頑張れが言えない

「頑張れ」という言葉が苦手だ。言われるのはいい。それを人に言うのがとかく苦手で、喉元まで出かかったとしても、それを抑える習性がある。

明らかに努力を怠っている人ならまだ良いが、傍から見て既に頑張っている人にこの言葉をかけることが出来ない。

もしもその人が自分の中で限界近くまで頑張っていた時に、「これ以上何をどう頑張ればいいの?」という気持ちにさせてしまう事が怖いのだ。


麻雀プロを応援する上でTwitterは欠かせない。様々な人が応援の声を自分の推しに届けている。頑張って下さい、と。

それを目撃する度に、言われている側の気持ちを考えてしまう。負担になってはいないかと心配してしまうのだ。

勿論多くの場合、この心配は杞憂に終わる。むしろ頑張れと言われる事が活力に変わる人の方が多いという事も理解している。

それでも尚言えないのだ。

先日、最高位戦の浅井プロが講師役を務め、アシスタントとして牧野プロを据える「まきラボ」という競技プロの方々の勉強会の様子をYou Tubeで拝見した。

天鳳を使って最高位戦ルールで半荘を打ち、終了後に牌譜検討を行うという流れだ。

その検討の中で、浅井プロから私が応援する梶田琴理プロへ質問が飛んだ。この打牌を選んだ理由は何ですか、と。

そこで梶田さんは言葉に詰まってしまう。視聴者を含め、周りの参加者達は時間をかけ、返答を待ったが、彼女の口から打牌理由が紡ぎ出される事は無かった。

一打たりとも根拠の無い打牌をするな。これは麻雀プロの不文律だ。それを守ることが出来なかった自分自身に対する失望からか放送終了まで彼女は元気が無かった。

この日は發王戦の予選が行われた日であり、梶田さんも参加していた。公式戦で半荘4回を打ち終えた後の疲労困憊の状態での参加だったと思う。瞬間思考が抜け落ちてしまっても何ら不思議ではない。

仕方無いよ、と伝えたくなるが、きっと彼女はそれは他の参加者も同じだし、何より集中して臨まなければ勉強会に参加している意味が無い、と答えるだろう。

そして今日、記事を書いている1月7日。私は梶田さんが天鳳を打っている所を観戦した。

3着目で迎えた東風戦のオーラス、ラス目から満貫ツモ圏外、跳満をツモられるか、6400以上の直撃をうたなければ、ラス回避が出来るという状況の中で、彼女は河底で満貫を放銃した。

それから数十分後、梶田さんは「麻雀あまりにも向いてない」というツイートをしたが、このツイートには返信が出来ないように設定がされていた。

決して誰かに慰めて欲しくて言っているわけじゃない。ただ悔しくて、自分が情けなくて仕方無い。そう言っているような気がした。それだけ彼女は麻雀に対して真剣なのだ。


頑張れ、は言えない。

貴方が努力してる事を知ってるから。

才能を信じているから。

ただどうか必要以上に自分を責めないでほしい。麻雀は誰かを傷付けたり、苦しめる為にあるわけじゃないから。

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