着きなく歩き回る」になり、これはもしかすると自力ではどうにもならないかも、と思い始めたくらいで「"うおおおお!"と叫び出す」「slackに泣き言を投げ始める」「謎の自作曲を歌い始める」などになる。

※3 この記事では触れていないが、「自分の能力が足りないのか、それとも状況が悪いのか」を判断できないのと同様、新人の「このままでは仕事がヤバそう感」もまったく正確とは言い難い。仕事をしていると毎日たくさんの「ヤバそう感」に遭遇するが、実際にヤバい事態に至るのはその中のごく一部である。私の場合、"奇声"を上げ始めた場合でも、5割くらいはそのあとの自力の調査で解決でき、何事もなく収束する。(だからこそ、「もしかしたら自力で解決できるのでは」という甘い誘惑に囚われ、事態が手遅れになってから相談するハメになるのだ。)
自力で解決できる可能性があってもなお、早いうちにアラートだけでもを上げておくべきだ。早くからアラートさえ上げておけば、先輩方が「どのくらいヤバくなったら介入するか」を判断してくれるので、あなたは「そろそろ報告しないとまずいかも、いや、でも・・・」というウダウダから解放される。

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