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舞台「幸せになるために」観劇


やびちゃんが出演する舞台「幸せになるために」を観劇してきた。

出張のスケジュールが決まった時点で既に行ける時間のチケットが売り切れており、「せっかくタイミングが合ったのに行けない(T_T)」となっていたが、舞台前日に奇跡的に座席確保。仕事終わりに池袋に向かう事となった。

今回の舞台は1985年に発生した日航機123便墜落事故を題材にした内容。
子供の頃の記憶としてニュース速報が流れてきたことも、生存者が救出されるシーンも鮮明に残っており、その後も気になって色々自分なりに調べていたので、舞台の内容を知った時に一番最初に思い出したのは、機長と副操縦士のボイスレコーダーの内容だった。
今でもネット上には残っているボイスレコーダーの内容。
爆発音がして「何か起こったぞ!」という機長の声からの警告音。何が発生したのか状況がちゃんとわからないまま立て直そうとする機長たち。
管制に対しては「アンコントロール」と伝え、油圧が効かないんだから動く筈もない操縦桿を必死に握り動かそうとし、左右のエンジンパワーの調整やタイヤを出すなど、出来得ることを全て行うコックピット。
乗客達を守るために最後の最後まで必死に戦った機長、副操縦士そして航空機関士。ボイスレコーダーの最後の方に響く、機体による警告音声「PULL UP」「PULL UP」
は俺にとって残酷な最後通告として耳に残っている。

非常に痛ましい事故をモデルにした舞台だが、序盤は「渡良瀬川に不時着を成功させる」というツッコミどころ満開な内容で、コミカルにテンポよくストーリーは展開する。その中で登場人物のキャラや立ち位置を明確にし、さらにその人を取り囲む環境がしっかりと刷り込まれた上で、話は徐々にシリアスな内容になり事故当日に繋がっていく。

家族と「普段と大きく変わらない時間」を過ごし、事故に近づいていく犠牲者達。そして、あの悲惨な出来事。
救助に向かった自衛隊員を演じる演者さん達の迫真の演技。「なぜ救助活動が翌日の朝になってしまったのか?」など釈然としない事実の数々を散りばめながら、犠牲者とその家族にスポットが当たる。

今の自分は子供であった過去も、親である今も、会社員である今もある訳で、自分勝手に犠牲者やその家族に対し様々な立場に感情移入しまくり。
演者さん達の作る舞台にそれだけ入り込み、心を揺さぶられている状態。

そして、犠牲者の母親が悲しみに暮れるシーン。犠牲になった娘役のやびちゃんが発する言葉。
「悲しみなんか乗り越える必要はない。」「悲しみは抱きしめるんだよ!!」
そこまでどんどん気持ちが重くなる流れの中でのこの言葉。心に突き刺さった。
受け入れたくない、受け入れられないそんな現実の中で、こんな言葉を聞いた日には・・・。
(勝手にお母さん役になった気分で観劇していたのでww)

正直、見た後に気分が晴れ晴れする舞台な訳ではない。人によっては知らなかった悲惨な事故を胸に刻まれた人もいるだろう。
でもどのような形でも次世代に受け継ぐ必要のある事故だと思うし、そこにある人間模様は今でも未来でも自分に起こり得る出来事だと思う必要がある。

当日舞台を見た直後は、「事故を語り継ぎたい」「事故には実は隠された事実がある」「コロナ禍でも演劇やエンターテイメントが必要」その
3つのうち何が言いたかったのかが少しわからない印象を持ったのだが、観劇して1週間が経過し、思い返してみると「何一つ変わりなく、毎日を大好きな人達と過ごす日常がどれだけ素晴らしい事か」という事を伝えているのだと感じた。

これから先の人生で私にも「悲しい出来事」は必ずやってくる。その時はあの時やびちゃんが言ってくれたように「悲しみを抱きしめよう」と思う。

出演者の方々、スタッフの方々、本当に素敵な舞台をありがとうございました。
これからも良い作品をどんどん生み出してください。

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