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摩天楼  ショートショート

「あなたと付き合いたい」

「なぜ?」
「なぜ…?」問いを繰り返した。

久しぶりに会えて一緒に過ごせて嬉しかったと言葉を続ける前に、自分だけのものにする理由を考えなければと思った。

好きですからとか言うのは、たった何回かのそれでは軽くて不誠実な感じだ。
それで十分だと思いこんでいた自分に焦っていた。

ずっとこれから自分のものになると思っていたら、そうではないのか。

昨日は、他の人からの夕食を受けていたのを知って、その後に会いたいとホテルの自分の部屋番号を伝えた。

来てくれないとしたら、夜は自分じゃない人と過ごすのかと体が腹の下がジンジンとした。
ものすごい嫉妬心を感じた。

少し落ち着くと、部屋で待つ自分が情けないように思ったり案外健気だなと思ったりした。

遅かったが来てくれたその夜は、他の人との夕食をひどく責めたい気がする中で、朝まで二人で時を過ごした。

もうこんな苦しい嫉妬はしたくないと思い、言った言葉に彼女は なぜと聞く。

ずっと黙っているわけにもいかない。
「結婚を前提に、お付き合いを」自分の口から出た言葉の丁寧さが不自然だ。
結婚の二文字を出した所で、それも見透かされそうだ。

「わたし…」

その言葉の後は、想像がついた。

「今日はどこかに行かないか」

余裕を持って言いたい言葉が、そうではなかった。

「今日は、用事があって」

「夜はどうですか」

「また後で連絡します」

10年前は、まだまだ子供っぽく それはそれで可愛くもあったが 今は女性らしさが漂っている。

良い匂いがしていた。






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