性格カスタムショップ

いらっしゃいませ。



あの、先日、ここで性格カスタムをお願いした者なのですが。


えぇ、勿論覚えておりますとも。どうですか、その後は。それはそれは素晴らしい日々を送っておられることでしょう。それで本日はどのようなご用件で?



それが、、変わってないんです。



性格が、ですか?



はい、まったく。



それはおかしいですね。



それで、疑うわけではないのですが、、。



また、足をお運びいただいたと?



、、はい。



よく来て頂きました。有難うございます。性格の変化を感じられないということは、部分的なカスタマイズを行ったお客様にはよくあることです。詳しくお聞かせ願えませんか?



はい。えぇ、と。
まだ、以前と変わらず「怖気づいて」しまうんです。

僕は、怖がりで、とても、怖がりで、何を前にしても「怖気づいて」逃げ出してしまう。そんな人生を送ってきました。もう、嫌だったんです。だから、、だから、そんな僕の「怖気づく」性格からも逃げてやろうと思って、、ここへ。



、、、、。
あの、えぇと、お客様。
こ、これは、えぇと、それが、、
大変申し上げ難いのですが、、。



わらいますか?
わらいますよね。
「怖気づく」のが嫌だっていって、結局僕は自分の「怖気づく」性格、いや、そんな性格で人生を送っていくことに「怖気づいて」いるんだ。そうですよね。可笑しいですよねこんなの。でも、、でも、人にわらわれてもいいんです。僕は変わりたい!変わりたかった!だから、、だから、怖がりな、とても怖がりな僕だけど、ここに来たんです。



はい。えぇと、いえ、そうではなくて、あの、カルテを確認してみたのですが、あの、えぇと、はい。そのおっしゃることはよく分かります。ただ、ただですね、そうではなくて、あの、その、なんと申し上げていいのか。



、、なんですか。はっきり言って下さい。僕は無理ですか?僕の性格を変えることは失敗だったんですか?大丈夫です。言って下さい。ここから逃げることは、しませんから。



、、はい。
、、左様でございますか。

では!申し上げましょう!
お客様、あなたはご自分の性格の「怖気づく」部分を「怖気づかない」にカスタマイズした、と思っていらっしゃいますね?



は、はい。



違うのです。



え、え?
えぇと、、え?



そうではないのです。



え!
ど、どういうことですか?
もっと別の角度から、とか?



違います。



ち、違うんですか?じゃあ、どういうことなんですか?



落ち着いて聞いて下さい。
「叔父エズかない」なのです。



ん?えぇと、それは、
ん?



つまり、こういうことでございます。お客様の「怖気づく」性格を「怖気づかない」性格にカスタマイズするには、多大な費用と時間がかかってしまいます。そこで、ご予算的にも今回はお客様の「怖気づく」性格をそのままに、「怖気づかない」性格パーツをお客様の性格に付加するというカスタム方法をとることにいたしました。その際、「怖気づかない」性格パーツを付加するはずが、どうやら、「叔父エズかない」性格パーツを付加してしまったようです。

「怖気づかない」ではなくて、
「叔父エズかない」なのです。



はい?
えぇと、それって、あの、



はい。ミスでございます。



ミ、ミス?



はい、ケアレスミスです。



い、いや、ケアレスミスって!
ケアがレスにもほどがあるでしょ!



左様でございますね。



そ、そんな!僕は!僕は変われると思って!こ、ここに来たのに!こ、、こんなのって。、、あんまりだ、、。



お客様、どうかそのように悲観なさらずに。

叔父様はエズかれなかったでしょう?



知りませんよ!!
知ったこっちゃありませんよ!!

ていうか!それなんなんですか!僕の性格関係あるんですか!?ないですよね!?僕の叔父がエズくのと僕の性格には何の関係もないじゃないですか!ていうか!僕に叔父がいるかどうかなんてわかんないじゃないですか!なんなんですか!その性格パーツの需要はどうなんですか!



しかし、叔父様はおられるのでしょう?



い、いますけど!



それで、叔父様はエズかれなかったのでしょう?



知りませんって!



心中お察しします。



なんという嘘!



そうは言われましても結果は出ていますからね。



だから!嘘でしょう!?それも嘘でしょう!?確かめようがないじゃないですか!そんなのわからないでしょう!?



左様でございますね。前例がありませんから。まあ、ですから、お客様が第一号でございます。



なんて人だ!この人は!
話がまったくできないタイプの人じゃあないか!



まあまあ落ち着いて下さい。



落ち着いていられませんよ!意味のわからん性格にされて落ち着いていられたら、それも性格カスタムのなす技でしょうが!直してください!いますぐに直してくださいよ!



はい、それは当然可能でございます。
しかし、宜しいのですか?

叔父様はエズき始められますが?



執拗ですね!いったいその自信はなんなんですか!もう!いいですよ!叔父っていうのはエズく生き物なんですよ!ていうか!それやっぱり僕の性格関係ないですよね!?



承知いたしました。
では、早速、性格カスタムを。



次はちゃんと頼みますよ!
「怖気づかない」性格にして下さいね!



はい。ですが、残念ですね。



え、、?



せっかく素敵な性格をお持ちなのに。
あ、いえ、独り言です。



、、、、。
あなたには、わからない、、、、。



怖がりというのは「上手い」人ですよ。いや、上手くなり得る人です。せっかく逃げる才能もお持ちなのに、もったいない。逃げ方を変えれば、逃げる方向を変えれば、お客様は上手い人になれます。
怖さを乗り越える人は「強い」人なのかもしれません。怖くなければ、乗り越えられない。乗り越えなければ強くなれない。そんな風に説くほうが立派なのかもしれませんね。
ですが、私はそうは申しません。乗り越えることだけが、強くなることだけが、道でしょうか。無論、どちらにせよ、怖いものがよく見えているほうが進みやすいと、私は思いますがね。
おっといけない、おしゃべりが過ぎましたね。申し訳ございません。では、カスタムのほうに。



、、、、。

あの!



どうなさいました?



やっぱり、、、いいです。



宜しいのですか?



、、、はい。
、、、僕、もう少し、怖がりでいようと思います。
なんか、怖くなっちゃいました。



左様でございますか。
それは何よりでございます。



あ、でも。



はい?



「叔父エズかない」だけは、カスタマイズし直して下さいね。なんか気持ち悪いんで、。



勿論でございます。ただ、時間がかかりますので、カスタムは先程の方法で宜しかったですか?



もうなんでもいいですよ。
どうせ、、でしょ?



おやおや、信用を失ってしまったようですね。



はははは



はははは











これで、カスタムは完了でございます。
またのご来店をお待ちしております。



ここのこと気に入ってしまいました。
また、来ますね。



はい。お待ちしております。



あ、そうそう、それと、僕の叔父が「一人かどうか」もわかんないでしょ?



ははは、左様でございますね。



へへへ、ではまた。



有難うございました。




















いらっしゃいませ。



あ、あの、、ォェ。



どうなさいました?
顔色が悪いようですが?



いろんな病院に、ォェ行ったのですが、ォォ、ゥェ、原因がわからず、ォェ、以前、甥が病院よりもいいところがあると言っていたのをォェ思い出しましてォェ、う、う。



左様でございますか。
当店はあらゆるお客様のあらゆるニーズにお答えできるよう、あらゆる性格を取り揃えております。
きっとお客様にぴったりの性格がございますよ。



そ、それはォェ、ありがたい、オェ。
性格ではないのですが、その、
エズくのをとめたくて、オェ。



かしこまりました。では、
「餌づかない」性格なんてどうでしょう?

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