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東証のティックサイズ縮小計画

▪️東証のティックサイズ縮小計画

1月17日にはこんな日経新聞の記事が一部で話題になりました。

東証、株価の刻み小さく 楽天Gや住友化学は0.1円に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB1663V0W3A110C2000000/

さらに1月22日にはフォローアップ記事まで!

株価の刻み幅、なぜ小さくするの? 投資家の利点は:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB207F80Q3A120C2000000/

東証は今年春までに現在のティックサイズ縮小銘柄をTOPIX400採用銘柄まで拡大するという記事です。

日経にしてはというと語弊がありますが、なかなか良い記事です。こういう読者にわかりやすい解説記事を書くべきです。

この ティックサイズの縮小が執行コスト低減につながること、PTSとの競争のことまで書いてあることは大変評価できます。

また東証の狙いについても触れています。

▪️何が起きるの?

執行コストが安くなるというのは間違ってはいません。

今まで101円でしか買えなかった株が100.9円で買えれば得した気分になります。

HFT MM戦略は減ります。スプレッドがタイトになるので収益性が劇的に落ちます。すなわち流動性が減ります

あと最近分かりやすい例がありました。

日銀の結果を受けてメガバンク株が大きく動きました。中でも8306 MUFG株はティックサイズが0.1円刻み、かつ出来高がその日2億株弱❗️

後場の動きはアルゴパラダイス❗️

様々なアルゴ戦略総動員でこの株価の値動きが作られたと考えられます。

仮に個人の大口が雑に取引したとしても、全て東証の板、ダークプールやPTSに吸収されてしまう程の流動性の高さ。

アルゴによる大口が売り買いで繊細かつ派手なバトルを繰り広げていたのは簡単に想像できます。

基本的にティックサイズが細かくなればなるほどアルゴフレンドリーになります。それは板が薄くなりその結果平均BBOはティックサイズより広くなるからです。特に0.1円刻みはマニュアルでは難しいです。

▪️日本市場の特異性

日本市場は他の市場と比べて非常に変わった市場で、 2014年まではティックサイズだけが価格競争優位性でPTSやダークプールがシェアを伸ばして来ていました。

僕は初めて東証がティックサイズ縮小に関して議論を開始した時に業界団体のメンバーでした。他の大手証券会社や外資系証券会社の社長や株式本部長クラスと一緒になってこの議論をしました。

当時ティックサイズで劣後している東証はPTSやダークプールにシェアを奪われることを大変懸念 していました。

また 海外投資家、特にLOからは東証のティックサイズが他の国と比較して大きいので執行コストが高いという文句にも近い圧力がかかっており、 1単位100株への統一 (これも2014年4月から移行期間開始)と合わせて業界の賛同を得ることにかなりアグレッシブになっていた時期だったと記憶しています。

一方でHFT勢は日本はティックサイズが他国比で広くボラティリティがあるので儲かる市場だという事で反対意見があったのも事実です。
実際2014年ティックサイズが縮小された後HFT MM戦略はシェアを落とし、DR戦略が増えた事を考えてもインパクトは大きかったです。

それでもJPX・東証がこれをしたかったのです。

その時に感じたのは価格発見機能保持への執着です。

▪️価格発見機能


東証の新卒向けサイトに3分でわかるのJPXの存在意義の一つとして価格発見機能が掲げられています。

https://www.jpx-recruit.jp/atfirst/threemin/

実際東証は
2010年アローヘッドを導入し回送スピードを2ー3秒から0.003秒へ高速化、そして2014年ティックサイズを縮小することで代替的取引市場に対して不利な部分の一部を取り除きました。

また唯一の不安要素であった注文のキャパシティに関してアローヘッドを2015年と2019年の2度改良
さらに回送速度も上げました。

そして今回ティックサイズ縮小銘柄を拡大しさらにPTSに対して優位に立とうとしています。

完全にPTSからシェアを奪い返そうとしています。

僕自身日本市場が米国市場のように取引所が乱立し、ダークプールが30を超えかつHFTがマーケットメイクするように複雑化することは求めていません。
価格発見機能が流動性で決まるこの日本市場ですから健全で正しい価格発見の為にも代替的取引市場がいくつか存在するべきだと思っています。

それが公平で公正な価格であるためにも日本版統合テープ(NBBO)を早急に開始できるような法的、インフラ整備をすることが重要だと考えています。すなわちそれは東証でまた終日取引が停止する事態になってもPTSでの約定価格も公式な価格だと証明する事になるし、それがあればPTSの流動性がもっと増えるでしょう。価格の連続性が担保されます。

もちろんそれには金融庁や日本証券業協会などの力が必要です。当然証券会社もPTSでの発注インフラをさらに整えるための投資が必要になります。

また現状SOR機能は実装されてきましたが、PTSに直接発注できる体制は大手証券に関してはまだ差があります。

さらに今金融庁で話題になっているダークプールのマッチングロジックに関しても公正であることを理解してもらう必要があります。

まだまだ先は長いです💦
金もかかります💰

しかしその先に市場間の競争で、さらに投資家の執行コスト低減につながる今より健全で透明な未来があることを信じています!

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