令和6年 司法試験 再現 民訴

第1 設問1課題1について
1 任意的訴訟担当とは、ある一定の者に、訴訟追行を授権し、その者を代表して訴訟追行を行う者をさす。任意的訴訟担当は、選定当事者(30条)のように法定されているものも存するが、明文なき場合に任意的訴訟担当を認めることは、弁護士代理の原則(54条)に反するため、認められないのではないか。
2 この点、弁護士代理の原則の趣旨は、弁護士でない者が訴訟を追行すると、適切な弁論を行うことが難しく、結果的に訴訟追行の遅れや適切な訴訟追行ができないため、原則として法の専門家である弁護士が訴訟の代理人となる旨を定めたものである。もっとも、最高裁判所昭和45年11月11日判決のように、かかる趣旨に反しない場合で、任意的訴訟担当を認める必要性が存する場合にまで、同原則を貫く必要はない。そこで、①適切な訴訟追行を期待でき、任意的訴訟担当を認める②必要性が存する場合には、明文なき任意的訴訟担当を認めるべきである。
第2 設問1課題2について
1 では、本件において、上記2要件が認められ、X1による任意的訴訟担当が認められるか。
2 ①について、確かに上記最高裁判決の事案では、組合の代表者という地位を有していたから、組合内部のことを最も把握している地位を有していたと評価できる一方、本件でX1は本件建物の共有者の一人という地位に過ぎないという両者の地位に相違点があり、本件では、適切な訴訟追行が期待できないように思える。しかし、本件では、遺産分割協議にて、本件契約の訴訟上及び訴訟外の事項についてX1が自己の名のもと行うと決められたことから、X1は日ごろから、本件契約のことについて調査をし得る状況であった。実際に、X1はYが令和3年6月から同年8月までの賃料を支払っていないことを調査により明らかにしている。以上の点からすると、X1は本件契約について熟知しているといえるため、①適切な訴訟追行を期待できる地位にあるといえる。
3 ②について、上記判例は、組合はその人数が多く、全員が訴訟追行することが現実的でないことを考慮し、②任意的訴訟担当を認める必要性が存するとしている。確かに、本件においても、X2及びX3が訴訟追行するとなると時間的・経済的負担が大きく、訴訟追行が規定できないように思える。しかし、上記判例と異なり、本件では本件建物の共有者はX1、X2及びX3の3名のみであり、関与する人数が少なく、全員が訴訟追行することは現実的に不可能とは言えない。また、時間的・経済的な負担は通常甘受すべきものであるから、必要性を基礎づける事情とは言えない。さらに、X2及びX3はそれぞれ当事者適格を有する。以上の点からすると、本件では任意的訴訟担当を認める②必要性が認められない。したがって、本件では明文なき任意的訴訟担当は認められない。
第3 設問2について
1 裁判上の自白(179条)とは、口頭弁論または弁論準備手続きにおける、相手方の主張する、自己に不利益な事実を争わない旨の、当事者の弁論としての陳述をさす。そして、その要件は①口頭弁論または弁論準備手続き内であること、②相手方が主張していること、➂自己に不利益な陳述であることをさし、「不利益」とは相手方が証明責任を負うものをさす。本件陳述は第一回①弁論準備手続きにおいて行われたものであるし、Y側が本件陳述を援用しているから、②も満たす。また、Y側の援用は用法順守義務違反に基づく賃貸借契約の解除の用法順守義務違反を基礎づける事実として行われたものであるから、Y側が立証責任を負う事実であり、➂「不利益」といえる。したがって、裁判上の自白は成立する。もっとも、本件陳述を撤回できないか。
2 裁判上の自白には、互いに争いのない事実は判決の基礎としなければならないとする弁論主義第二テーゼから、裁判所拘束力が認められる。そして、裁判所拘束力が認められることへの当事者の信頼保護という観点から、信義則上当事者拘束力が認められるのが原則である。しかし、弁論準備手続きは、争点及び証拠を明確化し、充実した審理を行うことを目的としている。したがって、弁論準備手続きにおいて争点とされた事項以外の事項について裁判上の自白が成立した場合であっても、それが争点として予定されていない以上、裁判所が判決の基礎とするという当事者の信頼が生ずるとは言えない。以上の点から、弁論準備手続きにおける自白で、争点とされていない事項について成立した自白は例外的に当事者拘束力が生じず、撤回が認められると解する。
3 本件では、訴訟物が賃料不払い解除に基づく建物明渡し請求である。そして、本件では、信頼関係破壊の有無について争われており、裁判官は、第一回弁論準備手続きにおいては信頼関係破壊の事実の有無について自由に議論し、その結果を踏まえて第2回弁論準備手続き以降に準備書面を提出し具体的な争点を定めるとされていたため、第1回弁論準備手続きにおいて自由に意見を述べた内容が主な争点となるという状況であった。そして、Yは第一回弁論準備手続きにおいて信頼関係不破壊を基礎づける、本件陳述を行ったところ、Xら側は、第2回弁論準備手続き前まで何ら本件陳述について言及がなかったことから、第1回弁論準備手続きにおいて、本件訴訟の争点は賃料不払い解除に基づく建物明渡し請求における信頼関係破壊の有無であると確定したといえる。このように争点が確定しているにもかかわらず、Xらは、第2回弁論準備手続き前になって、本件陳述を、用法順守義務違反に基づく建物明渡請求の用法順守義務違反という、別の解除原因の主要事実として援用している。したがって、本件では、争点とされていない事項について自白が成立したといえるため、例外的に当事者拘束力が生じず、本件陳述の撤回が認められる。
第4 設問3について
1 Xらが提起しようとしている後訴における解除の主張は、確定判決に与えられる後訴裁判所に対する通用性ないし拘束力たる既判力(114条1項)に抵触し、遮断されないか。
2 既判力の趣旨は、紛争の不当な蒸し返しにより、訴訟経済の保護や相手方の応訴の負担を防止する点にあり、正当化根拠は前訴において弁論を行う手続き保障が与えられたことによる自己責任である。このような既判力の制度趣旨から、既判力の基準時は、その時まで弁論を尽くすことができる事実審の口頭弁論終結時まである。そして、基準時前から存する解除権は、その行使が事実審の口頭弁論終結後であっても、請求当時から解除権は存在していて、基準時前に主張することができるのが一般的であるから、原則として既判力により遮断される。しかし、当事者が前訴において解除権を主張する期待可能性がなかった場合には、主張することができなかったことを自己責任とするのは妥当ではないし、不当に紛争を蒸し返したとは評価できない。以上の点から、前訴において当事者が解除権を主張する期待可能性がなかった場合には、例外的に既判力により遮断されないと解する。
3 本件では、確かに、後訴の解除原因である用法遵守義務違反は、令和3年1月から行われているのに対し、本件訴訟の口頭弁論の終結は令和5年4月であったから、本件訴訟の口頭弁論が集結する前に解除原因があったため、客観的な事情の下では、前訴において主張する期待可能性が存したように思える。しかし、Xらの主観的な事情にも着目すると、用法遵守義務違反を基礎づける本件セミナーの開催は、月に2回しか開催しておらず、Xらがセミナーの開催を目撃する機会し、用法遵守義務違反に気づく契機は少なかったといえる。また、本件セミナーは株式投資のセミナーであり、室内で行われるものであるから、Xらが外から見て、直ちに本件セミナーによる用法遵守義務違反を発見することは不可能である。そして、本件訴訟では、賃料不払い解除に基づく建物明渡請求における、信頼関係破壊の有無が争われており、その期間、Xらは信頼関係破壊について争うことに注力する状態であったから、用法遵守義務違反の事実を認識することは難しい状況であった。以上の点からすると、本件訴訟において、用法遵守義務違反の事実を基礎として解除権を行使する期待可能性は存しなかったのであるから、Xらに当該主張をしていないことを自己責任として正当化することはできないし、当該主張をすることが紛争の不当な蒸し返しと評価することはできない。よって、解除権の行使は、本件訴訟の既判力により遮断されない。
                                      以上
説1判例分からないためでっち上げ。設問3はこんな具体的な事情を引っ張ってきてもいいのか不明。本番はルンルンで書いたけど蓋を開けてみたら酷い評価になってそうな気がする。

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