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エナメルブルー
美学
2022年の大晦日。
私が尊敬するギターヒーローが年末恒例の歌番組に出るということで、テレビの前で今か今かと待機していました。
しばらくして、彼は遂に地上波に降臨しました。
「推し」がテレビに出てる姿って数倍かっこよく見えますよね。あの現象はなんなんでしょうか。
長年日本のバンド界の第一線で活躍し続けており、齢50を超えて生ける伝説で在り続けるギタリストです。
そんな彼は、あまりにも衝撃的な姿でテレビのスクリーンの中に現れました。
エナメルのロングブーツとハーフパンツ…
齢50を超えて太ももを曝け出し、輝く脚線美を惜しげもなく魅せるその姿は余りに妖艶で、度肝を抜かれてしまいました。
その刹那、私は感じました。
これこそが「美学」なのだと…
使命
2022年の夏頃、ひょんなことから私はある方から一つの使命を与えられることとなりました。
「とりあえず年内で構いませんので3曲ほどお願いしたいです!」
新規グループの立ち上げに関わるなどという重大任務をなぜ私に?と半信半疑ながらも、私にできることがあるなら是非やりたいと、声をかけていただいたからには全力で臨むことにしました。
そのグループはどういったメンバーになる予定なのか?いろいろな情報が一切わからないまま、ざっくりしたコンセプト像だけを頼りになんとか自分の表現に落とし込み、2022年内に3曲を無事完成させました。
(後のマスカレイド・ジェラシー、ビスク・ドールの輪舞曲、SATANIC PRAYER)
その後、2023年4月にそのグループが遂に始動するということを知り、そこに向かって音源化の準備などを進めていくことになりました。
個性
グループのデビューから1か月ほど前、2023年3月、初のレコーディングがありました。
私はグループのディレクションという経験など全くなかったので、今思うとたどたどしくて申し訳なかったですが、メンバーの皆さんは歌唱難易度が高い曲でも食らいつき、なんとかやり遂げてくれました。
その時初めてその5人の声を聴いて、まず思ったのは
「なんてバラバラなんだ」
ということ。
もちろん個性が、という意味で。
正統派、かっこいい、繊細、初々しい
いろんな方向性のキャラクターが揃っていて、役割も全く被らないだろうから「これは実質ロックバンドでは…」と勝手ながら感じていました。
中でも一番衝撃的だったのは、そこに「猟奇的」さがあったこと。
最初のレコーディングまでに制作をほぼ終えていた3曲はメンバーのキャラクターを知らないまま作った3曲でしたが、個性を知った上で、改めてこの5人のために曲を作ってみたい、とそのレコーディング中に強く感じました。
5人のバラバラさ。これをシンプルなバンドサウンドに落とし込んだら絶対かっこいい。
そこには自分が考える「美学」も反映して、「固い決心」のような意味が込められた楽曲にしたい。
そうぼんやりと考えました。
その日のレコーディングを終え、帰宅してすぐにパソコンに向かい、サビのメロディだけを作りました。
新規で作ったDAWプロジェクトは終了する際名前をつけて保存しなければいけなく、仮タイトルは「ENAMEL」としました。
確信
サビのメロディだけしかない「ENAMEL」を肉付けしていくにあたって、決め事をいくつか設けました。
ギターリフ=サビのメロディであること
サビで転調すること
バンドサウンド以外は極力排除し(結局シンセとか少し入っちゃったけど)、トラック数を可能な限り少なくすること
煽りパートを設けること
私が約20年ほど「バンド」というものを人生の主軸に置いてきた中で、「ロックバンドとはなんたるか」を自分なりに楽曲に落とし込むとしたらこの4つの条件は欠かせないだろうと考えました(あくまで私の中での解釈)。
それらは所詮、私が憧れている先駆者達の真似事に過ぎないのですが、それを真正面から受け止めて、そして後に受け継ぎ残していかなければならないという風にも思います。
オマージュなのか、リスペクトなのか、適切な言葉は何なのか分かりませんが…
グループの楽曲を私的利用するな!と言われたら何も言い返せないのですが、去年グループの立ち上げという使命を与えられ、全力で臨むと決めた結果、
申し訳ないです。自分の全力を表現したくなってしまいました。
そして、出会った5人は必ずこの希望に応えてくれて、いろんな場所にこの曲を連れて行ってくれるんじゃないか、と感じました。
障壁
歌詞作りは毎回頭を悩ませますし、ボキャブラリーも少ないので、言葉が出てくるのに時間がかかります。
歌詞の作り方は作詞家さんによってさまざまあると思いますが、私の場合は半分架空でもう半分は本当の出来事、みたいなストーリーを作ってしまうことが多いです。
昔から男性目線で歌詞を書くのが苦手で、女性目線の内容になってしまいます。女性グループへの楽曲・歌詞提供は向いているんじゃないかと手前味噌ながら思ったりもします。
この曲ではどんな壁があっても折れない決意、のようなものを表したかったので、主人公を二人用意し、そこに「どう足掻いても乗り越えられない壁」を作ることにしました。
出会ってしまった二人の結末は明確には書いていませんが、いわば叶わぬ恋の歌です。
なので、聴き心地は明るく感じるかも知れませんが、哀しい曲です。
歌詞作りが進んでいった結果、私は二人の主人公に色を与えたくなり、結果として「エナメルブルー」という曲が完成しました。
エナメルブルー
こんな季節には珍しく心地良い気温で青空が広がった11月5日、私はその5人の野外ステージを観に行きました。
彼女達の雰囲気やコンセプトはきっと、野外の明るい中、照明なしでのパフォーマンスにはきっとハンデが出そうな気はしますが、それに負けないくらい、1曲1曲全力で表現していました。
彼女達のそのイベントでの最後の曲は「エナメルブルー」でした。
ラスサビにある一節「その声を聴きたくて」という歌詞
その日私はステージを上手横辺りから見ていたのですが、その一節における彼女達の振り付けの揃い具合、横から見た時のバランスが余りにも綺麗で
想い描いた「美学」をきちんと受け止め、彼女達のフィルターを通して表現してくれている、と感じて込み上げてくるものがありました。
この曲と出会ってくれた人たちの心の中にも、この曲が生き続けてくれることを願います。
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