コンビニ・ランチ
今日は彼女の誕生日会があったので私たちは街のはずれにあるコンビニに向かった
その日は風がとても強くて、一歩自動ドアの外に出れば吹き飛ばされそうなほど風がとても強くて、しかし私は、私だけは自動ドアを出て外に向かった
集落にはインターネットが存在しない
私たちはこの国の外を知らずに死んでいく
大半の機能を削がれたスマートフォンを持って外に出た私たちは 道の横にある君のベッドに土足で踏み入った 雲の隙間から差し込んだ光はカーテンのようで
普段私たちはそのベッドを避けて生活している
白く美しいそれに汚い僕らが触れることはどこか、罪であるような気がしているから
しかし今日は風が強く、私たちは天気予報なるものに触れる手段を持っていないが、これが台風というやつなのだろう
そのような直感に配慮する余裕がなかった
雲と雲の隙間から差し込んだ光はレースのカーテンのように
シーツは土に穢されることもなく依然美しいままである
よく見るとコンビニの棚には本がたくさん置いてあった
この村全体が一つの部屋のようであった
違和感が胸に溢れる
僕は感覚を殺して君のベッドに土足で踏み入ったのに ベッドは穢れず まるでそれが調和しているようであった
ベッドの上から写真を撮った
風景の、できるだけ何もない部分を写真に収めた
君の全ては巧妙に塗り固められた嘘でできているが
或いは僕がもっと純粋に穢れていたら…
いいえ、それでも私は私の否定するべきものを否定するし、嫌うべきものを嫌うし、父親を殺したことも後悔していない それから、皆さんの中にいる私の父親を一人ずつ殺していきます
コンビニに戻った私たちはチョコケーキを囲んで、私はそれを頬張ったが、食を楽しむ余裕もなかったので 味はよく覚えていない 僕の世界には5人くらいしか意味のある人間がいなくて 全員異性だけど そのくらいがちょうどいいなと思った エヴァとかも大体そんな感じだし
隣の席の好きな人に少し机を寄せる 純粋なそれを罪に問えるだろうか
愛に正当性はあるだろうか 父親を殺しても私は有害なままであろうか 殺したはずの父親が私や皆さんの中に散見される そのすべてを殺して回ったら 正当性のある愛を向けられるようになるだろうか ただもう一度、純粋なものに戻りたいだけで 時間を戻せるなら私は土足でシーツを踏むべきではなかったし、君だって 間違っていることがあるなら それに向き合うべきでしょう 酷く間違った現実逃避の君の統合と 人殺しの僕の統合を 混ぜ合わせて もう一度純粋なものに戻りたい
早く ここから出して この 酷く島国的で 酷く頭の悪い集落から解放されて 純粋なものに戻りたい 二度と傷つきたくない 皆同じでしょう。明日もやることは変わらないし、1月後でもきっと同じ。 それくらいこの土地は私を縛り付け、外に出さないようにと そういう かんじだ
もし ここから出れたら 歌を歌いたい 私の考えた歌を、私の奏でる音と、私の歌で
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