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「土地と日本人/司馬遼太郎氏」読書要約

土地と日本人 司馬遼太郎氏
初版1980年

◯日本の土地と農民について
対談:野坂昭如

中国という国は、百姓が飢えれば流民になります
流民になって、自分を食わせてくれる親方のところに行ってしまう
この親方がいわゆる英雄豪傑です
五万人食わせられる親方が小英雄で、小英雄は五万人以上になると困ってしまい、今度は十万人食わせられるやつのところへ親方ぐるみで行ってしまう
ついには劉邦になったり、項羽になったりするわけです

ともかくも王朝が滅びる時は百姓が飢えるときで、天が改まる
メシを食わせるというのが政治の大原則で、この大原則は今も昔も変わらない

これだけの狭い国土で、平場の土地が二割もないところでしょう
そして社会の生産形態が少し変わると、国土を変えていって、その変え方がめちゃくちゃなんだ

こうすればいいといういう大思想がない
技術だけあって大工事ができる土木機械たけがあって、国土に関する大思想がないものだから、それが途方もない自然破壊になる

日本の土地の七割を占める山林というものが、これまた実に不明瞭な感じがする

日本の山林の半分以上を占めるという国有林、国有地というものをはっきり実測してくれないと困るのに、厳密に実測されていない
この国有林というのは、旧御料林が大半といっていい

たったこれだけの面積の国なのに、土地に関してきわめて不明快なところがある

日本の土地というのは、太閤検地のときに初めて実測された
これは20数%の平場に対して行われたもので、山林は秀吉も手付かずだった

◯所有の思想
対談:石井紫郎

イギリスでは1922年、つまり大正11年に我々が今考える私的所有権というものが完成したそうで、それまでは土地は窮極的には王様のものであるという考えがあって、賃借権と物権との質的な差があまりなく、いわば中世的な土地についての意識が残っていたように思う

だから土地を勝手に切り売りするということがなく、ロンドンのような美しい街並みが残された


ヨーロッパでは本来税金は領主に対する援助だという考えがある
つまり君主は金が足りないから出してくれということで人を集める
これが議会制の前史になるわけで、三部会なとができる

日本の場合、納税の意識と所有の意識とはくっついているのではないかと思います
税金を納めているから俺の所有であるという考え方があるのではないか
ヨーロッパにはこういう考え方はあまりない

◯土地は公有にすべきもの
対談:ぬやまひろし氏

日本の首相が不動産業者の連合の上に成立したというのは前代未聞

頼朝の土地革命で、京都公家による土地公有制度がうちやぶられ、自分が開墾した田んぼは自分のものだ、私有だというふうになった
頼朝を押し立てたのは関東開墾地主(鎌倉武士)ですから、頼朝も京都の律令勢力から関東農場主の利益を保護するために、擁立されたことを知っている

だから弟の義経が公家側に寄っていたのを怒って殺した
頼朝が義経の裏切りを殺すことで罰せざるをえないほど、関東からの土地制度に関する厳密な要求があったわけだと思います

◯現代資本主義を掘り崩す土地問題
対談:松下幸之助氏

こういう土地投機で成立している体制が資本主義かという、居住環境への痛烈な不満があります
むしろ、主権在民の憲法下において土地は人民の公有にして、それぞれはその使用権を得るという原則が確立しなければ、資本主義さえ成立しないのではないかと思います

色々な物資があるけれども、事、土地に関しては私有物、私有財産といえども、これは国の預かり物である
だから使うべき人が使うものである、という考えを待たさなければならない

自分のものやったら何しても構わないというように、一般の私有物と同じように扱うてます

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