既存曲の編曲許諾
既存曲を用いた作品をネット上に投稿する場合に、著作権関係(主にJASRAC関係)のクリアが必要な事は皆さんご存じだと思います。
ですが、「編曲に関しては、JASRAC以外の許諾が必要」という事はご存じない方も多いのではないでしょうか?
恥ずかしながら私も最近まで知りませんでした。
調べた内容と、自分のアレンジ作品に対する対応をまとめます。
(注)この記事は、各種のカバーイベントや皆さんの作品を否定したり疑問を呈したりするものではありません。
あくまで、客観的な情報まとめと、私自身の作品に対する言及のみです。
概要
・YouTubeやニコニコ動画のように投稿先がJASRACと包括契約を結んでいても、編曲の許諾は別に権利者に貰う必要がある
・権利者は、主に出版社、作詞作曲者をさす
・編曲の範囲に厳密な定義はないが、ピアノソロ曲などへのアレンジ、替え歌、訳詞などが例として挙げられる事が多く、かつ著作者の名誉・声望に反しない物であること
なぜ編曲の許諾が必要なのか?
JASRACサイトのこちらに明記されています。
著作権人格権に基づいており、主に同一性保持権と著作者の名誉に関するようです。
(上記サイトからの引用)
>編曲・訳詞・替歌等を行って配信する場合
>著作者・著作権者の許可なく編曲・訳詞・替歌など、作品を改変する行為は、著作者人格権(同一性保持権)および翻案権等の侵害となるおそれがありますのでご注意ください。
>また、著作者の名誉・声望等を害するような方法で著作物を利用することも、著作者人格権の侵害行為とみなされますので、あわせてご注意ください。
>同一性保持権(著作権法第20条1項)
>著作者人格権のひとつで、著作物の内容および題号(タイトル)の同一性を保持する権利をいいます。この権利は、著作者のみに専属(一身専属)するため(同法第59条)、編曲、替歌、詞の翻訳など作品を改変して利用する場合、JASRACの管理作品であっても、作曲者や作詞者など原著作者の同意が必要になります。
(引用ここまで)
どうやって許諾を貰えばいいの?
こちらも上記サイトに書いてありました。
基本的には各出版社に個別に連絡して許諾を頂くようです。
(上記サイトからの引用)
>この同意については、音楽出版者を通じて確認するのが通例となっています。まず作品データベース「J-WID」でご利用になる作品の権利者をお調べのうえ、直接音楽出版者にご確認ください。
(引用ここまで)
通例では作詞作曲者にまでは確認しないようですが、上記のように著作者の名誉・声望に反する可能性がある場合は確認しておいた方が良さそうです。
作詞作曲者が、そのアレンジ作品を不快に感じた時点でアウト、という事だと想像します。
私自身の作品でのケース
以下、私がアレンジした作品で、実際に許諾を頂いたケースをご紹介します。
必要なアクションや連絡先を調べるまでが大変でしたが、分かってしまった後はさほど難しくない手順だと思います。
ご参考にして下さい。
背景
「ボカロV系カバー祭」というイベントで、FANATIC◇CRISIS様の楽曲のアレンジをしました。
2022年3月に2曲(月の花、火の鳥)、2022年11月に1曲([キミガイルセカイ])です。
既存の音源/映像を使わず全て自分一人で作成、非商用、対象楽曲はJASRACの管理楽曲、投稿先はYouTube/ニコニコ動画、などから、著作権関係はオールクリアだと思っていました。
が、恥ずかしながら、2022年11月の楽曲投稿後に初めて、編曲の許諾が別途必要であることを知りました。
ですので、既に投稿後、後追いで許諾を頂くことになってしまいました。
(注)ボカロV系カバー祭そのものには特に問題なく、また、そこへの投稿作の大半は「原曲に忠実」であり、ここでの編曲の対象ではない、と考えます。
編曲の許諾が必要か?
このイベントでは、多くの方は「原曲に忠実なカバー」をしていましたが、私は「和楽器中心の大幅なアレンジ」をしているため、許諾が必要になるケースだと判断しました。
歌詞:一切変えていない、日本語英語の訳詞もなし →問題なし
「火の鳥」で、映像中のみ古語っぽく変更している →許諾必要?構成:短くはしているが構成そのものを変更していない →問題なし
楽器編成:大幅に変更、和楽器メインにしており、原曲の雰囲気と大きく異なる →許諾必要
許諾の手順
①権利者の調査、②連絡先の調査、③権利者への連絡、④作品への記載、の4ステップで行いました。
①権利者の調査
JASRACのこちらのサイトで検索できます。
基本的には、ここで出てくる「出版社」のうち、最も上位に書かれている出版社に確認する事になります。
私の場合、「月の花」「キミガイルセカイ」はテレビ朝日ミュージック様、「火の鳥」は日本テレビ音楽様でした。
作詞作曲者への確認は迷いましたが、いずれの楽曲もアーティスト/ファンの両方にとって大切な曲であり、少なくともお伝えした方が一人のファンとして誠実ではないかと考え、連絡を試みることにしました。
(注)私はFtCデビュー前から解散までの熱烈なファンです
②連絡先の調査
テレビ朝日ミュージック様は、「楽曲利用お問合せ」フォームがあり、そちらからご連絡できました。
日本テレビ音楽様はオフィシャルサイトに専用の連絡先フォームが見つからなかったため、別の連絡先フォームからご連絡しました。
石月努様は、オフィシャルスタッフ宛のメールアドレスにご連絡しました。
和也様とShun様は、オフィシャルの連絡先が分からず、かと言ってご本人に連絡するのは恐れ多く、悩んでいます。
いずれにせよ、「編曲許諾」の専用連絡先などはないので、連絡先の調査が最も難しい手順になります。
③権利者への連絡
利用目的、対象楽曲(曲名、アーティスト名、作品コード)、利用方法、こちらの氏名、連絡先などを明記しました。
特に、非商用であること、個人であることを明記しておけば、スムーズに進むのではないかと想像します。
テレビ朝日ミュージック様からは1営業日で回答が届きました。
編曲許諾専用の回答フォーマットがあるようで、非常に明確な回答(今回の範囲では問題ない事、クレジットに〇〇を記載する事、など)が来ました。
石月努オフィシャルスタッフ様からも1営業日で回答が届き、特に問題ないとの回答を頂けました。
日本テレビ音楽様からはまだ回答が届いていません。
連絡先が適切ではなかった可能性があります。
まだ4営業日しか経っていないので、もう少し待って回答がこなければ別の連絡先を探そうと思います。
④作品への記載
もともとYouTube/ニコニコ動画の概要欄にはクレジットを明記していたのですが、テレビ朝日ミュージック様からご連絡頂いた内容で改めて明記しました。
また合わせて、許諾を頂いている事も明記しました。
まだ一部は日本テレビ音楽様からの返答待ちですが、これでほぼクリアです。
スムーズに進めば1-2日で許諾が頂けるようで、思ったほどは大変でもなさそうです。
まとめ
以上のように、既存曲のアレンジに関する許諾を頂くことができました。
後追いになってしまい、まだ一部は確認中ですが、ほとんどの確認/対応はクリアできました。
自分もイチ作曲者として、「自分の曲をアレンジしてもらう」場合を想像すると分かりやすいかな、と感じました。
基本的には嬉しい!聞きたいからむしろ連絡して貰いたい!
編曲や独自の解釈は内容次第。よっぽどOKだが、あまりにも不敬/不快だったり、偏った思想だと断る可能性あり。
特に有名曲は、アーティストご本人だけでなくファンの方々の気持ちもあるため、丁寧な対応が重要ではないかと想像しました。
以上、あくまでご参考にして下さい。
繰り返しますが、各種カバーイベントやそこへの投稿作そのものは、ご自分で判断をお願いします。
また、ボカロV系カバー祭やそこへの投稿作の大半は、私が今回調査した限りでは問題ないと考えます。
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