甘すぎるくらいがいい話

彼女が出来た話を、せっかくのこの気持ちをどこかに書き残しておこうとか思っちゃったりしてな。7月の末にガッツリと夏休みを頂いて、地元に帰った時のこと。

帰省する際は、親父の実家にも必ず顔を出すようにしている。それこそ中学の頃くらいまでは、毎年正月に家族みんなで親父の実家(うちの実家から車で10分くらい)に帰って、親戚みんなで顔を合わせてワイワイすることがしきたりみたいになってたけど、高校に上がったくらいからそういうこともめっきりと無くなった。そうすると、1年で1回も従姉妹やおじさんおばさん、じいちゃんばあちゃんの顔を見ないで終わってしまうなんてことも普通にあった。俺が働き出して地元を出てから、それってなんか寂しいなと思い始めて、自分一人だけでもとりあえずばあちゃん家帰るかーという感じで顔を出すことがここ何年か習慣になっていた。

そこには今はじいちゃんばあちゃんと親父の兄貴夫婦とその子供、いわゆる従姉妹が住んでいて、まあそれこそ他愛ない話をするんやけど、毎回その時に決まって「あんた今、〇〇に住んでるらしいな」「〇〇の仕事してるんやって?」「そろそろうち来るんちゃうかなーって思ってたわ」などと言われていた。俺が地元に帰るときは、Twitterで年末に地元帰るから遊ぼうと雑にアナウンスしていたんやけど、それを俺の元カノ(相互フォロー、高校1年生の頃の彼女)が見て、従姉妹に報告されて、そういう情報を俺が言う前に先取りされていたということらしかった。そんなんがここ何年も、というか地元出てから毎年ずっと続いてて、俺としては何というかこう、毎年意識の隅に引っかかる存在にはなっていた。

高校生の頃の話はいくつか前の記事で書いたけど、時系列的にはあの出来事が起こる前に、本当に高1の1学期とかに付き合っていた子。当時仲良くなったきっかけは、先ほど言った俺の従姉妹と、その子(うん、まあAとする)が幼馴染で大親友だった(今もそうらしい)という事で、入学当日に同じクラスになったときに声を掛けてくれたことだった。自分の中学からその高校へ進学したは男一人だけだったんで、多少の心細さを感じていたところにAがやってきた。目がくりくりしていて、人懐っこい感じで、

「〇〇の従兄弟やんな?」

と言われた。俺の方は俺の方で、従姉妹から「あんたと同じ高校に私の幼馴染も行きはるわ」という事前情報は辛うじて入手していたので、「Aちゃん?」みたいな返答をしたと思う。そこからなんか付き合うまで時間はかからんかったと思うし(お互い若かった)、別れるのも早かった(俺が振った)。多分2ヵ月も続いてないんじゃないかというくらいに。けどまあ初めて2ケツしたり、初めてカラオケデートをしたり、色々したりと思い出深かった人ではあったし、俺の高校生活の中でもずっと、「お前なんでAちゃんと別れたん」と言われ続けていた。たしかに不思議なタイプの子で、つかみどころがない感じで、それはもう俺のドストライクではあった。「俺だってなんでかわからんわ」ということをいつも返答してた。Aも俺もそうやったけど、異性でお互いのことを、別れても下の名前で呼んだりするのは後にも先にもAだけやったかなあとしみじみ思ったりもしていた。

まあそういう背景のもとに、俺の私生活は社会人になっても従姉妹に筒抜けとなっていたわけで。ずっとなんか引っかかるなあと思いつつ、地元に残っているAと地元から出た俺には直接の接点はあるはずもないまま、迎えたのが今年の夏やった。

今年は、例年と違ってTwitterで帰省宣言はせーへんだ。その代わり親父の実家の方には、俺から連絡していついつに顔出しに行くわと伝えた。地元に帰ったらゆっくりしたかったので、ほんまに仲いいやつ1人にだけ声かけて、後はノープランでいくつもりやった。その日は夕方からそいつとカラオケ行って、あとはお酒買って最近引っ越したというそいつん家で2人で宅飲みをしようと計画を立てた。ところが俺の方がちょっと遅れてしまい、そのあとの予定が全部2時間くらい後ろ倒しになり、そいつの家でさあ宅飲みを始めようという頃には23時頃になってた。とりあえずこの缶ビールで乾杯しつつタバコ吸おうやとベランダに出た時に俺のスマホが鳴った。

「いま何してるん?」

とLINEが1件、名前はA。意味の分からないドキドキ感が急にやってきた。それまでに、その友達とは「この年になっても俺ら女っ気もなく、男だけで飲むってどうなんよ」的な話で盛り上がっていたので、これはお前チャンスやろとなった。

「で、その子はなんの知り合いなん?」

と聞かれた。俺はさっき書いたような昔話をそいつに伝えているときに今度は電話が鳴った。

「なんで無視するん」

と開口一番。その声がめちゃくちゃ懐かしかった。話すのはまじで何年振りやろうと。とりあえず今の宅飲みの状況を伝えたら、

「あんた今日従姉妹の家行くって言ってたのになんで行かんかったん?」

と詰められた。そうや、完全に忘れてた。行くって言ってたんやった。けど予定が遅れたりなんだして、すっかりそれを忘れてた。いやでも待て、なんでそれをAがこのタイミングで言ってくる?と思って聞いたら、ちょうどいま従姉妹の家で、Aと従姉妹とその友達のBで花火をしてて、俺の話になったとのこと。あいつ今日来るって言ってたのにけーへん。連絡先知らんからAに頼んで連絡してもらったということらしかった。

ここでまた偶然、その宅飲みしてた俺の友達の家から従姉妹の家がめちゃくちゃ近かった。徒歩で5分くらい。

「それやったら今から行くから花火しよ」

と言って、急に女っ気が出てきた男2人はいそいそと家を出た。間もなくして合流した。久しぶりに会ったけど、あんまり変わってなかった。懐かしいな~という話もしつつ、初めましてのメンツもいるのでこう世間話なんかもしたりした。Aには長いこと付き合ってる彼氏がいるというのは何となく風の噂で聞いてはいたけど、どうやらその人とはとっくに別れたそうで、そしたらここの5人全員彼氏彼女おらんやん!という話でまた盛り上がった。その日は時間も時間やったんですぐ解散はしたけど、その後友達の家に戻ったらそいつが

「Bちゃん可愛いやん」

と言い出した。なんや、ちょっとおもろなってきたやんと。それを言い出したら俺だって、Aの事可愛いと思ったでという話でヤイヤイゆうた。熱が冷めんうちにAに連絡をとり、今日のメンツでもっかい会って飯でも行かへんかと相談した。そしたらすぐにAは女子メンに確認を取り、10分くらいでいいよと返事が返ってきた。出来るやつや。明日しか空いてないからとのことで、俺たちの再戦は翌日に持ち越された。えらい急やな、となったけど引くわけにはいかんということで、翌日に駅前で合流して飯屋へ行った。

みんな家が近かったんで、帰りは徒歩でぼちぼち帰った。俺としてはそんな正念場に従姉妹が居るというのが凄くやりづらかったんで、事前に友達には

「どっかのタイミングで俺とAを2人にしてくれ」

と頼んでいたが、みんな徒歩で帰ってるその道中の一番最初に送り届けるのがAという、なんとも絶妙な感じになった。結局何もできんままAを見送って、次は従姉妹を家まで送る道のり。その間にこっそりAにLINEを一発、後で2人だけで少し話さへんかと連絡した。すぐに返事が返ってきて、遅くなりすぎへんかったらいいよと。心の中でガッツポーズを決め、ちょっと電話せなあかんねんと意味のわからん言い訳をして道を引き返すと同時にBちゃんと俺の友達を2人にすることにも成功した。後はお前もがんばれとお互いアイコンタクトを交わし、俺はAの家に戻った。

急にどうしたん、と言われてゲボ出そうなった。あいつの家の前に立って、玄関先で部屋着のあいつと話す感じ、高1の頃の思い出がめちゃくちゃ蘇ってきた。とりあえずその辺散歩しーひん?と言って歩き始めた。ここで呼び出そうって思った時には、もう俺の中でもまた好きになってしまっていたし、遊びとかじゃなく、色々と将来も覚悟決めてちゃんと気持ち伝えようという心構えをしていた。歩きながら、昔の話、高校を卒業してからの話とかいろいろ話した。ぐるーっと町内を歩いてスタート地点に戻ってきたけど言い出せず、別ルートで2周目に入った。あの頃に振った俺が、どの面下げてまた告白するんやコイツと思われるんやろうなーという事が怖くてまじで関係ない話ばっかりした。2周目も終わったけどまだ言えず、別ルートで3周目に突入した。あいつん家に帰ってくる頃にはトータル2時間以上経ってて、さすがにこれ以上はアカンかと覚悟を決めて告白をした。

なんか言いたいんやろなーって思ってたわと笑われた。心の中まで筒抜けていたのか。高1の当時俺から別れ話をしたとき、AはAで俺にボロカス暴言吐いて、そのあとの俺の落ち込み様がひどくて、向こうは向こうで罪悪感的なものをずっと持ってたと話してくれた。当の俺はそんなんすっかり忘れてて、そうやったっけと言った。その場でしばらくそんな話をしてから、付き合ってもいいよと言ってくれた。俺に彼女が出来た。

そろそろ2ヵ月くらい経つか。あの頃の俺たちよりは長続きしてホッとした。なんというか、出会ってからの13年という月日が、どうしようもないくらいにお互いの安定感というか信頼感を生み出している。俺の黒歴史ももちろん知ったうえで一緒に居てくれてるし、今更お互いに何か隠したり着飾ったりすることもないよなって感じがとても心地いい。俺は俺で、あの時に振ってしまったこんな俺をまた受け入れてくれたことが嬉しくて、もう離したらアカン人やなあと思っちゃったりしている。大人になったな…。昔付き合ってた時の思い出で一番覚えてるのが、初めてカラオケデートしたときに彼女が歌ってくれたいきものがかりのコイスルオトメって曲がめちゃくちゃ可愛かったということやった。いつでもそれを聴くたびにAの事を思い出してたような情けない俺やったけど、この前カラオケ行った時に照れながらも歌ってくれたことが嬉しかった。こういうのでええよな…って思った。こういうのでええやん。

そんなこんなでもうすぐあいつに会える。最後に会ってから1ヵ月半くらいか。長かった。彼女は俺にレモンパイという曲を教えてくれた。京都から横浜に戻ってくる新幹線の中で聴きながら思い出してエモくなれるような自分はちょっと好き。後半は惚気てしまったけど許してくれ。あいつさえおれば後は何があっても生きていける気がするっていう気持ちをこの歳で初めて感じちゃったりもしてな。そんな幸せな時間を、ここ最近は満喫している。

ちょっと酔っ払った勢いで書いてみたけど、明日起きたらなんじゃこいつってなるんやろうな。今日もハイボールが美味い。

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