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NJRPG：シナリオ「ニンジャと崩れゆく日々」

I.P.
「あのね、永遠なんて続かないよ。
　すべての星が燃え落ちるように、なにもかも時が拭い去る」

◆これは何か

「ニンジャスレイヤーTRPG」2版用のシナリオ。
「ラスト・ガール・スタンディング」「ナイト・エニグマティック・ナイト」のような、ティーンネイジャー・ニンジャの誕生を描くシナリオである。
ストーリーテリング、ロールプレイ要素を重視したシナリオだが、NMはプレイグループの好みに合わせて自由に内容を改変し、理想のシナリオへと書き換えて遊んでほしい。そのためのヒントもいくつか記載してある。


◆◆◆


◆シナリオサマリー

PC達ストリートのニンジャは、たった今ディセンションを遂げた新たなニンジャと出会う。
新たなニンジャを仲間に迎え入れたPC達は、邪悪なるニンジャ「アルニラム」を追う……

対象：名声5~9程度のストリートニンジャ3~5人(カルマ：善)(新規作成16点スクラッチを推奨)
難易度：イージー
キャラロスト：なし、全滅時分岐あり
余暇：標準（4スロット）

その他：PCのうち一人は、シナリオ開始時点ではニンジャではない、ネオサイタマの高校生であり、また、アキ・トナミ(斗南安芸)という少女の幼馴染である。(このPCを以降はPCAと記述する)
アキは数年前に家庭の事情でキョートに引っ越し、それ以来PCAはアキに会っていない。
PCAはシナリオ中でディセンションし、他のPCの仲間となる。

◆選択ルール:万能ダイス

シナリオ中に何箇所か「『万能ダイスX』を得る」と記述がある。
『万能ダイス』とはPC全員が共有するリソースであり、1個ごとに『緊急回避ダイス1』または『即応ダイス2』として使用できる。
NMが『万能ダイス』を使用したくない場合、「任意のPCは『緊急回避ダイス』または『即応ダイス』を得る」として読み替えること。

◆シナリオ構造について

このシナリオは基本的にマップを使用せず、イベントの繰り返しで進んでゆく、シーン制のロールプレイ形式シナリオである(公式シナリオ「横浜御縄談合」が近いが、それ以上にロールプレイ要素が多い)。
戦闘シーケンスはグリッドマップを使用しない戦闘を前提としているため、NMは事前に目を通しておくとよい。


◆◆◆


◆ダンゴウ：1

このシナリオには、複数回のダンゴウパートが存在する。最初のダンゴウはPCAの回想を描くパートだ(なのでPCA以外のPCは登場できない)。
この時点ではPCAはニンジャではないので、能力値が必要となった場合は、以下のデータを使用するといい。

◆PCA （種別：モータル）【カルマ：善】
カラテ　　　　1　　体力　　　1
ニューロン　　1　　精神力　　1
ワザマエ　　　1　　脚力　　　1
ジツ　　　　　-　　万札　　　-
攻撃/射撃/機先/電脳　　1/1/1/1
数年前……AM02:00。ネオサイタマ某所、廃ビルディング屋上に建つ、小さなシュラインの軒下にて。
PCAはアキ・トナミと並んで、厚い雲の隙間に薄く光る星を見ている。
この場所は二人だけが知っている、秘密の場所だ。幼い頃の記憶。

アキはあまり笑わない、物静かな娘で、目を離すと溶けてなくなってしまいそうなはかなさがあった。

アキ：「PCA、星ってさ、ぜんぶ燃えるガスの塊なんだって」「いつか燃え尽きて、消えちゃうんだって。ケーキのロウソクみたいに」

アキ：「……なんだろう、うまく言えないけど(*)、いやだな」「怖いよ、それって」「だってさ、何もかも、なくなっちゃうんだよ？　いつかは」

アキはキミの袖を握りしめた。

アキ：「あのね、PCA」「わたし、もうしばらくしたら、遠くに行かないといけないの」「家の事情でさ」アキは少しためらった後、意を決したように、君の手に、小さな、欠けた星型のオマモリ・タリスマンを握らせる。

アキ：「あげる」アキの手には、君のそれとよく似たオマモリ・タリスマンがある。「お揃い、だから。持ってて」「ずっと、ずっと」

PCAは**アキからのオマモリ**を得る。
【万札：UR】：**アキからのオマモリ**
アキ・トナミがPCAに手渡した、どこにでもあるような安物のオマモリ。欠けた星型。「忘れないで　アキ」と、つたない字で彫り込んである。
　　PCAのみ「家族の写真」として装備・使用できる
*うまく言えないけど
やがて来るPCAとの別れ、不可避の死……空に輝く星ですら永遠ではないという事実が、アキに人の身の儚さを想像させる。つまり、アキが抱いているのは、有限(モータル)であることへの恐れだ。

◆マスターへのヒント：ダンゴウ1について

NMはシナリオが始まるより前、可能であればPCAを作成するより前に、このダンゴウの内容についてPCAのPLに軽く伝えておくとよい。
●数年前、アキと星を見ながら会話している描写から始まること
●アキの人となり(物静かな娘、あまり笑わないなど)
●アキから欠けた星型のオマモリ・タリスマンを手渡されること(レリックとして扱う)
程度でもよいし、もっと詳しく伝えてもよい。

◆ダンゴウ：2

PCAの現在を描くパートである(なのでPCA以外のPCは登場できない)。

そして現在。授業を終えた君は、下校のため装甲バス乗り場に歩いてゆく。

少女：「ねえ、PCA」突然、君を呼び止める声があった。声の主は、校門の上に腰掛けて、脚をぶらつかせている少女……その顔に、面影があった。アキ・トナミだ。

アキ：「ひさしぶり！」「ここに通ってるんだね」「調べたんだよ」

アキ：「ちょっと話そ！」アキはキミの手をグイグイと引いて、校門を出て街を歩いてゆく。「屋台にでも行こっか。いまお金がたっぷりあるから、おごったげるよ」

◎アキと街に繰り出す。アキはPCAの欲しいものをなんでも(*)買ってくれる。

アキの身につけた耐酸性雨コートも、その下のワンピースも、やけに上等なものだ。どこでこれだけの金を……？

アキ：「どうしたのPCA？」「楽しくない？」

アキは、ふと君に問う。

アキ：「……あのさ、つまらなくない？」「ぜんぶ。学校。友達。勉強」「卒業してさ、そしたらどうせぜんぶなくなっちゃうよ」

やがて二人は、薄暗い裏通りに差し掛かった。

アキ：「それよりさ……PCA」「あ！　ちょっと忘れ物！　待ってて、すぐ戻るから」

アキは走り去る。……しばらくして、キミの眼の前に現れる人影。白い、ローブのような衣装をまとった……いや、違う。それはローブではなく……
ニンジャ装束だ。全身に怖気が走る。身体が、動かない。

ニンジャ：「ドーモ、アルニラムです」

アイサツを終えた瞬間、「アルニラム」の手元が光った。衝撃。PCAの胸に……なにか、突き刺さっている。星型の、小さな金属片……スリケンだ。寒気。血液が、身体から流れ出てゆく。君は、死んだ……
*なんでも
【万札】20までなら、データのあるアイテムでも買ってくれる。

◆ダンゴウ：3

PCA以外のPCが、友好的NPCから依頼を受けるパート。
ここでは友好的NPCとしてフィルギアを使用しているが、PC達と友好的な関係を持ち、依頼を持ち込めるNPCなら誰でもいい。

知り合いのストリート・ニンジャ「フィルギア」が、キミ達のたまり場に現れた。彼は以下のようにPC達に伝える。

◎所属不明ニンジャ「アルニラム」がストリートを荒らし回っているという。アルニラムは強力なニンジャであり、ソウカイヤのニンジャすら返り討ちにしたらしい。
◎放置しておくと馴染みの店や知り合いも危ないし、アルニラムと自分たちの繋がりをソウカイヤに疑われ、テッポダマを差し向けられるかもしれない。報酬は出すので、アルニラムを始末してくれないか。

PC達が納得し、アルニラムを探すべく調査に繰り出したら、◆戦闘シーケンス1：覚醒に移ること。

◆戦闘シーケンス1：覚醒

最初の戦闘シーケンス。PCAは後から登場する。

PC達は調査のため、ストリートに繰り出した……

その時である！　君たちのニンジャ聴力が悲鳴を捉えた。場所は近くの路地裏だ！

その路地裏には、胸にスリケンを受けている死体がひとつ(PCAだ)と、悲鳴の主であろう、腰を抜かしている女性がひとり、そして、その場から立ち去ろうとする、白い装束のニンジャ……アルニラムの姿だった。

(PC達がアルニラムを追おうとした)その時！突如として、死体が痙攣する。ディセンションだ。PCAはニンジャとなって、死の淵から蘇ったのだ！

アルニラムは足を止めて、その光景を凝視していた。……その鼻先を、弾丸がかすめて過ぎる。

クローンヤクザ：「ザッケンナコラー！」ソウカイヤ紋バッジを付けたクローンヤクザが数体現れ、チャカ・ガンでアルニラムに襲いかかる！
そればかりか、アルニラムの仲間と誤認したのか、PC達(PCA含む)にも襲いかかってくる！

戦闘開始。

これ以降、PCAはニンジャとしてのデータを使用できる。その他のPCはPCAに軽く状況を説明してやってもよいし、NMが「PCAはディセンション直後なので、冴え渡ったニンジャ洞察力で敵味方を正確に把握できる」と宣言してもよい。

◆マスターへのヒント：PCAの装備

使用できるようになったPCAのデータの中には、ヒートカタナやショットガン、戦闘用バイオサイバネといった、学生が持っているとは考えにくく、そのうえソウル生成物とも考えがたいアイテムが含まれている場合もある。こういったアイテムも、直後の戦闘で使用して構わない。
PCAが持っている理由については、「クローンヤクザの死体が持っていたものを奪った」「他のPCが偶然持っていたものを借りた」「医療用サイバネがソウルと反応し、異常成長を遂げた」「偶然道に落ちてた」など、いくらでも考えられる。そういった理由を考えるのも楽しい。

戦闘開始

敵はクローンヤクザ3体x(PC人数)部隊(PC4人の場合、12体のクローンヤクザが現れる)。3体のうち1体はリーダーである。PC達とは離れた場所にいる。

◆クローンヤクザ（Y-12型） （種別：モータル/バイオ生物/クローンヤクザ）	
カラテ　　　　2　　体力　　　1
ニューロン　　1　　精神力　　1
ワザマエ　　　3　　脚力　　　2
ジツ　　　　　-　　万札　　　1
攻撃/射撃/機先/電脳　　2/3/1/1

◇装備や特記事項
　チャカガン：　銃器、連射1、ダメージ1
◆クローンヤクザ（リーダー） （種別：モータル/バイオ生物/クローンヤクザ）	
カラテ　　　　3　　体力　　　2
ニューロン　　2　　精神力　　2
ワザマエ　　　3　　脚力　　　2
ジツ　　　　　-　　万札　　　2
攻撃/射撃/機先/電脳　　2/3/2/2

◇装備や特記事項
　チャカガン：　銃器、連射1、ダメージ1

◆戦闘オプション

戦闘をスリリングなものにしたい場合、リーダーヤクザにショットガン(銃器、連射1、ダメージ2)を持たせたり、適当なソウカイ・ニンジャを出してもよい。このニンジャは「アルニラムとかいうニンジャをシメてこい」以外の事は何も知らされていないテッポダマなので、インタビューしても情報は得られない。
また、時間がなかったり面倒くさい場合は、この戦闘をスキップしてロールプレイだけで処理してもよい。

適当なニンジャの例

◆ホットマン （種別：ニンジャ）
カラテ　　　　5　　体力　　　5
ニューロン　　3　　精神力　　3
ワザマエ　　　2　　脚力　　　3/N
ジツ　　　　　1　　万札　　　10
攻撃/射撃/機先/電脳　　5/2/3/3
回避/精密/側転/発動　　5/2/2/4

◇装備や特記事項
『☆カトン・ジツLV1』

戦闘終了

最後のクローンヤクザが死に、戦闘は終わった。アルニラムはクローンヤクザを皆殺しにし、逃げ去ったようだ。路地裏は静寂を取り戻す。

君達の眼の前には、新たなニンジャが一人。……彼(彼女)を、自分たちの仲間にできるかもしれない。

PCAは他のPC達の仲間となる。突然のことでPCAには受け入れがたいことかもしれないが、この世界において、ディセンションしたばかりのニンジャが一人で生きることの困難さは、他のPCも(おそらく)理解しているはずだ。そのことについて諭し、説得して仲間にするとよい。

説得のロールプレイがこじれたり長くなりそうなら(あるいは面倒くさいので省略したいなら)、NMは「PCAは『彼らの言うことももっともだ』と思い、仲間となることに同意する」などと宣言してよい。

PC達が納得したら◆調査シーケンスへ移る。

◆調査シーケンス

アルニラムとは何者で、その狙いはなにか？　PC達はそれを突き止めなければならない。アルニラムの目的と行動について調査する必要があるだろう。

『調査判定』を行うことができる。1つの調査ごとに、PC全員が判定を行うことができる。以下に書かれた項目はあくまで例であり、NMは使用するスキルや判定の難易度、『交渉判定』に変更するなど、柔軟に対応してよい。

◆目的についての調査(難易度：U-HARD)

◆調査に適したスキル：
最も適した知識スキル（+4）：ザイバツ
次に適した知識スキル（+2〜3）：犯罪、ヤクザの流儀など

成功：ザイバツ・シャドーギルド(ザイバツについてPC達が知らない場合、ここでザイバツの存在を知ってもよい)のニンジャであり、目的は破壊工作によるソウカイヤへの威嚇行為であろう。

成功【6,6】：通常成功の結果に加えて、ザイバツ・ニンジャが用いる典型的な戦術について知ることができる。直ちに『万能ダイス』数が＋2される。

失敗：よくわからなかった。
◆行動についての調査(難易度：U-HARD)

◆調査に適したスキル：
最も適した知識スキル（+4）：セキュリティ
次に適した知識スキル（+2〜3）：犯罪、ストリートの流儀など

成功：出没地点やその行動から、メジロ・ストリート周辺を、何かを探して徘徊しているように見える。◆メジロ・ストリート周辺の調査をする必要があるだろう。

失敗：成功時と同じくメジロ・ストリート周辺で何かを探していることがわかるが、時間がかかってしまうため、◆戦闘シーケンス2:決戦において、配置されるクローンヤクザの数が+2体される。
◆メジロ・ストリート周辺の調査(難易度：U-HARD)

◆調査に適したスキル：
最も適した知識スキル（+4）：ファッション、伝統的アート
次に適した知識スキル（+2〜3）：セキュリティ、ストリートの流儀など

成功：故買屋が、小さな欠けた星型のオマモリ・タリスマンを回収し、販売していた。このオマモリからは、僅かだがソウルの名残りを感じる。また、PCAが持っている(もしくは持っていた)オマモリとよく似ている。

失敗：成果は得られなかった。

このオマモリは、アルニラムが落としてしまったものだ。彼女はこれを必死に探していた。PCAがオマモリからアルニラムの正体を推測した場合、NMは「もしもその推測が正しければ、君はあの場所に行くべきだ」と、廃ビルディング屋上に行くよう示唆してもよい。屋上に向かった場合、◆戦闘シーケンス2：決戦に移ること。

◆アルニラムの居場所(難易度：UH2)
欠けた星型のオマモリを発見できている場合、PCAのみ難易度:EASYとなる。

最も適した知識スキル（+4）：犯罪
次に適した知識スキル（+2〜3）：ザイバツ、ヤクザの流儀など

成功：廃ビルディング屋上でアルニラムの姿が目撃された。◆戦闘シーケンス2：決戦に移ること。

失敗：成果は得られなかった。さらに、PC達の知り合いの店(なければ、PC達のアジト)が襲撃されており、スリケンで刻んだ「屋上で待ってる」の文字が焼け跡に残されている。アルニラムは破壊行為によって元気になる。
◆戦闘シーケンス2：決戦において、アルニラムの【体力】に+4する。
◆戦闘シーケンス2：決戦に移ること。

◆行動オプション:アイテムの調達

戦力に不安がある場合、NMはPCに『交渉判定』『調査判定』(難易度：U-HARD)などを行わせ、成功した場合『万能ダイス1』「ショットガン」「オーガニック・スシ」「トロ粉末」のいずれか望むものを与えてもよい(協力者に貸してもらったり、ソウカイヤのヤクザ倉庫から略奪してくるのだ)。
これらのアイテムはシナリオ終了時になくなる。

◆戦闘シーケンス2：決戦

最後の戦闘シーケンス。アルニラムが待つ廃ビルディング屋上に向かう。
アルニラムはPCAに会いたいあまり、ザイバツには無断でこの場所で待っているのだ。

AM02:00。ネオサイタマ某所、廃ビルディング屋上に建つ、小さなシュラインの軒下に腰掛けて、脚をぶらつかせるアキの姿が、切れかけのネオンに照らし出された。
PCAをみとめて、手を振って走り寄ってくる。

アキ：「やっぱり、来てくれた」「信じてたよ」凍るような視線を、PCA以外のPCに向け、「キミたちは呼んでないよ。わたしはPCAと話がしたいの」
アキ：「大事な話だから、たいせつな場所でしたかった」
◆アキにオマモリを見せた場合：アキがメジロ・ストリートを徘徊していたのは、落としてしまった大切なオマモリを探すためだ。これを利用することで、隙を作ることができる。

●PCAに見せられた場合
アキ：「見つけて、くれたの……？」「ありがと！　やっぱりPCAは、やさしいね」「覚えててくれたんだ」「うれしいなあ」
●PCA以外に見せられた場合
アキ：「どうして、それを！」「返してよ……！」

◆いずれにせよ、アルニラムは動揺し、隙を晒す。『万能ダイス2』を得る。
◆アキへの質問
PCがアキに質問した場合、以下のように返答する。

Q.市民を殺したのか？
アキ：「殺したよ？　だから……？」「でもほっといても死ぬような、ただのモータルだよ」

Q.なぜ殺しているのか？
アキ：「あのね、この世界は、まちがいだと思うから」「死んでいくもの、ちっぽけなものがこんなにたくさんいて、世界のルールを作ってるだなんて、おかしいよ」
アキ：「きれいで、ずっとあるものだけが、世界じゃなきゃいやだよ」

Q.なぜPCAを殺したのか？
アキ：「ぜったい目覚めるって、信じてたから」「PCAが、弱い、ただの人間なわけないって」
◆アキの誘い
アキ：「PCA、あのね、永遠なんて続かないよ。すべての星が燃え落ちるように、なにもかも時が拭い去る」
アキ：「わたしたちのほかには」アキはまるで花のような、満面の笑みを浮かべた。

アキ：「そうだよ、永遠！　わたしと、キミは、永遠を手に入れた。死も、恐怖もない、絶対の存在になったの。燃え尽きない星のように！」

アキ：「好き、好き！　PCA。わたしといっしょに、来て。世界を、変えよう。星よりも長く生きる、永遠の世界を作ろう。キミとなら、できる。すべての星が燃え落ちても、わたしたちは永遠だよ」

そしてアキ・トナミ、「アルニラム」は手を差し出した。呪いのように。祝福のように。

PC1が手を取らない(*)場合、以下の描写へ移行する。

その瞬間、決定的ななにかが、失われた。アルニラムの笑みが凍りつき……そして、「じゃ、じゃあ」振り切るように、また笑った。「いいよお。わたしひとりで、遊ぶもん……」

彼女の足元から、真珠の首飾りめいた、あるいは有刺鉄線めいた、白く輝くスリケンをつらねた帯が、ひとつ、ふたつと生み出された。

「ざあんねんだなあ」アルニラムはくるくると回って、くすくすと笑った。彼女はスリケンの帯に身体をあずける。包帯のように、鎖のように、スリケンの帯が身体に巻き付き……燃え上がった。

スリケンは溶け合い、燃えるように波打つ、白いニンジャ装束となった。「アルニラム」の姿が、夜の闇に浮かび上がった。

アルニラム：「ドーモ、アルニラムです」

彼女の周りを、無数のスリケンが衛星軌道めいて周回し、白い帯を形作る。
くすくすと、アルニラムは嗤って、スリケンをひとつ手に取り、投げ放った。PCAの顔の横を、白熱するスリケンが通り過ぎる。

アルニラム：「あのね、もうキミの話なんて聞いてあげない。……無理にだって、連れて行くから」

アルニラムはまた笑った。隣接するビルディングから、クローンヤクザが飛び移ってくる。空間のカラテが高まり、張り詰めた。

戦闘開始。
*手を取らない
PCAがアルニラムの手をとって、彼女とともに永遠の世界を望むならば、他のPCとはここでお別れだ。この選択をとった場合の対応については、◆マスターへのヒント：シナリオ改変案に記した。
◆アルニラムに攻撃する
●PCAが攻撃した
アルニラム：「なにするの！？　……そっか。そこのヒトたちに、ヘンなこと、教えられたんだね」「ちょっとだけ、痛い思い、してもらうから」
●PCA以外が攻撃した
アルニラム：「邪魔しないでよ……うっとうしいなあ」「消えて」
アルニラムの装束がひときわ強く燃えた。

戦闘開始

敵はアルニラム、クローンヤクザ3体x(PC人数)部隊(PC4人の場合、12体のクローンヤクザが現れる)。3体のうち1体はリーダーである。PC達とは離れた場所にいる。フィルギアやユカノなどのニンジャNPCが同行している場合、アルニラムの単独行動を怪しみ尾けてきた「ブラックドラゴン」などの強力なザイバツ・ニンジャが増援として現れるため、その相手をしなければならず、PC達の戦闘を手伝うことはできない(格闘ゲームの背景のように、PC達が戦闘している後ろで、激しい戦いを繰り広げているのだ)。

アルニラム

◆ボス級◆アルニラム （種別：ニンジャ）
カラテ    　 3　　体力	　10
ニューロン   5　　精神力　10
ワザマエ     6　　脚力	　3/N
ジツ         5　　万札	　20*

攻撃/射撃/機先/電脳　　5/7/5/5
回避/精密/側転/発動　　6/6/6/12


◇装備や特記事項
『◉◉グレーター級ソウルの力』、『◉ニンジャソウルの闇』×2、
『☆カラテミサイル（LV1-3）』、『★ラピッド・カラテミサイル』、『★★カラテストーム』
*◆ダンゴウ：2でPCAになにか買い与えていた場合、【万札】はその分減少している。
『★★カラテストーム』：グリッドマップを使用しない戦闘においては、隣接している敵には2ダメージ（『回避：U-HARD』）、隣接していない敵には1ダメージを与える（『回避：HARD』）。

【6,6,6】：隣接マスの敵には2ダメージを（『回避：UH2』）、隣接していない敵には2ダメージを（『回避：U-HARD』）与える。

戦術としては、『★★カラテストーム』と『☆カラテミサイル』を交互に使用する。離れているPCには『★ラピッド・カラテミサイル』で攻撃する。

◆戦闘描写

◎PCAに対して
アルニラム：「どうして！　どうしてそんなこと、するの！？」

◎PCA以外に対して
アルニラム：「キミは、なんなの？　キミだってニンジャでしょ、なら、弱くて脆い世界の味方をするなんておかしいよ」

◎体力が少ない
アルニラム：「なんで、なんで？　こんな世界！　なんの値打ちもないのに！」アルニラムの張り裂けるような絶叫。

◎カラテミサイル
アルニラム：「イヤーッ！」アルニラムの周囲を飛ぶスリケンが、軌道を外れ次々に射出される！

◎カラテストーム
アルニラム：「はやき風と光よ……」「消えてッ！」アルニラムの周囲を飛ぶスリケンが、突然その動きを止め……コンマ1秒後、一斉に全方位射出される！　なんたるラット一匹逃さぬ超新星爆発的360度スリケン嵐！

戦闘終了

アルニラムが『気絶状態』または『死亡状態』となった場合、PC側の勝利として直ちに戦闘終了となる。PC全員が『気絶状態』または『死亡状態』となった場合、PC側の敗北として直ちに戦闘終了となる。

◆勝利した

アルニラムの身体を覆う装束が消失して、あとには、少女の小さな身体が残った。彼女は、ちっぽけだった。

◎アルニラムが死亡した/カイシャクした
アルニラムはゆっくりとPCAに眼をむけて、「ずるいよ」と、一言だけつぶやいた。それで終わりだった。アルニラムは爆発四散した。

◆アキにオマモリを返していた場合、または◆メジロ・ストリート周辺の調査でオマモリを回収できていなかった場合、オマモリは爆風に煽られてPCAの足元に転がってくる。その他には何も残らない。

PCAは**アキのオマモリ**を得る。このレリックは**アキからのオマモリ**と組み合わせると**アキの記憶**に変化する。
【万札：UR】：**アキのオマモリ**
アキ・トナミが大切にしていた、どこにでもあるような安物のオマモリ。欠けた星型。あなたの名前がつたない字で彫り込んである。
　　PCAのみ「家族の写真」として装備・使用できる

【万札：UR】：**アキの記憶**
アキ・トナミという少女が大切にしていた、ちっぽけな星型のオマモリ。彼女はもういない。
　　PCAのみ「家族の写真」として装備・使用できるが、【精神力】+1ではなく+2される。

◆敗北した

敗北した場合、以下のいずれかから適当なものを選ぶとよい。

◎フィルギア(あるいはPC達に友好的なニンジャ)が現れ、アルニラムとカラテし追い返す(または爆発四散させる)。

◎ソウカイヤのニンジャが現れ、アルニラムとカラテし追い返す(または爆発四散させる)。PC達は戦闘のドサクサに紛れ逃げ出す。

◎(PL全員が了承する場合のみ)ザイバツに捕獲され、ザイバツ・ニンジャとしての新しい生活が始まる。

◎(PL全員が了承する場合のみ)PC達は爆発四散する。アルニラムはニンジャソウルの闇に飲まれ、PCAであろうと殺してしまうのだ。

◎その時である！「Wasshoi！」禍々しい掛け声とともにシュラインのドアが突如内側から弾け飛ぶと、そこから赤黒のニンジャが現れ、ジゴクめいてアイサツをする。ニンジャはアルニラムとカラテした後、彼女を爆発四散させると、PCAのほうに少しの間目を向け、その後赤黒い風となって、屋上を立ち去る。

◆高難易度オプション

◇敵の増援：戦闘が物足りないと感じる場合、適当な増援を2ターン目以降に登場させてもよい。アルニラムはPCAに会いたいあまり、ザイバツには無断でこの場所にいるのだ。そのため、当然敵戦力の到着が遅れることとなる。

増援の例：レッサー・カラテゴーレム

レッサー・カラテゴーレムはカラテゴーレムの亜種であり、より小柄で取り回しが良い半面、戦闘力はカラテゴーレムに比べて劣る。回避を行わないため、爽快感のある戦闘を演出できる。

◆レッサー・カラテゴーレム （種別：戦闘兵器/超常存在/大型1x1）
カラテ　　　　8　　体力　　10
ニューロン　　1　　精神力　-
ワザマエ　　　1　　脚力　　4
ジツ　　　　　-　　万札　　5
攻撃/射撃/機先/電脳　　8/1/1/-
◇装備や特記事項
　巨大なブディズム刀剣や拳：　近接武器、連続攻撃2、ダメージ2、攻撃難易度：HARD
『●非テック存在』、『◉轢殺攻撃1』、『◉即死耐性』

他にも、クローンヤクザや「クラミドサウルス」「シャドウウィーヴ」などのザイバツ・アデプトを増援として出してもよい。あるいはNMが作成した適当なニンジャでもいいだろう。

◆評価と報酬

成功度の基準は以下の通り。上にあるほど評価が高い。

A：アルニラムを殺した。【万札】プール+30、全員が【名声：ストリート】+2
B：アルニラムを追い返した。【万札】プール+10、全員が【名声：ストリート】+1
C：アルニラムに返り討ちにされた。【万札】プール+0、全員が【名声：ストリート】+0

基本的にはAまたはCとなる。NMがアルニラムの逃走に関するイベントを自作した場合のみ、評価Bとなる可能性がある。


◆ここから遠くへ

PCAのみ登場。
このパートは、NMが不要であると感じるなら割愛してもよい。

その夜、PCAは夢を見た。廃ビルディングの屋上、キミの横でうずくまり、星を眺めている、アキの姿。彼女の笑みはためらいがちで、目を離すと溶けてなくなってしまいそうなはかなさがあった。

アキ：「わたし、遠くに行かなきゃ」「その前に、PCAに会っておきたかったの」

アキ：「あのね、PCA、わたしのこと……」「なんでもない。おやすみ、PCA」「ごめんね」

これは夢だ。PCAは目覚めた。君はひとりだった。

【ニンジャと崩れゆく日々】終


◆◆◆


◆隠された背景

PCAの幼馴染であるアキ・トナミ(斗南安芸)はニンジャであり、その精神はニンジャソウルの闇に飲まれ、崩壊している。彼女は引っ越したキョートでの生活に馴染めず、やがてなんらかの事情によってディセンションした後、ザイバツ・シャドーギルドの一員、邪悪なるニンジャアルニラムとなったのだ。

アキには、限りあるもの、死してゆくことへの恐れがある。彼女がそうした恐怖心を抱くに至った事情はシナリオ内で語られることはないが、おそらく両親や飼い犬など、近しい人の死を経験しているのではないだろうか。

アルニラムは、アキが心の奥底に抱いていた、有限なるものへの恐れ、それが転じた永遠への憧れに突き動かされるように行動する。それはPCAへの好意と歪んだ形で結びつき、PCAを自らと同じ、永遠に生きる存在にするという妄執へと変わっていった。

◆マスターへのヒント：シナリオ改変案

◆所属の変更
ストリート系ニンジャ以外に対応したシナリオとして改変する場合のヒントをいくつか用意した。

◇ニンジャ組織(ソウカイヤ、アマクダリなど)：ザイバツのニンジャが破壊活動を行っているとの情報を得て、始末するため調査に向かう。アルニラムに【カルマ：善】を与え、「ニンジャの自宅」のような野良ニンジャ捕獲シナリオとして改変するのもよい。

◇エージェント系(ヨロシサン、オムラなど)：アルニラムが襲撃した場所のひとつに、所属組織の研究施設があった。または、野良ニンジャをサンプルとして捕獲するため捜索する。

◇その他：ドラゴン・ドージョー：人々をニンジャから守ることを決意したユカノとPCは、アルニラムの情報を得て、その凶行を止めるため調査を始める。
◆アキを救う
アルニラムは邪悪なニンジャであり、もはや和解は不可能だが、「ザイバツにより洗脳され、自我を封印され従わされているのだ」と設定することもできる。
この場合、アキに施された洗脳は『気絶状態』にすることで解ける。このことは調査によって判明させるとよい。
あるいは、「『気絶状態』にするだけでは駄目で、『交渉判定』によって呼びかけ、洗脳を解かなくてはならない」と設定してもよい。

◆(参考)アキの洗脳を解くための交渉：【難易度：U-HARD】

最も適した交渉スキル（+4）：超然、鼓舞
次に適した交渉スキル（+2）：共感、威圧など
最も適した知識スキル（+4）：ザイバツ、古代ニンジャ文明
次に適した知識スキル（+2〜3）：オカルト、宗教など

アキを救った場合、以下のような展開が考えられる。
◇仲間になる：アキの能力が高すぎて味方にし辛い場合、ザイバツのジツで能力をブーストされていたことにして、大幅に能力を落とすとよい。
◇セプクして死ぬ：アキは洗脳されていたとはいえ、自らの行いを許せなかった。『交渉判定』に失敗した場合のみ、セプクすると設定してもよい。
◇寝たきりになる：強い洗脳が、彼女のニューロンと身体に負担をかけていたのだ。会話はできるが、戦力にはならない。
◇ピンク色のニンジャが出現：ハンサムなピンクのニンジャが目の前に現れ、「君たちには並行世界から襲撃してくる42万人のクローンアルニラム軍団と戦う使命がある」と言い渡す。もはや待ったなしだ。
◆アキの過去などに興味がない
PCAの存在をカットし、ダンゴウ1~2をカットし、アキとの会話イベントもカットすることで、ロールプレイ要素のない戦闘シナリオとして遊ぶことができる。
この場合、アルニラムがメジロ・ストリートで探していたのは、ソウカイヤの隠し倉庫となる。

◆(参考)メジロ・ストリート周辺の調査(難易度：U-HARD)

◆調査に適したスキル：
最も適した知識スキル（+4）：ヤクザの流儀
次に適した知識スキル（+2〜3）：セキュリティ、ストリートの流儀など

成功：メジロ・ストリートにはソウカイヤがトロ粉末やコーベインなどを保管するための隠しヤクザ倉庫が存在するようだ。アルニラムは倉庫を破壊し、ソウカイヤに経済的打撃を与えるつもりのようだ。
失敗：成果は得られなかった。

(参考)アルニラム：「ドーモ、アルニラムです」///「モータルに与するクズめ、俺様のスリケン・ストームで死ねーッ！」///「アバババーッ！サヨナラ！」
◆アキの手を取る
◆戦闘シーケンス2：決戦において、PCAがアキの手を取り、彼女とともに生きることを選んだ場合、PCAは【カルマ：善】を失い、所属組織が「ストリートニンジャ」から「ザイバツ」に変更される。PCA以外のPCがそれを止めようとするならば、PC同士の衝突は避けられないものとなる。
PC同士が戦闘を行う場合、普通に戦闘を行ってもよいし、コマンド選択式の戦闘や、あるいは完全にロールプレイだけで勝敗を決してもよい。
この戦闘で死亡することはなく、敗北したPCは即座に廃ビルディングから転落して脱落する(カイシャクはできない)が、PC同士が同意するなら、死亡させてもよい。
◆一人用シナリオとして遊ぶ
PCA一人用のシナリオや、ソロアドベンチャーとして遊ぶこともできる。その場合、◆戦闘シーケンス1：覚醒でPCAのもとに現れるのは、フィルギアやユカノ、あるいはNMの作成したNPCなどの友好的ニンジャとすればよい。PCAは、自身の死の理由を突き止めるため、友好的ニンジャとともに探索を開始するのだ。

◆調査シーケンスにおいて、すべての『調査判定』の難易度は-1される。

◆アルニラムの居場所の調査に失敗した場合、アルニラムの【体力】は+4ではなく+2される。

◆戦闘シーケンス2：決戦にクローンヤクザは登場せず、アルニラムとの一騎打ちとなる。

◆戦闘シーケンス2：決戦でアキの手を取ることを選択した場合、友好的ニンジャ、または突如現れた死神との戦闘となる。この場合、勝利条件は『逃走判定』に成功すること、または敵対者の【体力】を半分以下まで減らすこととなる。
また、『逃走判定』に失敗するたび、『逃走判定』の難易度が-1される。

◆評価と報酬：
A：【万札】プール+15、【名声：ストリート】+2
B：【万札】プール+5、【名声：ストリート】+1
C：【万札】プール+0、【名声：ストリート】+0

参考：アルニラム(16点スクラッチ)

PVPが発生した場合、アルニラムが強すぎてPCA以外のPC達に勝ち目がない場合も発生しうる。その場合にこのデータを使うこともできる。また、PCA一人用のシナリオとして遊ぶ場合や、11点スクラッチのPCで挑む場合もこのデータを使うとよい。

◆ボス級◆アルニラム （種別：ニンジャ）
カラテ    　 2　　体力　　　6
ニューロン   2　　精神力　　4
ワザマエ     3　　脚力　　　2/N
ジツ         4　　万札　　　0
攻撃/射撃/機先/電脳　　4/5/2/2
回避/精密/側転/発動　　4/5/3/8
緊急回避ダイス1

◇装備や特記事項
伝統的ニンジャ装束、パーソナルメンポ、家族の写真
『◉ニンジャソウルの闇』*2、『◉頑強なる肉体』
『☆カラテミサイル（LV1-3）』、『★ラピッド・カラテミサイル』

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2021/5/7:データミスの修正、項目追加
2021/5/31:一部わかりにくかった箇所の修正

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