見出し画像

素人と読む旧約聖書③正欲

 素人と読む旧約聖書シリーズは、筆者が、作家であり絵画など美術作品に詳しい中野京子大先生の本を読んで、歴史や美術に関心を持ち、その中でも特に興味を抱いた「聖書」の分野を、皆さんにも理解してほしいという思いから始まりました。ちなみに、筆者は万物において素人なので、どうか温かい目で記事をご覧願います。
 参考にさせていただいた中野先生の著作はこちらになります。是非、購入を検討いただけたら私も嬉しいです。
 Amazonリンク:中野京子と読み解く 名画の謎 旧約・新約聖書篇
         著:中野京子・文藝春秋社

1.殺害

 素人と読む旧約聖書②までで、『創世記』第1~3章を読んだ。まだの方は、プロフィールから是非。禁断の実を食べてしまったアダムとイヴは、その罰として神によりエデンの園から追い出されてしまう。この世界で苦を強いられながら生きていた2人だが、良い知らせとして兄カインと弟アベルを授かる。
 カインは土を耕す者になり「土の実」を神に捧げ、アベルは羊を飼う者となり、「生まれた羊の中で1番超えた羊」を神に捧げた。そこで、神はアベルの捧げモノには目を留めたのに対し、カインは無下にされてしまった。ああ、嫌な予感がする、、、
 その嫌な予感は的中する。ある時、カインはアベルを「野原に行こう!」と誘う。2人が野原に着くと、カインはアベルを殺害する。おい。
 カインは、神に「アベルはどこに行ったのか?」と聞かれると、知らないふりをした。ああ残念なことに我々の祖先は、殺人と虚言という2つの大罪を犯してしまった、、、

『アベルを殺すカイン』ルーベンス作
カインとアベル

2.印

 神は、神だから全てを知っている。それが神たる所以なのだ。
 カインがアベルを殺害したことをもちろん知っている神は、カインに対し「弟の血を吸った土は実りをもたらさないから、お前は地上を放浪する他ない怒」と言い渡す。カインは、そんな事したら私を見つけた人が全員私を殺害しようとすると恐れたが、神はカインを殺した者には7倍の罪が下ることを皆に知らしめるために、カインに「印」を付けて彼を護った。
 居心地の悪くなったカインは、アダムとイヴの元を離れる。人類最初の家庭崩壊である。

 ここで、疑問が生まれる。なぜ神はカインとアベルとを平等に扱わなかったのか??なぜ神はカインを殺害せずに「印」によって彼を護ったのか??
 この疑問に対する答えは分からない。しかし、中野京子さんの本で様々な説について、詳しく解説されているので、気になった方は冒頭で紹介した中野さんの本を購入してみてほしい。

3.カイン

 その後、カインはエデンの東にあるノドという地に住むようになった。そこで、妻と出会い、彼女との間にエノクを身籠った。あれ?人類はアダムとイヴとカインの3人しかいないはずなのだが、、、そんな心配が無駄なことは神の存在が証明している。神は神だからなんでも作れるんだろう。
 やがてカインは、町を建てる者となり、町の名を子の名前であるエノクと定めたのであった。めでたしめでたし(?)

4.毒神

 4章では、神のひどい扱いによって、カインとアベルは残念な結末を迎えてしまった。現代でも、兄弟間で差別的な扱いからトラブルに発展することがあるだろう。スイスの心理学者であったユングは、「兄弟間で親から差別的な愛情を受け苦しみ、兄弟や同年代の人間に対し憎悪を抱く状態」をこの物語からカインコンプレックスと名付けた。
 世の中には、子供の意図を汲み取らず、自身のエゴを子供に押し付けてしまうというような最悪な親のことを指す「毒親」という言葉があるが、この章の神は、まさに「毒神」である。

 今回は、『創世記』の第4章カインとアベルを扱った。次回は有名な船のお話であるのでお楽しみに。

5.正欲

 朝井リョウの正欲を読んだことはないが、性欲と関係あるのかだろうか。真偽は不明だが「正欲」をタイトルとしておこう。性欲とかけているだけではなく、今回は欲や人間味を感じたのが理由だ。やはり禁断の実の効果はすえ恐ろしい。
 さて、記述されていなかったが、アダムとイヴはセックスをしているはずだ。新約聖書のような受胎告知のシーンはなかったし、大天使ガブリエルは無断欠勤で降りてこなかったから、イヴは聖母マリアのように処女懐胎できず、ゴリゴリのセックスをしたはずだ。
 聖書に一切の言及はないが、私はアダムとイヴの罪の1つに「性欲」があると感じた。そうでなければ、我々が性欲という「原罪」を背負う必要はなかっただろう。ただ、性欲がダメなモノかと問われたらわからない。だからここでは正欲として消化しておく。

 しかし、アダムは自分のあばら骨からできた人間に欲情したとは、なんとも居心地の悪い気分になる。異常性癖だったのだろうか。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?