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なぜ人は無謀な言葉遊びをしてしまうのか

『言語学バーリ・トゥード』という本を読みまして、言葉とか会話にはそれが成立する条件があるということを知った。だいたいお笑いかプロレスの話で最高なのでぜひ読んでみてね。

読むなよ、絶対に読むなよ!

①往年のギャグを使用パターン

さて、言葉を考えたときに人がたのしんでやりたくなるのは言葉遊びである。

「わかった!OK。OK牧場です。」

ほほう…この2024年にOK牧場とな。なかなかガッツのあるやつでよろしい。
これはかつてガッツ石松氏が監督としてメガホンをとったときに「OK!」と「ララミー牧場」が混同してしまい「OK牧場!」と言ってしまったことに由来するワードであるそうだ。詳しくは調べてね。

さて、前述のガッツのあるやつはその元ネタを知っていて引用したのであろうか。考えうる選択肢は4つ。少しややこしいがこの文章の骨となるところなので読んで欲しい。

A…元ネタを知っている。かつ相手もその元ネタを知っている(と思って使っている)。
B…元ネタを知っている。しかし相手は元ネタを知らない(と思って使っている)。
C…元ネタを知らない。しかし相手は元ネタを知っている(と思って使っている)。
D…元ネタを知らない。かつ相手も元ネタを知らない(と思って使っている)。

多くの人がDに当てはまると思う。そして、おそらくCはほとんどないのではないか。逆にそんな場面があるのなら一度でいいから見てみたい

しかし「OK牧場」には由来だけですまないパワーがある。由来とは関係なくその面白さからギャグへと昇華された。ジャイロの鉄球の技術がパワーアップしてスタンドになったようなものだ。

つまり「ギャグとして世間一般に認識されている」という認識に基づいて人は言う、OK牧場!と。

言葉遊びのパターン①『往年のギャグを会話につなげる』だ。ちなみにさきほどの私の「一度でいいから見てみたい」も笑点の大喜利の歌丸師匠の冒頭のあいさつ「一度でいいから見てみたい、女房がへそくり隠すとこ」から来ている。

このパターン①はとにかく種類が多いであろうことが想像できる。

「ん?いいよ。いぃよぉ〜」(新喜劇アキより)

「書いてますよ…安心してください、書いてますよ!…なんつって」(とにかく明るい安村より)

このパターンに限らず言葉遊びは会話の途中で思いついてそのままの勢いで言っちゃうことが多い。あと、言ってしまったあとに相手のリアクションを待つ『間』を作ろうとするのはおじさんによく見られる。気をつけようね。


②印象深いワード使用パターン


言葉遊びのパターン②は『ギャグではないが印象深いワードを会話につなげる』だ。

これに関してはナインティナインの岡村隆史氏の右に出るものはいない。左に出るものはいるかもしれないが。彼はその才をラジオで長年に渡って発揮している。

「シャイやからね…トゥーシャイシャイボーイやからね」(観月ありさより)

「ギリギリやな…ギリギリchopやわ」(B'zより)

これを一般人が日常会話に入れ込むのは少しチャレンジだ。なぜならその元ネタを相手が知っているかどうかがわからないからだ。

往年のギャグであれば「おそらく相手も知っているだろう」で使用しやすいのだが、マニアックになればなるほど面白さは増し、面白さを共有できる人数は減っていく。
真空ジェシカが松本人志氏から「我々と真空ジェシカの距離感」と言われるM-1での試行錯誤もこのあたりに起因すると考えられる。

このパターンが無謀になるかどうかは冒頭のA〜Dの4つの選択肢のどこにあてはまるのかによる。「相手は元ネタを知っているのかどうか?」によるということだ。このパターンの真の面白さを発揮できるのは選択肢Aであり、それ以外の選択肢はすべて「面白くなくなるかもしれない」というリスクを含んでいる。

ちなみにこのパターン②には発展系があり特定の集団だけが共有する印象深いワードというものがある。世間には認知されてなくても俺たちだけのお気に入りの言葉。発展というよりはより局地的と言った方がいいかもしれない。

私の一例で言うと

私「無いものねだりやな…無いものねだりのI want youやな」
友人「ムガムチューやな」
私「君に夢中やな」
友人「君にブチューやな」

ついてこれているだろうか…会話の言葉遊びが始まり、それから二人が気に入った曲のフレーズを展開していくという掛け合い型言葉遊びである。(リップスライムのGalaxyより)

とにかく個人的には言葉遊びの真の面白さがこのパターン②にあると思っている。かつ無謀な(面白くなくなる可能性が高い)言葉遊びになるのもこのパターン②だと考える。


③内輪ネタパターン

最後のパターン③は『内輪にしかわからないネタを会話におりこむ』だ。これがいちばん狭い世界であり、いちばん無謀な言葉遊びにもなりにくい。

前述の選択肢A〜Dで言うと、おそらくAの「自分も相手もそのネタを知っている(と思っている)」という状況でしか発生しない言葉遊びである。

これは一例を出すのもはばかられるが、ここまでの長文を深夜のテンションで書いてきたので仕方ない。私の例でいうと

私「無茶苦茶やな…」
友人「カオスやな」
私「いやケイオス
友人「いやチャオス

ちょっと書いてて恥ずかしいんですけど…まあいいか。これは元ネタなんてなくて、カオスという英単語(chaos)の発音や読み方でふざけるという内輪ネタである。ちなみにLUNA SEAのツアータイトル『BRAND NEW CHAOS』はブランニューケイオス。


私は言葉遊びが好きだ。

言葉遊びは相手とのキャッチボール。

暴投気味に「相手がわからないことをあえて言う」笑いもある。ツッコミは「いやそんなん誰もわからんから!」だ。

いちばん楽しいのはお互いのストレートゾーンにボールを投げる瞬間。古典芸能を味わうような心地よさがそこには流れる。

でももし外角高めのボールが来たならば…

すいません野球詳しくなくて、野球でたとえるの限界があるのでこのへんで終わります。

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