Tバックだと思った話

まだまだうちの会社では、島(社員のデスクが配置されたある一定の領域)での出社率を5割以下にしましょうという規定に則って勤務している。したがって、なかなか出社日が被らない人も居れば、よく出くわす人も居る。今日は隣の島のIさん(俺と同い年で人妻、ハチャメチャに可愛い)も出社していた。誰だそいつという人は、俺の過去ツイートを参考にしてほしい。

Iさんは同じ課ではなく、うちに付属するサポートの部署みたいなところの人で、隣の島で業務をしている。2週間に1回は、業務の事で話をする、くらいの人。昨年の12月の慌ただしい中に入社したIさんは当時は髪が長く前髪を上げ、大きくてかわいらしい目をしており、鬼〇の刃のねづこさながらだった。

10時頃、声を掛けられた。どうやら重たい荷物があり、それを台車に乗せて1階まで運んでほしいということらしい。台車2台分の荷物をせっせと積み込み、Iさんの先導で俺は1階へ向かった。Iさんはこうなんというか、薄手のビジネスライクなパンツを履いており、キビキビと道案内をしてくれた。あまりにも薄く、いやいくらなんでも薄すぎやろ、下着の型が見えるやろ。まったくもうだよと思っていたが、実際はそうではなかった。いくら目を凝らしても、下着の型がパンツに浮かび上がることは無かった。俺はその時に悟った。

”これがTバックってやつか…”

本当にお尻のちゅるんちゅるん感までが浮かび上がるような質感。というかそれはもうその薄い布の下にはお尻があると疑いようのない揺れ方。全くエロい気持ちにはならなかった。下心があるなら、俺はそこまで注視出来なかったはずだった。単純な好奇心だった。だからやましい気持ちも何もなかったし、純粋にTバックというものの凄さを目の当たりにした。角を曲がってエレベーターに乗るまでずっと見ていた。あれがTバックか~と思うと、午前中は全く仕事にならなかった。

さて、午前中に1階へ荷物を下ろした際に、また1階から別の荷物を自分たちのフロアへ持ち帰ったのだが、午後になると今度はその荷物を再度1階へ戻さなければならないとのことだった。今度は台車1台分だったので、午前は2台目の台車を押していた後輩をデスクに控えさせ、俺一人でIさんと1階に向かうことにした。これは後から思ったのだが、なんだかあれみたいだった。高校生の頃に気になるあの人と2人で、ただ同じ委員会だからって顧問の先生のパシリをやらされ、ぐーたれながら、でもその道中のお喋りが楽しくて先生ありがとな、2人の時間をくれて、みたいな時間だった。

道中はと言うと、Iさんの方から色んな話を振ってくれた。手伝ってもらってありがとうだの、いつも真顔なので怒ってると思いましただの、色素薄いですよね?髪の毛茶色いですね?指綺麗ですよね?だの。指綺麗ですよね?って言われたときには俺の中のチャンカワイが上半期一の”惚れてまうやろ!!!”を叫んでいた。お昼何食べてるんですか?どんなゲームしてるんですか?など、本当に沈黙知らずで、話し上手の聞き上手だった。この人俺の事好きなんじゃない?って思わせるような話しぶりで、ずっと笑顔で、オツカシャッシャスススしか言えないコミュ障の俺が、すげー楽しくおしゃべりできた。魔性だなーって思った。嫌な感じは全くしなかった。このころにはすっかりTバックの事なんて忘れてお喋りに夢中になっていたし、なんだかホワホワしていた。まあ荷物を下におろして戻るのなんて5分もあれば終わる仕事で、楽しい時間はあっという間だった。自席に戻ってからも、しばらく余韻が抜けなかった。

俺がIさんの事を好きになることは無い。彼女は人妻で、本当に愛想が良くおしゃべりも上手で仕事も出来る。だけども好きになることはない。彼女は人妻でTバッカーだけども。やばちょっと揺らぎそう。だけども好きになることは無い。じゃあこのワクワク感はなんなんだろう。

夕方ごろ、Iさんの部署は同じフロアで会議をしていた。たまたま俺は近くで仕事があって、会話が聞こえた。どうやらそのうちIさんは仕事内容が変わり、俺がメインで担当している取引先の窓口になるようだった。こうなると、毎日何かしらでお話したりすることになる。心の中でガッツポーズをして自席へ戻った。好きな子と席替えで隣になって嬉しかったあの頃を思い出した。俺はまた、自分の仕事を少し好きになった。

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