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リバーにおけるブラフベット/ブラフキャッチの判断基準~AKQ gameは役立たず~

I.AKQ gameの有用性と無用性

GTOを理解する上で重要なコンセプトである、indifferent(インディファレント)を学ぶ上で、AKQ gameは非常にシンプルでわかりやすいトイゲームだと思います。

以下では簡単にAKQ gameの概要をまとめます。

SPR1のriver
OOPはKKを持っている
IPはAAかQQを持っている
お互いのベットサイズはpot bet(ALL IN)のみ
レーキなし
OOP strategy
IP strategy
OOP strategy facing IP ALL IN

お互いの戦略をまとめると以下の通りです

①OOPは100% check

②IPはAAの100%頻度でbet, QQの50%頻度でbet(value:bluff=2:1)

③IPのbetに対して、OOPはKKの50%頻度でコール

つまり、IPは2:1のバリューブラフ比でベット(オールイン)レンジを構築し、OOPはKKの50%でそれにコールすることが均衡となります。

AKQ gameの構造を理解するためには、MDF(Minimum Defence Frequency)とα, バリューブラフ比という概念の理解が必要です。

※MDF..相手の特定のブラフハンドのブラフとチェックのEVを同じにするために必要なコール頻度

※α..ブラフハンドのEVが±0になるために必要な相手のフォールド頻度

本記事にてブラフハンドとは、リバーにおいてEQ 0%のものを指しています。

以下、計算式です。

MDF=pot/(pot+bet)
=100/(100+100)
=0.5(50%)

α=1-MDF
=0.5(50%)

ブラフ頻度=call/(pot+bet*2)
=100/(100+100*2)
=100/300
=0.33(33%)

バリュー頻度=1-ブラフ頻度
=1-0.33
=0.67(67%)

バリュー67%に対して、ブラフを33%混ぜるため、バリューブラフ比は2:1(67:33)となります。

なぜ、これらの比率でアクションを行うべきかというと、ベットする側(IP)視点、適切なバリューブラフ比でベットレンジを構築することで、コールする側(OOP)のKKをコールしてもフォールドしてもEVが変わらないようにするためです。

もし、バリューブラフ比が2:1から崩れた場合、OOPのKKに与えられるポットオッズが良くなる若しくは悪くなるため、コール/フォールドのどちらかのみを選択することが最適アクションとなります。

また、コールする側(OOP)視点、適切なディフェンス頻度を構築することで、ベットする側(IP)のQQをベットしてもチェックしてもEVが変わらないようにするためです。

もし、ディフェンス頻度が50%から崩れた場合、αを超える若しくは下回ることになるため、IPのQQは、ベット/チェックのどちらか一方を選択することが最適アクションとなります。

以下では2つ例を示します。

・IPのQQのベット頻度が49%だったら?(適正値50%)

IPのQQのベット頻度をnode lock

先ずはGTOを確認します。

IP strategy+EV(GTO)
OOP EVは25.00
OOP strategy facing ALL IN+EV(GTO)


次に、node lockの結果です。

IP strategy+EV(node lock)
OOP EVは25.50
OOP strategy  facing ALL IN+EV(node lock)

・OOPのKKのコール頻度が51%だったら?(適正値50%)

OOPのKKのコール頻度をnode lock

先ずはGTOを確認します

IP strategy+EV(GTO)
OOP strategy  facing ALL IN+EV(GTO)

次に、node lockの結果です。

IP strategy+EV(node lock)
このときのOOPのEVは24.50
OOP strategy facing ALL IN+EV(node lock)

このゲームにおいて、混合戦略のハンドの頻度が1%均衡から外れたとき、相手からエクスプロイトされることで、頻度をミスした側は0.5のEVを失います。

このような状況を避けるために、双方は適切なバリューブラフ比、ディフェンス頻度を構築することで、相手の混合戦略のハンドのアクションEVを同じにしているのです。

このようにして、各ハンドに適切な頻度のアクションを振り分けられ構築された片方のレンジ(適切な数値)に対して、複数のアクションのEVを同じにされたもう片方のハンド群のことを、indifferentといいます。

片方の適切な頻度の振り分けによって、もう片方のindifferent群が構築されるということは、この概念を理解するために抑えるべき重要な点です。

また、片方の頻度の振り分けが、適切な頻度から外れた場合、もう片方はエクスプロイトを実行可能になるという点には留意すべきです。

適切なバリューブラフ比によって構築されたベットの目的は、相手のキャッチャーをコールしてもフォールドしてもEVが変わらない状況(indifferent)に追い込み、ベッターのレンジ全体のEVを保証することにあります。

本記事にてキャッチャーとは、ベットレンジ内のバリューの下限に負けているハンドのことを指しています。

そして、この重要なコンセプトを学ぶために有用なアプローチのひとつが、このAKQ gameなのです。

しかしAKQ gameはあくまでも、indifferentの基礎的な概念理解のために有用なものであり、実際のリバーの局面を考えるときにはむしろ無用だと私は考えます。

理由は以下の通りです。

①ブロッカーを加味したバリューブラフ比構築をしていない

②ブロッカーとpure call群を加味したディフェンス頻度構築をしていない

③ perfectly polarlized rangeのバリューブラフ比とそれに対するディフェンス頻度構築は起きえない

※perfectly polarlized range..EQ 100%とEQ 0%で構築されたレンジのことです。

本記事では、ブロッカー付きtoy gameを用いて

①ブロッカーを加味したバリューブラフ比構築

②ブロッカーとpure call群を加味したディフェンス
頻度構築

③ 非perfectly polarlized rangeのバリューブラフ比とそれに対するディフェンス頻度構築

について解説した後、実戦に生かせる学びについて解説していきます。

例えば具体的には

CO with A♥Q♦ vs BTN 3BP

Q♥9♦3♣(16.5BB)
CO x/c
BTN b 5.45BB

4♥(27.4BB)
CO x/c
BTN b 20.55BB

2♥(68.5BB)
CO x/?
BTN ALL IN

のような、ベッターのバリューもブラフも両方ブロックしているハンドの適切なアクションを考える判断材料を提示します。

有料部分のII~IV章では、PIO Solverを用いて作成したtoy gameを元に解説をしていますが、ただ流し読みをするのではなく、それぞれに与えられたレンジを見て、お互いがどのような戦略を構築するのかを予想しながら読む

提示されたtoy gameと、AKQ gameとの差異を意識しながら読む

特定のnode lockをかけたものを提示しているので、それを受けてどのようなエクスプロイトが実行されているのかを考察しながら読むなどすると、より理解が深まるのではないかと思います。

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