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プロの裏側シリーズ: すき家の牛丼から学ぶ『アルゴ板』

本当にマーケットは面白い!

毎週大なり小なり必ず

『事件』

が起きます。

先週まで僕が話題にしていたファストリ株の日経平均ウェイト11%キャップ問題ですが、 結局11%に達せず 一同安堵していました。

が、一方で柳井さんが 市場で7月末にかけて市場内で175万500株を売却した(時価総額の1%で約600億円分)ことが大量保有報告で明らかになり少しにんまりしてしまいました。

9983 EDINET 大量保有報告書から

以前こちらで書きましたが、ファストリ株始め値嵩日経225採用銘柄の指数に対する影響力の大きさが問題視されたとき、いくつかの会社に株式分割に関する打診があったとかなかったとか。

言い換えると影響力を分割相当分にしようと各方面画策した訳ですが、当時の指数の仕組みだと

分割で指数へのインパクトを減らすこと=リバランスで大量の売りが出ること

を意味したので、それを頑なに固辞した会社があったとのこと(どことは言いません、ご想像にお任せします)

今は額面の考え方がなくなり、分割の影響がなくなり、それでも新たに11%規制が出来たという経緯のなかで、やはり会社の業績に関係ないところで株価が売られるということは気分が良いことではなかったのかもしれませんね。

だったら自分で売ってそのリスクを減らしちゃえ

そんな風に考えてはいないと思いますが...

逆に考えると日銀ETF買いでメリットがあったのは225採用銘柄、特に値嵩株の株価とETF運用会社と言われていますが(ETF運用会社は残高があるだけで信託報酬チャリンチャリンですからね)メリットは何も言わずに受けるのに、デメリットは反対するという何とも日本的なやり方ではあります。

いやいや今週もっと市場を騒がせた事件がおきました。

■謎のゼンショー株急落

8月2日朝10時頃から7550ゼンショー株が突如として急落

当日の日足

ご存じの通り同社はすき家をはじめとするレストランチェーン中心の飲食業態。

株主優待もあり個人投資家にとってかなりの人気株です。

5月の決算発表以降ほぼ右肩上がりで株価は上昇し、今回の上昇相場の象徴的銘柄の一つとして取り上げられることも少なくありません。

そんな同社株が突如として急落したのです。

こういう時 プロのトレーダーはその理由を躍起になって探します。

しかし今回のようなケースだと情報を探している間に株価が下落してしまいますので、情報の発信源に近くないとなかなか初動でリアクションを取ることは難しいです。

ましてや高速取引業者にしても何か情報がデータに出てこないとリアクション取れないという。

ある意味フェアーな競争

何らかの理由で急落しボラが高まることで初めてボラの急騰を検知

HFTのMM戦略は注文を激しく発注とキャンセルを繰り返しそのボラティリティのスプレッドを抜きに行き

それが他のトレーダーへも何か異常事態を視覚的に伝えることになり急落相場は演出されます。

その間複数のアルゴ戦略が同時に微妙なレイテンシーの差でやって来ることは以前説明しました。

実際は、株価が下落する過程で前日比10%を超える下げになったことでプレイヤーの注文の一部が板上に現れてきました。

そうです、HFがショートしていたのです。

それはつまり裏に何らかの理由があるということに他ありません。

確かに MSCIスタンダード指数非採用で時価総額トップが同社株。

大和証券は仮に採用されると7.8ADVインパクトと推定。

大和証券予想から抜粋

MSCI非採用決定が公式発表前に漏れたとなると前代未聞。

それこそMSCIの信用問題に繋がりますが、そもそも8月リバランス(8月31日リバランス)は公表前。

どの会社が採用でということすら決まっていない、いや決まっていたとしても正式発表は8月11日と言われています。

つまり現時点での予想はあくまでも証券会社の予想であり、それをもとにでしか証券会社も重要顧客とコミュニケーションは取れないはず。(性善説にたってMSCIが現状を漏らしていない前提条件)

MSCI指数の特徴で浮動株比率、外国人持ち株比率、売買回転率などが組み合わせられるため予想のハズレもありますが、 メインのハズシは最近の傾向を見ると比較的少ない印象です。

とはいえ何度も言いますがあくまでも予想の話

何が起きるか蓋を開けるまでわかりません。

大方の証券会社予想に反して、売り方が勇敢にもゼンショー株不採用狙っての売りを仕掛けるが、不採用という言葉だけ何らかの経路で踊ってしまった可能性はあります。

何故なら明確に10時から売り波及。

これはセールスやセールストレーダーなど顧客と話をする担当が伝え拡散されていったかもしれません。BloomberdChatで一斉配信だからすぐ拡散されます。

こういう特定の株が謎な動きをすると誰しもその裏側の材料を知りたいものです。

また人が得ていない情報(法人関係情報ではない、マーケットの噂レベルの話)を仮に聞いてしまった場合、こういう噂があるなどとセールストークしたくなるのはこの職業の性とも言えます。

もしMSCI不採用との噂が広がり株価が下落したとなると昨今のインデックスイベントの盛り上がりは異常と考えざるを得ません。

どんだけの投資家がプレポジション取ってんだ!!

昔ならこんな情報一部のインデックスファンドのみが欲しがる情報だったはずなのですが...

ゼンショー株は5月のQ1決算発表後右肩上がり、完全に売り方が焼かれている典型的踏み上げ相場。
逆日歩15銭ついているくらい(8月2日現在)売り長。

優待もあり個人にも人気だった同社株

何か怪しげなフローがなかったかチェックしてみたところ、8月1日引け後10億円程度の引値基準のクロスあり。それ以外今の所見られるオフマーケットのフローはなし。

大量保有報告も特になくこの辺りから見るとやはり

『何らかの理由』での大きめ売り

がトリガーとなり 高速取引業者を呼び込み個人中心に狼狽売りを誘った

ということでしょうか…

フィッチによる米国債格下げの報道があった水曜日のマーケット状況なら利確する理由はいくらでもありました。

正直なところ僕はマーケットの上昇に浮かれすぎ注意との警告と受け止めています。

■特殊な板の存在『アルゴ板 』を特定せよ

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