星神の加護を得しものよ

お誕生日おめでとう


歴××年2月24日
天気:大雨 時々 星雨
気温:13度
その日は星の瞬く夜空に呑まれる珍しい日だった。
朝日すら星霊に隠されてしまい、きらきらチカチカと薄ら輝く彼等の輝きで街は灯りつく。
普段街に住まう妖精や精霊達は姿を隠してしまい、星霊達の舞台へと成り果てた。

「いよいよ今日ね」

「待ち遠しいわ」

くすくす、きゃらきゃら 笑う彼等。
優雅に飛び回り何かを待つ彼等。
そんな彼等の元へ駆け付けた国家魔灯士達が星霊達の足元に静かにかしずく。
彼等は動きを止め魔灯士達を空から見下げた。
国家魔灯士の最高位であるララバント・ラスケル様が彼等と対話し始める。

「星神様の御児様であられる星霊様に御挨拶申し上げます」

見目麗しい彼等の中でもより一等輝きを放つ星霊が唄うように応えた。

「いいわ。機嫌が良いからお話してあげる」

「有り難き幸せにございます。
兼ねてより夜を護りし貴方様方が何故朝露輝くこのような時間に?」

「あら。ワタ達はいてはいけないの?」

「いえ!そのようなことはございませぬ」

「ワタ達は常よりソナタ達を見ている。
ソナタ達がワタ達のことを認識しやすいのが夜闇なだけよ」

「失礼致しました」

漆黒の闇を熱で染め上げるような深紅に燃える星霊が応えだす。

「よい。ソナタ達は疑問なのであろう。
何故、夜は終わらぬのかと」

「民達は皆、終わらぬ夜に不安を覚えております。
その……太陽神様や月神様に何かあったのでは……と」

「アッハッハッハ!ソナタ達、あの二神が御父上様の怒りでもこうたとでも思うたか?」

「民にとって二神は身近な神なのです」

「ソナタ、御父上様に対して不敬であるぞ」

「申し訳ございません。星神様はこの世界の最高神であられるが故に……」

「よい。ワタ達とて分かっておる……。
全く御父上様にも困ったものよ」

「あらァでも御母上様はそこが可愛いのよォ?
そんな邪険にしちゃあ可哀想だわァ」

深い深い海の底のように全てを包み飲み込むように別の星霊が応えた。

「御母上様はアナタ達の事をきちんと御社の中で見守っているわァ。
でも、今日は特別な日なのよォ」

「と、特別な日にございますか?」

「そう!今日は末の子が誕生するのォ」

「末の子……」

静かにどっしりと構え話を聞いていた星霊が応える。

「有無。ワシらの末の子じゃ。
しかし外神が呪いをかけおって輪廻を離れ地の者としての生を受けたのじゃ」

「つまり……今日産まれてくる子供の中に星神様の御児様が?」

「そういうことじゃ。
御母上様は静寂を好まれる故にワシらは夜に誕生するが、末の子は日中に誕生する兆しがある」

「だから擬似的な神域にし夜を創りだした……と?」

「太陽神様にも月神様にも承諾を得ておる。
産まれた後に加護を与えに来るだろうなぁ」

「神々が一日で三神も降りられたら困ります!!」

「大丈夫じゃよ。今日は記念日じゃからのう。
世の全て神々の祝福がある内はお前達は死ぬことはあるまい」

「…ありがとうございます」

「よいよい」

「ところで……母体であられる女人はどちらに?」

「分からん!」

「は?」

「ワシらも分からんのじゃよ。
こればかりは末の子次第ということじゃからのぉ」

その後は聞き取れなかったが、
妊婦のいる家庭に魔灯士がそれぞれ配属されることになったらしい。

我が家にも魔灯士が1人やってきた。
国家魔灯士第12位のアラグーナ・アスラータ様だ。
最高位であるララバント・ラスケル様の愛弟子である彼が護衛としているだけでも心強い。


もう少しで産まれてくる我が子よ。
愛しき我が子よ。
どうか安心して産まれておいで。


嗚呼

お誕生日おめでとう

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