美しい夢

美しい夢、それはどうして美しい?

自分の夢を見なくなったからか、人の夢にウンザリしていたからか

いつしか忘れていた感覚を思い出すように

美しい夢を見ることの喜びがあった

それはどうして美しい?

空疎で、排他的で、保守的で、

それでいて、そのことに無自覚な、

そんな夢には飽き飽きしていた.


美しい夢、純粋な夢。

泥やスクラップばかりのゴミ山から、

なんの価値も見出されなかったモノたちが、

宙を舞いながら、解け、結ばれ、

一つの球として浮かびあがってくるような夢がある。

未だ形はないけれど、そこに確かにあって、

何より、自らが形作られることをぼくたちに求めるような、

そんな夢がある。

それを見るや否や、わたしたちは、

夜に飛ぶ虫が光に引き寄せられるように、

公園で遊んでいる子たちに「入〜れ〜て」と言おうとしている少年のように、

それに魅かれ、その一部になりたいと望む、

そんな夢がある。


誰かが唄った、夢を見ましょう、と

わたしたちはいつか眠りにつく。

誰かが言った、人の夢には気をつけましょう、と

それは自分の夢を忘れてしまうから。

ぼくは思った、暖かくて、弱々しい、そんな誰かの夢の一部にはなってみたい、と。

ぼくらの身体が、形作られる前に、

ぼくらの身体が、溶けた後にだって、

ぼくらは、本当は、ずっと一緒にいるんじゃないだろうか。



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