SEKAI NO OWARIドームツアー「Du Gara Di Do」初見感想

めちゃくちゃになった編。超個人的な受け取り話です。彼らの今までの歩んだ道のりとか知らないよ。

SEKAI NO OWARIドームツアー「Du Gara Di Do」

セカオワの積み重ねてきたものを何も知らず、曲もテレビで聴いたことあるなぁと思うぐらいしか知らない私は、友人の絶対好きだと思うの一言で遥々福岡まで遠征し、「Du Gara Di Do」に入場した。
入った瞬間「でっかいメリーゴーランドがある!!!」と大興奮し、さながら初めて遊園地に来た子どもの気持ちを取り戻して、めちゃくちゃわくわくしながら座席に座っていた。夢の国、現実でありながらそこから遠いところに存在する隔離世界。ファンタジーで彩られ、誰もが幸せになることを目指して作られた場所。

開演して観客の拍手が響いた時、このステージを待ち望んでいた多くの人の気持ちが伝わってきて胸がいっぱいになった。ライブが始まる時のみんな興奮に不思議と疎外感がなく、テーマパークで手を振ったら、知らない人でも手を振り返してくれるようなみんな同じ夢の中にいる心地よさを思い出した。

マスコットキャラクターのガルルがこのテーマパークの説明をしてくれる。スペシャルムービーによると、100年もの時を遡り、その時代に生きているような感覚を味わえるアトラクションやショーが盛りだくさんの遊園地!
ドームに入場した時は2022年に生きる私なので、この設定をよく理解もせず今から過去にいくんだなぁぐらいの雑認識でいた。
別にそれで良かった。アトラクション紹介が次々とされ、最高潮に期待が高まった中で、広場のステージでは音楽ショーが!で、RPGが流れて、キラキラの電飾が輝いて明るい音楽が鳴り響く。五感のすべてで楽しいを感じていた。楽しいを絵に描いたようなオープニング。太鼓のリズムが最高。

ファンタジーの『僕らにはこんなことしかできないけど、今日は君に笑ってほしいんだ』という歌詞が好き。こんなことを愛してるし、ステージから"君"に笑ってほしいんだって言葉を、一人一人が受け取れるように歌ってくれる人に惹かれるようにできているので。
そのあと、唯一何回も聴いていたいちばん好きな曲「RAIN」が流れて美しさに心が穏やかになってエンディングを迎えた。魂がそっと暖かい光に包まれて、私はファンでもなんでもなかったなど関係なく、ありのままの姿でこの遊園地の中でぼーっとオレンジの光を見ていた。多幸感。ライブにきて良かったなと満足していた。

世界が一転するとも知らずに。

「Which」が流れ、色鮮やかだったライトがショッキングピンクに支配されドームが異様な光景に一瞬で様変わりした。
みんなの幸せを望むプリンセスなどはじめからおらず、さながらヴィランズが支配する空間だった。
そうして、全員を光のテーマパークの裏側を見せたと思えば「天使と悪魔」でそれはそれは優しい歌声で、賛成と反対の間に「答」が生まれればいいって歌うから、そうだよねって。足がまだドームの客席の上にあることを確認できた。結局、どっちが間違ってるとかって言えないし、世界を変えるには自分が変わるした方がいいよね。うんうん。みたいな日和った安堵をした。だってここは光溢れる遊園地。
でも、じゃあWhichで一瞬見えた怒りはなんだったんだ…っていう落胆も正直あった。

やけに大量のスモークがステージをほぼ覆い電灯のような灯りがつくと、そこは薄汚れた路地裏だった。巨大なメリーゴーランドを設置しているステージとは思えないファンタジーとは真逆の空間が生まれてる皮肉に、逃げられない気配を感じた。
「Like a scent」スポットライトから命からがら逃げた精神も肉体もボロボロの男が絞り出すように吐露する感情に、いよいよ彼が本気で怒ってるんだということを受け止めるしかなかった。
『あの歌が嘘にならないように 俺はスターで居続けたいんだ』で締めくくられた時、このライブをドーム規模のツアーでできるとんでもないグループすぎると怖くなった。綺麗事を歌ってるって、たぶん馬鹿にされたことあるだろうに。彼らは決して離れた遠い場所からの天啓を歌ってるのではない。美しくない世界に足のついた人間が歌うから伝わる言葉があるって、ライブにこなきゃ気付けなかったの私の怠慢じゃんと反省した。

ここらあたりで、楽しみにきてたふわふわしてた私は姿勢を正し、このライブに対して臨戦態勢をとっていたので、ガルルがまた出てきて遊園地にいることに引き戻され、やっと息をした。

誹謗中傷の話につぎ、海洋プラスチック問題の話だった。つくづく100年前の人間こと2022年はなんと未発達で、解決できない問題の多いことか。

……???

やけに他人事みたいに話すな??と思ったところで、この設定が2122年から100年前に遡って"2022"年に生きているような感覚を味わえる遊園地だってことの、天才すぎる構図に今さら気がついた。

2122年の遊園地から100年前にタイムスリップして2022年を観てるって設定だから2022年の今の世界が抱える矛盾を怒っていても、我々の直接的な否定にはならない構図。

我々の世界への怒りを歌う人間を、今に生きながらそれを観測する立場で観るライブ……。
遊園地に行くような気持ちで、わくわくを抱えてたあの時の自分の感情は、全く正しくて、正しいからこそ………

グルル(たぶん)「海にただようプラスチックは宝石のように美しかった〜」

ターコイズブルーのきれいな照明に包まれ流れる「深い海」の穏やかなピアノのイントロ。スクリーンに映し出される英詞と日本語訳。目に焼き付いて離れない。
慣れてしまっている私には聞こえないものたちの自由の歌が、明るいワルツで突きつけてくる。何かおかしいんじゃないの?って。
耳について離れない怖いぐらい明るく美しいメロディは、きっとその意図を隠すものではなく、世界に暴くものだ。
でも、スクリーンを見なければ美しく揺れる青の光の中に漂っていられたのだという恐ろしさがあった。知ってしまった以上戻れないところを含め、どこまでが意図だったのだろうと、足元がだんだんと覚束なくなっていく感覚があった。今、ライブを見ているよねと確認したくなったけれど、みんなそれぞれが思い思いに夢中になっていて、当たり前だけど、これだけ人がいてもステージを前にすると自分は一人だと思った。

暗転、ざわめき、『1.2.3…』世界が一転する前の原色でキラキラのライトが復活し、「虹色の戦争」の今にもみんなが走り出しそうな明るい音楽が鳴り、突然パレードが始まった。
トロッコに乗って登場した、セカオワのメンバーと、周りを踊るダンサーたち。
客席からは喜びの声が漏れ、恐らく歓声がOKであったならば、きゃーーー!!!!と言う声がドームに響いたと思う。いや、錯覚かもしれないが興奮は響いていた。

は!??????え!?!?????待って????

トロッコに手を振る人たちを見て、何も伝わってなかった!?とめちゃくちゃ怖くなった。深い森を抜けた先が再び遊園地なのがまずグロい構成で、同じ明るさで飾ろうとも、そこはもう入場時の遊園地ではない。だって、このファンタジーのベールの下にあるものを散々、我々は見たはずなのだ。なのに、手を振る人は私とは違う遊園地にいた。エレクトリカルなパレードに手を振っていた。何を考えているか共有が許されないまま、各々の遊園地に戻されてしまった。手を振る人が何を思っているかはわからない。

『生物達の虹色の戦争 貴方が殺した命の歌が 僕の頭に響く』

数万人対四人(いや、一人)だったとしても、確実に我々の命を握ってるのはFukaseさんだった。歌詞がガンガン響き、振り落とされたら、一瞬でも手を離したら終わる…!と命乞いをしてた。

『青色の空に神様がきて 願いをひとつ叶えるなら 僕らの命の炎は 消えてしまうのだろう』

会場にある全員の腕に巻かれたライトが七色の順番に点灯する。命の灯がドームの中が怖いぐらい鮮やかに煌めいていた。その光が最後に消されることはなくて心底ほっとした。

トロッコがすぎていく後ろ姿をぼーっと見ていた。「周波数」いい曲。これ以上ピカピカの明るい曲が流れてたら確実に帰れなくなっていた。
「silent」「不死鳥」「umbrella」とラブソングコーナーが続いて、有限の美しさと切なさをラブソングでは歌うんだと思った。ピアノの椅子に一緒に座って片方が歌うの、この世でいちばん尊い景色だと思う。
「umbrella」で、淡々と激情を歌い、いよいよFukaseさんの実体がわからなくなってきたところで、「炎の戦士」のターンが来た。
ナカジンさんの優しくて穏やかな歌声に、足が地についていく感覚を取り戻していった。あぁ良かった。彼らが音楽を愛し、音楽の力を知っているからこそそれを武器にして戦っているだけじゃなく、自分たちのために歌えうことがちゃんとできるんだと。なんとなくこの曲は戦うための歌ではなく守るための歌だと思った。
『「あの日」灯した このロウソクだけは 強く燃やし続けている』
体温みたいな優しさの歌がちゃんとあるんだって…………………………

……………エラー、エラー

真っ赤なライト、サイレン、重大なトラブル警告からの「illusion」
『爆弾が降る民族紛争は音声も映像も調整された戦争』『僕たちがみている世界は加工、調整、再現、処理された世界』
「炎の戦士」で私はやっと彼らの心の在処を少し知った気がしたはずなのに、その直後にプログラムエラーを発生させるなんとも慈悲のないセトリ。もうこれ以上最悪で最高の裏切られ方をすると思ってなくて、このタイミングでのエラーは最悪!!って叫びたかった。

『機械仕掛けの僕らの真実はいつか貴方の心を壊してしまうだろう』

他にも過激な曲あっただろうと思うけど、2122年側の世界がエラーと認定するのがこの世界は誰かの意図で演出されてるものだと歌う、貴方の見ている世界はほんうじゃないかもしれないっていうの、世界を疑われたら都合の悪い人間がいるってことで説得力がありすぎるな…とまた最悪に思いを馳せてしまった。
優しく透明な歌声で何度も繰り返される『時代に合わなくなるからよ』一つずつ規制されていくのに、君も僕もそれを甘んじて受け止めて、拒絶しない……。うまく飲み込めなくてずっと心の片隅に引っかかり続ける不思議な曲「Eve」 

再びガルルとグルルがでてきて、みんな大丈夫だった!?みたいなこと聞いてきて、空気が再び遊園地に戻るんだけど、もはや何が大丈夫で何が大丈夫じゃないのか、誰が正気で誰がおかしいのかもはやぐちゃぐちゃになっているので、私も大丈夫だよ〜と手を振っていた。

最後は、一度乗ったら降りられないエンドレスクロック。100年前の人たちは、命より働くことが大事だったんだって〜みたいなことを言われた記憶が朧げにあり、そんなのをエンタメ消費しようとするなって怒る私は完全に2022年の人間だった。2122年の人たちが100年前を体験するアトラクションの中で、なんの因果なのか2022年の人間が自我をもって紛れ込んでしまっていた。
「ラフレシア」ちょっと不気味なメロディで『毎日、毎日、働かせて 考えるヒマを与えない』って歌うの、も〜〜最悪すぎるんだけど、途中で『それが嫌なら僕についてこいよ』って歌うから、勝てない。ダンスかっこいい。ナカジンさんも踊らされてた。可愛い。
いよいよ、狂気が加速して感情が混ざり合って全ての色が重なって"楽しい"だけが残るの、毒が完全に回りきったなと思った。


すべてが鎮まり返り「スターゲイザー」が流れる。人生のエンドロールだ……。

重なってぐちゃぐちゃになった色を一つずつ剥がして白に戻していくかのように、美しいピアノに合わせて真っ白の光がドームの全てを包んでいく。
生きてて一番美しい光の演出の中にいた。真っ暗と、最大光量で中央に白い光の線が集められる繰り返し。2022年に生きた人への鎮魂だった。遊び疲れて寝てしまった子供を、いやこの遊園地の中で遊んだ全ての人を夢の国からそれぞれの帰る場所に見送る音楽だった。
途切れることなく音が繋がれて『Welcome to STARLIGHT PARADE 星が降る眠れない夜に もう一度連れて行ってあの世界で』と聴こえて胸がいっぱいになって泣いた。わからないけど、その時もういいんだと思ったことだけは覚えてる。まだ見たことないけれど、オーロラや満天の星空そんな人間の手には収まらない壮大な自然の美しさを見た時に流れる涙と似ていると思う。
美しいだけはただそこに美しいとして存在できる。唯一の変わらない指針なのかもしれない。
魔法を使える人がまだこの世界にいて良かったなと思った。
最後の言葉が「100年前のバンド、SEKAI NO OWARIでした!」なのめちゃくちゃかっかよくて最高でした。




おまけ

『見たくないものじゃなくて、見えていないものを見せびらかします!世界にはまだまだいっぱいーーみんなが存在に気づいてもいない、綺麗で尊いものがあるので!』
これは、あんスタの幻灯機の春川宙が自分たちの魔法とライブで届けたいものについて語った時の台詞でとても好きなんだけど、このグループが世界の終わりの場所から魔法を使ってやろうとしてることってこういうことだなぁってなんとなく思ったところで終わりにします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?