雨を楽しむ10の方法

1.
雨をよける

しゅんしゅんってね!
バリアーっ!つってね!



2.
雨を糧にする(のむ)

酸性雨なんて気にしない!
ちょっとぴりっとするくらいが
ぼくの舌にはちょうどいい!



3.
雨を愛でる

好きだー!
雨ぇぇー!
おれだけに降ってこい!



4.
雨を考える

みんなは雨は天気の神様のおしっこだっていうけどさ!
実際おしっこだったらすごく嫌だね!
ぼくは嫌だよ!
でもね!
ちょっとぴりっとするくらいが
ぼくの舌にはちょうどいい!



5.
雨をグローバルに考える

僕達が雨を煩わしく思うのは、僕達が水というものの価値をわかってない、わかろうとしていないからだよ。それに気がつけないんだよ。世界では飲む水さえままならない地域で暮らしている人がたくさんいる。なんでこんな哀れな僕達のところに雨は降るんだろうね。この嫌われ者の雨が、どこかのだれかにとっては恵みの雨になるのに。たとえ、これが神様のおしっこであっても。彼らはそれを知らない。おしっこなのに。ププっ。



6.
雨に愛想を尽かす

もう。しつこい。
わたし、疲れたの。
あなたにはわかんないでしょうね?
言ってあげましょうか?
恋しいのよ!
お日様が、あの人が恋しいの!
もう、やんで!
いますぐにやんでよ!



7.
雨を万能な言い訳に使う

それに雨だしね?



8.
雨をのけ者にする

えーちょー雨降ってるよ
まじないんですけどー
雨とかまじなくない
あーでもー外で体育とか
髪バシバシになるから
やなんだよねー
わかるー
でも体育館でだったらどうせドッジじゃね
ああーきらい
保健室いこー
いこー



9.
雨をのけ者にする輩と真っ向から対立する

雨だから雨だからってなんだよ!
雨の何がいけないんだよ!
雨でもできるじゃんかっ!
てかっ、雨のが楽しいじゃんかっ!
ほらっ!はやくっ!
雨だからできないとかいってないで!
さっさと体操服に着替えろよっ!
女子っ!
ほらほら!
なんならカッターシャツのままでもいいからさっ!
むしろカッターシャツのままでいいからっ!

はやく雨に濡れろよっ!!



10.
雨宿る


僕は雨がすき
雨子は雨がきらい


突然降ってきたね。屋根あってよかったよ。今日雨降るって言ってなかったのになぁ。

天気予報ってあてになんないよ。

またそんなこと言って、雨子傘持って来てないでしょ?

傘はきらい。

雨がきらいなのに?

雨がきらいだから。

そっか。
雨、すごいね。

うん。

この雨だと君の家まで帰るのは大変だから、僕の部屋に寄って来なよ。ここから近いから。

うん。

****************

雨ひどくなってきたよ。

そう。

どうしたの?
さっきから変だよ。

何でもないよ。

きっと雨だからだね。

どうして?

だって、雨子は雨がきらいなんでしょ?

どうしてきらいか考えたことある?

え、いや、どうして?

ううん。わたし、帰るね。

ちょっと待って、あのさ、今夜は泊まってきなよ。君の家までは遠いし、それに、そと、雨だしさ。

だから雨ってきらい。

え?

じゃ、また。

ちょっと待ってよ!


僕がとっさに彼女の細い腕を掴むと、彼女は力強く僕のうでを払った。


触らないで!

な、なんだよ。
どうしたんだよ?

いいの、帰るから。

待ってって!
今日は泊まってきなって。
ほら、雨もひどいしさ。
別に遠慮なんて、

しつこい!
いいの。ちがうの。
大丈夫だから。

何が大丈夫なんだよ!
わかんないよ!
ちゃんと言ってくれないと

君には言ってもわからないよ!

そんなの言ってみなきゃわかんないよ!
おかしいよ!
学校でもなんかさけてるみたいだし。

さけてるのはわたしじゃないよ!君だよ!見えない壁つくってる。そりゃ、わたしがいたら女の子と楽しいおしゃべりができないもんね。楽しいよね。だって恋人がいる君に女の子たちは警戒心を抱かないんだから。

なんだよ!べ、別にそんなつもり!
自分だって、自分だって晴太と仲良さそうにしてたって!

なに、わたしが?
晴太くんと?そんなのいつ、

女の子に聞いたよ!
仲良く手をつないで帰ってたって!

そんなことわたししてないよ!
君はそうやって他の女の子の言うことを何でも飲み込んで、わたしには何も聞かないんだね。わたし信用されてないんだ。

ぼ、僕だって!
僕だって雨子のことを考えて!

君がわたしのことを?
全然考えてない。
考えてないよ。

そ、そんなこと!

もういい!
君は、安心だよね。わたしはいつでもいると思ってる。
でも、わたしは、、。
ううん。いいや。もう、いい。
これだけ言わせてね。
わたしは、こんなよくある言い方しかできない。でも、よくあるってそういうことだから。
わたしのこと当たり前だと思っているあなたは、きっと、わたしが当たり前じゃなくならないと、わたしの価値に気づけない。と、思う。そうであってほしいよ。
ああ、ほんとわたし、平凡だな。
じゃあね。


消え入るような声でそういうと彼女は僕の部屋を飛び出した。さびしさ色の水玉で溢れた雨の世界へと。

今すべきことが僕にはわからなかったけど。
僕は彼女の細い腕を掴んでいた、性懲りもなく。
力強く僕の腕を振り払った意外すぎる彼女の姿が脳裏をよぎる。僕はすぐに彼女の腕を離した。


ごめん。


ゆっくりと振り返る彼女の顔を見たら、彼女が雨のなかに飛び出した理由がすぐにわかった。


本当に、しつこいね、君は。


髪の先まで雨に濡れて冷たい顔をしている彼女を見て、僕は心からこの人のことが好きなんだなと思った。


冷たい雨の中、冷たい顔の彼女、彼女は怒っているのに、ずぶ濡れの彼女をとても愛おしく感じた。






やっぱり雨に濡れたカッターシャツは
めちゃくちゃイイなと思った。

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