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ENGAG.INGが解散したあの日のこと

2020年9月30日19時

ENGAG.INGの解散ライブを大画面で見るために、予約していた秋葉原のパセラでいそいそと準備していた。
あまりにも緊張していたからか、正直この日の記憶は10日前のライブに比べるとかなり薄い。号泣して喚くことやMIXを大声で叫ぶことを想定してパセラを予約したのに、そんなことをする余裕もなく3時間じっと画面を見つめていたことしか思い出せない。ただずっと"悔しいなあ"と思っていた。

思えばそれは8月14日に解散発表、最後のライブがオンラインのみだと知ったときから徐々に大きくなっていた感情だった。誰も想像していなかった突然の発表だったし当然わたしにとっても青天の霹靂だった。でもすぐに「いつかは来るものだとわかってた」、「推しは推せるときに推してきた」、「オタクとして潮時だな」と思ったことも覚えている。いつかそのときがくると覚悟していたことも本当だし、推しきったなと思ったことも本当だけど、自分自身に解散を納得させるために言い聞かせていた部分もあると思う。いつからかオタクをやっている間に、自分1人ではどうにもならないことや喚いても嘆いても変わらないことがあることを知って、それも運命だとか仕方のないことだと物分りのいいふりをするようになった。いちいち一喜一憂したりしないオタクになりたかった。会いに行けない自分に落ち込んでいた頃に比べれば、仕方ないまた会いに行こうと思い直せるようになったのは健全だと思うし、間違った選択ではなかったはず。でもさすがにENGAG.INGの解散は、運命という言葉では片付けることができなかった。納得できなかった。1年経ってようやく、あのときすごく悔しかったんだと思えるようになった。

いつ泣いてもいいように膝にはタオル、いつもの曲が始まったら振り回せるように机にペンライトを用意して準備万端だったが、ライブが始まってもそれらを使うことはなかった。どうしてわたしがここにいて、どうしてこのライブが画面越しでしか見られないのかと強く思った。デビュー曲から時系列に1曲1曲歌われるたび、懐かしい記憶とともに、あのときもっとお金を使っていれば…わたしにもっと友達がいたら…と今まで考えないようにしていた"たられば"が溢れてきた。
2月のワンマンで発表されたが中止になってしまった無料ライブ・定期公演が開催されていたらきっとこの素晴らしいパフォーマンスでファンがたくさん増えていたんだろうなあ。コロナがなければ会場いっぱいにいるオタクと泣き叫べてたのに、そもそも解散になんてならなかったのに。
画面の中のENGAG.INGは素晴らしくて、最高だ、と思うほどたらればばかり思い浮かんでしまった。大好きなこの曲がもう歌われることがないなんて、と1曲終わる度にショックを受け続けた。ENGAG.INGはこの日リリースしたほぼすべての曲だけでなくカバー曲まで披露してくれた、誰にも「あの曲聴きたかったね」と言わせないという気持ちがセットリストから伝わってきた、約2時間半ほぼぶっ通しだったにも関わらず笑顔でやり切ってくれた。ENGAG.INGのこれまでのすべてが詰まったライブだった、今でもiTunesにはないあの曲が聴きたいと思ったときにはこのライブ映像を流している。

とくに印象に残っているのは、アンコールの「Planetoid」
歌い出しから音楽が止まってしまうハプニングが起こったのだが、こずこずは少し驚きながらも歌い続けメンバーも踊り続けた。迷いなくアカペラで歌う姿、音のない中でもぴったり揃っている5人のダンスから、2年半の時間と並々ならぬ努力が伝わってきた。何度も何度も大切なこの曲を歌ってきたんだ!という迫力すら感じた。本当に心からどうしてこんな良いグループが解散してしまうのかと涙がでた。
これで最後なのに、あまねちゃんだけを目で追えないこと、あまねちゃんの目にわたしが映らないこと、ありがとうと叫んでも届かないこと、いろんなことがどうしようもなく悲しくて寂しくて悔しかった。もっと感情的に「解散なんて嫌だ」と言えばよかった、「オンラインなんて悔しい」と言えばよかった。ENGAG.INGが好きすぎて、あまねちゃんが好きすぎて、最後の挨拶で泣いてるあまねちゃんと一緒に泣くしかなかった。

keep going your way
心配は無用さ
keep going your way
異世界から君に

最後に歌われた「異世界から君にメッセージ」のこの歌詞にえんげちゃんの、わたしの、あまねちゃんの気持ちがすべて詰まっていると思う。泣きながら手を振りながら送り出すように歌ってくれたあまねちゃんを目に焼きつけることができたから、わたしは今ENGAG.INGのいない世界で生きられているんだと真剣に思う。

10月1日からどう生きるのかすらわからなかったあの日から、あっという間に1年が過ぎた。忘れられないどころかこんな未練たらしい文章まで書いてしまうほど、わたしは今もあまねちゃんとENGAG.INGが大好きだ。忘れられないほど好きだったことが誇らしいし愛おしいし、あの日メンバーみんなが本気で願ってくれたから今の幸せがあるのだと思える。そう思えるほどわたしは今とても幸せだ。えんげちゃん、あまねちゃん、本当に本当にありがとう。

悔しかったあの日も何もかも思い出になった。こうやって書き残すことに意味があることを願って。

いろり

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