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バックギャモンの大盤解説会を観て

過日、バックギャモンの名人戦準決勝の大盤解説会を我が店いっぷくで開催していただいた。非常に有り難いことで、関係者の皆さま、運営スタッフの方々に感謝したい。

さて私はバックギャモンにはそこそこ関心があり、自分の店以外の例会にたまに行ったり、対局動画を見たりするほどには向上心がある。一方でコンピュータ解析したり本を読んだりするほどまでには向上心が無い、実戦オンリーのゆるふわ勢である。ギャモンをやるのは大好きだが、ギャモンの世界のことは何も知らない、誰がどう強いかもよく知らない。名人戦の仕組み、知りませんでした。そんな人から見た解説会の感想を残しておこう。

ギャモンは観戦向き

前から思ってたけど、ギャモンって観るのがかなり楽しい。

・思考が可視化されている。

対局者は時計を押すまで、チェッカー(駒)の動きを実際にシュミレーションできる。動かしたり戻したりを何度でも出来て、見て比較検討してるのだ。どんな候補手で迷ってるかをつぶさに知ることができる。

・展開がスピーディで一定のリズム

ダイスを振り、チェッカーを動かし、時計を押す、という一連の動作は結構なスピード感で、情報が詰め込まれている。情報過多に慣れててせわしない現代人には退屈することなく心地いいかもしれない。

・ドラマティックな結末

将棋の観戦が盛り上がるのの要因はやっぱり、最後まで気が抜けない逆転のゲームだからだと思う。ギャモンもスリリングな逆転が多い。ダイスの目による予想外の展開に驚かされるし、その理不尽さにも崩れず立ち向かう人間の姿は感動的だ。

・AIというもう1人の解説者

ギャモンにおいてはAI解析を行うことが当たり前で、勝率や手の評価などを良いタイミングで確認できるのも情報としての厚みがあった。

秀逸だった「次の一手クイズ」

今回上記のようなそもそもの良さ以外にも、様々な工夫がされていた。

ダブリングキューブ(ゲームの点を倍にしようと途中で提示する。勝負を降りるかそれを受け入れるかを相手に委ねる。有利な方が安全勝ちしたり、より高得点を獲得するためであったりなど様々な戦略要素がある)をテイクするか、パスするか、の次の一手問題が出されていた。これが凄く良くて、思わず参加したくなった。

何故ならぶっちゃけ、私は将棋の次の一手アトラクションをめんどくさいと感じているからだ。まず候補手が限りなくある。解説者が選ぶのにも時間がかかり、尚且つそれ以外になる可能性もある。考えるのがめんどくさい。用紙に書くのがめんどくさい。集計がめんどくさい。

ダブリングキューブ次の一手は、テイクするか、パスするかの二択しかなく、非常にわかりやすい。しかも、非常に悩ましい。シンプルかつ奥行きがあり、実際、結構意見が割れた。回答はトランプを配り、テイクなら黒、パスなら赤のカードを出す。せーの、の一瞬で回答できる。二択なら初心者でも答えやすい。何となく、という曖昧な理由でも選びやすい。次の一手として非常に優秀だった。

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自分の現場にも応用したいこと

私は解説動画を観た経験はあったが、それでも専門用語が沢山出てきて付いていくのに大変だった。将棋や連珠は知識があるから、そういう困った状況になることが少ない。日頃知らず知らず初心者を置いてけぼりにしていたかもしれないなと我が身を振り返ることができた。実際に自分が観客になってみると、わかりやすく話すのって大事なんだなと実感できる。

とても良かったのが、今の局面でこちら側はこういう戦略を考えてる、こっちはこういう展開で勝つイメージで進めている、と方針を解説してもらったことだった。個々の手の細かい善悪よりも、大まかな考え方の方が響いた。これは連珠や将棋に応用したい。

合間にギャモン界の豆知識クイズをしてくださったのも良かった。対局観戦で疲れてた頭がリフレッシュできたし、少しギャモン界のことを知れた気分になれた。

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皆んなで感想戦

ギャモンの棋譜をソフトに入力すると、AIの解析結果も同時に出る。今回は終局後に対局者が解説会場に来て、スクリーンに写しながら振り返るという試みも行われた。ギャモン界はAIと本当にうまく付き合っていて、見習いたい。


などと色々なことを思ったけど、結局は対局の内容があまりにも素晴らしかった。皆んなで一喜一憂し、感動や驚きをリアルタイムで分かち合えたことが大盤解説会をやって一番の良かったことでした。

解説者の方が私の世界選手権の記事を読んで下さっていたそうで、「泣けましたよー!ギャモンもこうやって世に伝えていきたい」とありがたい感想をいただいた。実は連珠世界選手権の記事はギャモン方面からの反応が多く、今回名人戦で優勝された中村慶行さんも読んで下さったそうだ。非常に光栄で嬉しい。

私は根っからの観る将、観る珠で、ギャモンをちょっとまじめにやろうかな?と思ったきっかけの一つに、代官山例会でお互い無言で真剣にポイントマッチをされてた方々の姿がかっこよかったから、というのがある。それまではワイワイガヤガヤ出目に一喜一憂しながら対局してるイメージがあった。その日見た方達は将棋のプロ棋士みたいにクールに考えていて、憧れを抱いたのだ。

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今回の名人戦は対局室も観戦できたが、やはり張り詰めた空気が漂って、物音一つ出せないくらいの緊張感があった。ギャモンの世界のことももっと知りたく、これから観戦文化が活性化されるのを大いに期待しています。









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