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未来住まい方会議/YADOKARI

未来住まい方会議/YADOKARI

◾️磯野の要約
夢物語のスタートと言える本で、住まい方への熱量を感じるが、プロジェクトは失敗に終わっている

ボクなりの失敗した理由を分析すると2つあります。

(1)まず大きな理由は顧客の「ペルソナ設定」をしなかったこと。
30代前後の生活を突き詰めずに、ニーズを掘り下げなかったことで、コンテナハウスが求められているものとズレた。

(2)ビジネスとしての継続的な利益確保などが無計画すぎて、夢物語でしかない。

ただ冒頭の通りで何か次につながる期待は持てましたので、陰ながら応援したいと思います。

◾️MASSAGE

YADOKARIは「ミニマルライフ」「多拠点居住」「スモールハウス」「モバイルハウス」を通じ、暮らし方の選択肢を増やし、「住」の視点から新たな豊かさを定義し発信していきます
そして、場所・時間・お金に縛られないライフスタイルを実現し、人生の満足度、幸福度を向上させることを目指します

大切な人たちと、大切な場所で、もっともっと自由に暮らしていきたい
だからシンプルに考えよう、もっとミニマルに生活しよう

◾️序章 原点回帰の住まい方

小さな暮らしとかミニマリストという言葉を聞くようになった

小さな暮らしという、それぞれの人が身の丈に合った暮らしや仕事をしていて、そういうひとたちがつながっていく

◾️1.夢物語のはじまり

リノベーションとは、単に古い空間をカッコよく改装する行為では無い
まず発想の転換があり、その上で様々な領域、視点からの提案が折り重なる統合的なアクションであり、概念である

戦後、日本の住まい方は固定されている。この70年で世の中はがらりと変わったが、住まい方自体はさほど変わっていない

◯循環型モバイルハウス
余剰コンテナの問題、輸入した際のコンテナが、その後の使い道がなく、輸送用コンテナの置き場に困っている
中古コンテナは15平米で5万円くらいから手に入る。

それらのコンテナを、住居空間としてリユースできないか

これだけ安価なら、数十年の住宅ローンにしばられて返済のために働くという状況もなくなる
一度建ててしまったらその土地から動けなくなる、ということもない
屋根には太陽光パネルを搭載する
オフグリッド仕様を搭載すれば、旅するように暮らせたり、いままで住めなかった場所に住めるようになるかもしれない

◯創作の隠れ家案
全国にある空き家や遊休不動産をネットワーク化し、住まいとして提供する
戸建てやマンション・アパートの空き家、空室の目立つホテルや旅館、社員寮、保養所などの「一室」をリノベーション、さらに全国にネットワーク化させ、移住予備軍を流動化させる

その一室を拠点に創作活動に集中したり、息抜きに地域イベントに参加する
昔の文豪が温泉地を転々とし、その場所でのインスピレーションを大切にしながら名作を産んだ、そんな環境を再現する試み

◯リノベーションアイデアコンペ
コンペに参加することに

プランを事務局に提出して二週間ほど経ったあと、審査結果がメールで届く
「創作の」案が入選した

二ヶ月後の最終審査は公開プレゼンテーション。そこで各賞が決定
他の入選者は、大手鉄道会社の企画部責任者、建築事務所で働く若手建築家、他の人たちは図面や模型を用意していたし、企画を裏付けるデータもしっかり用意していた

残念ながら、各賞はもらえず入選止まりだったが、次に繋げようと審査員の皆さんにプランについて意見をもらいに行った

「君たちのアイデアは概念でしかない。ただの夢を書いた一枚。だから僕は点数を入れなかった。こんな夢物語のアイデアは誰にでも思いつく」

かつては、自分で夢を持たなくても、社会が夢を見させてくれた時代があった。経済は好調、給料は上がっていく
真剣に仕事さえしていれば、双六のコマが進むように、いつかは一戸建てに住める。かなり現実に近い夢だった

僕らの世代にとっての夢は、主体的に見ようとしない限り、見ることができないものだ
夢という言葉の響きには希望だけでなく、恐怖・悔しさ・恥ずかしさのようなネガティブなイメージが入り混じっている
夢を叫んだ瞬間に、あきらめや失敗の概念が浮かんでくることさえある

それでも僕らは夢をみようと思った
コンペの審査員に言われたように、夢物語でしかないものを、リアルの社会で実現しようと決意した

ここで提案したプランがベースとなり、僕らが目指している「YADOKARI」は生まれた

僕らがこのコンペで得たものは、地位でも名誉でもなく、「やれるかも」という、自分を鼓舞する少しの自信だった

◾️2.ほしい暮らしの旗をふる

「港でコンテナが余ってしまって社会問題になってるらしい。例えばコンテナを家にして『旅しながら暮らす』なんてことも可能だよね
コンテナを別用途で利用が増えるから社会問題も解決できる」

調べてみたら、東日本大地震の直後、宮城県女川町の三階建て仮設住居がコンテナでつくられ、そのクオリティが高いとネット上で盛り上がっていた

「旅する家」はコンテナだけでなく、トレーラーハウス、キャンピングカーなど様々なバリエーションに富んでいることが分かってきた

◯YADOKARI マニュフェスト
人生はクリエイティブだ
ぼくらは湧き上がる好奇心に従う勇気を持っているだろうか?
もっと人と繋がりたい
もっと文化に触れたい
もっと世界中を旅したい
もっと自分を信じたい
ぼくらは、凝り固まった心と体をぶち壊し、明日をつくっていく力を秘めたアーティストだ
あなたの好奇心はなんですか?
悔いのない今を、一瞬を

◾️3.小さな暮らしのはじめ方

インターネットインフラが整った今、一つの場所に固執して暮らしていく必要は無くなりつつある
住む場所、住む家の選択肢を増やし、人生の満足度/幸福度を上げられないか?
ぼくらはもっと貪欲に「自分に最適な場所」を探し続けるべきだと考えます

ふつういい暮らしについて考えるとき最初に浮かぶのは住まいだろう
広い家に住みたい、こんな土地に住みたい、とか考える前に、いきなり経済的な壁として、収入を思い浮かべる
つまり、仕事のことだ
 賃貸なら家賃を、購入なら支払うローンをどのくらい組めるかが条件になる

続いてやはり職場と距離も大きな条件になるし、家族がいれば将来的なスペース、家具家電が収まるか、周辺環境へのアクセス、様々な絞り込みをしたうえで、「現実的な住まい」を選択する

◯小さな暮らしのはじめ方
トレーラーハウス

以前は150平米の広い賃貸に住んでいたが、いまはトレーラーハウスに家族四人で暮らしている鈴木さん

ぼくらはずっと賃貸住まいだったんですけど、そろそろ自分が面倒を見れる大きさの家で、自分が手をかけて生きていくみたいなことをやりたいということを考えていた

そんなときに友人から「六年間住んだトレーラーハウスを売りに出すから見に来る?」と誘われ、購入を決意

トレーラーハウスの特徴は、トラックにつなげて家そのものを移動できること

今住んでるトレーラーの面積が35平米
中は10メートル×3.5メートル
上にロフトが二つあって、下だけで35平米、上と合わせると50平米、天井が1.4メートルくらい

持ち物は、家具を半分に、テレビと電子レンジ、電気式のオイルヒーターを無くし、洋服も1/3、NHKの受信、新聞購読もやめて、本を1500冊から1/5の300冊に減らした

◯トレーラーハウスの経費内訳
土地購入 150万
上下水道 150万
ハウス 480万
他経費 70万
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合計  850万

トレーラーハウスのローンは、車輪がついてるので四年のオートローン

◯トレーラー暮らしビフォーアフター
光熱費は電気代3000円、水道代2000円、以前はそれぞれ10,000円くらい
ガスは4〜5000円くらい
冷蔵庫は450Lから120Lに替えて、夜間は電源を抜いている

小さな暮らしは、全部が理にかなってるって感じで無理がない
一生ここのいようって決めてるわけではないけど、ある時期にこういう暮らしを選択するのは「冒険」って感じがする

◾️4.小さな家のつくり方

家づくりの選択肢のひとつとして、「コミュニティビルド」という方法が広まりつつある
住まいを建てるときに、従来のように施工のプロに丸投げするのではなく、家に住まう本人を中心に、目的を共有した仲間と一緒に建物を建てる方法だ

◯YADOKARI小屋部が実践するコミュニティビルドの二つの意味

「コミュニティで、ビルドする」
小屋を建ててみたいという人たちをSNSでつなげ、近くでプロジェクトがあれば、ボランティアで手伝いに来てくれる人を募る

「コミュニティを、ビルドする」
近所の掲示板やSNSを通じて募集する
庭先や公園に何人かな人が集まって、わいわい楽しく作業していれば、通りかかりの人も興味を持って参加してくれる
小屋を制作する過程でできるコミュニティの輪は、地域に波及していき、さらに大きくなっていく

◾️5.小さな働き方

割愛

◾️6.自由な住まい

中古コンテナを活用したモバイルハウス
ひと1人の暮らしが成立する最低限の面積を確保できるうえ、コンテナの余剰という社会問題の解決にもなる
そして何より、トラックに積んで移動可能であることは、ぼくらの考える自由な暮らしにはぴったりだった

思いとは裏腹に現実は甘くなかった
分かったことは「中古コンテナは住居としては使えない」という衝撃的な事実だった(建築基準法の壁)
中古コンテナを再利用することで、住宅コスト問題と空コンテナの余剰問題を一気に解決できると意気込んでいたので、その思惑は外れ、一気に振り出しに戻ってしまった

車一台分の価格で買えるスモールハウスを条件として、再びハウスメーカーや建築家に提案し、交渉きていくことにした
 しかし分かったのは、この条件を満たすようにスモールハウスを開発することは極めて難しいということだ
口を揃えて「小さくて安価な家をつくっても全然儲けにならない」と言っていた
 またしても暗礁に乗り上げてしまった。コンテナはNG、通常の建築方法では採算が取れない、どうすればいいのか

そうこうするうちに、仮設店舗や仮設施設を取り扱うプレハブメーカーであるキューブスタイル社が、それに近い生産方法で住宅を開発していることがんかった

早速連絡を取り、共同開発、販売を提案したが、案の定、交渉は難航した
予算、法規、施工、スケジュール、販売フローなどなど、あげたらキリがない
 ようやく契約にこぎつけたあとも、次から次へと問題が浮上するたびに何度も破談になりかけた

スモールハウスの開発を決意してから2年後、「INSPIRATION」がついに完成した
 当社の予定通り車一台分のコストで買えるように、価格は250万からの三つのプランを設定した
 プレハブといっても、耐震性・耐久性を考慮して鉄骨を採用した
 外壁は安価だが耐久性の高いガルバリウムで覆った。前面のほとんどをガラス戸にしたので開口部は広く、ウッドデッキと合わせればさらに開放感が生まれる
 そしてグラスウールの断熱材を天井と壁に詰め込んだ
 壁や床は天然材を使い、シャワー、トイレ、キッチンまで備えている
 本当に住むことができるスモールハウスが完成した

満を持してその全容を「未来の住まい方会議」で公開した
 予想を上回る反響があり、すぐに様々なメディアで取り上げられ、webメディア、新聞、雑誌でも大きく取り上げてくれた

大きく掲載されたこの記事に反応したのは、50〜60代のシニア層だった
彼らはスモールハウスを「終の住処」として余生を過ごしたいということだった

ぼくらは同世代の30代前後の若者をターゲットにスモールハウスを考案したのであって、まさか自分の親がそれ以上の世代からのニーズがあるとは、夢にも思わなかった

◯違和感
中古コンテナを使ったモバイルハウスを構想して以来、二年以上の月日が経っていた。それ以来たくさんのスモールハウスの事例をウェブマガジンで発信した
 それによりぼくらを支持してくれる人が増えたし、ファンを自称してくれるひともたくさんいる
 しかしながら、INSPIRATIONをリリースした頃に感じた違和感というのは、自身の内側から湧いてくる何かだった。まだ販売もしていないのに、挫折に似た、何かだった

ある日、「未来の住まい方会議」読者からメールが寄せられた

YADOKARIが手がける家として、すごく“これじゃない”感じがします

この突然のメールに怒りを隠せなかった。怒りはメールの読者ではなく、自分自身に対する怒りだった
 自身が「これじゃない」と思っていたのだ。ずっと拭いきれなかった違和感を、INSPIRATIONに納得できなかったことを、いたってシンプルな言葉で表現されてしまった

やはり250万までに抑えたいという譲れない前提があった。自分たちのこだわりは、予算が通せんぼする
 この金額を超えてしまえば、スモールハウスはお金持ちが余暇を楽しむ趣味の遊び道具になってしまう
 ぼくらの希望は、スモールハウスを住まいを選ぶときの選択肢のひとつにしてほしいということ。INSPIRATIONを一番届けたかったのは、スモールハウスに住みたいと思っているひとだ

もっともこの価格でINSPIRATIONを販売しても、正直なところ利益はない
そらどころか赤字といってもいい

INSPIRATIONは果たして、失敗だったのだろうか

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