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いまさら聞けない脱炭素③:グリーン成長戦略(熱エネルギー産業&原子力)

この記事は、育休中のリスキリングを実践するため、Outputの場として執筆しています。
前回に引き続き、政府(経済産業省が中心)が策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」でピックアップされている14分野について、「今更聞けないけど、そもそもその技術ってどんなもの?」ということをざっくり知りたい方に向けて、簡単な解説をしていきます。
今日は、③次世代熱エネルギー産業と、④原子力について、書きました。

③次世代熱エネルギー産業

エネルギーは、電力として使用されるものもあれば、熱として使用されるもものもあります。日本の場合、産業・民生部門のエネルギー消費量の約6割は、熱として利用されています。その熱の供給と需要の脱炭素化を進めていく技術が、「③次世代熱エネルギー産業」に分類されます。具体的には以下のようなものがあります。

  • メタネーション(合成メタン):水素と二酸化炭素からメタンをつくる技術です。合成メタンは、都市ガスのインフラをそのまま利用できる点がメリットです。原料について、水素は水の電気分解でつくることで、二酸化炭素は発電所や工場などで回収したものを使えば、大気中の二酸化炭素を増やさすずに済むので、脱炭素に貢献します。

  • 水素の直接利用:技術としては、記事②の水素を参照。上述のメタンと異なりインフラ整備が必要なので、まずは地域限定での取組が期待されます。

  • クレジットでオフセットされた 天然ガスの利用:天然ガスについて、採掘から燃焼に至るまでの工程で発生する分の温室効果ガスを、植林等による吸収量で相殺することで、正味の排出量が0にして利用することです。

  • ガスコージェネレーション:利用拠点の近くにて、ガスから電力と熱を生産するシステムです。発電所で電気をつくる場合と比べて、エネルギーのロスが小さくなります。柔軟に起動できるので、天候等に左右されて出力が不安定な再生可能エネルギーを補完する役割も担えます。

  • ガスインフラの継続的なレジリエンス強化:ガスインフラにデジタル技術を導入することで、レジリエンスの強化(耐震性アップ)や省エネが図られることが期待されています。

④原子力産業

■原子力発電とは
原子力発電は、核燃料が「核分裂」するときに出るエネルギーでつくられる蒸気によってタービンと発電機を回転させ、発電するしくみです。

「核分裂」というのは、重い原子核に中性子がぶつかって、同程度の大きさの二つ以上の原子核に分裂する現象のことで、大きなエネルギーの放出を伴います。核分裂に伴って発生する中性子が原子核にぶつかることで、連鎖的に核分裂を引き起こされます(「連鎖反応」と言います)。


核分裂のしくみ
出所)中国電力ウェブサイト(閲覧日:2023年9月7日)
https://www.energia.co.jp/atom/more2.html

原子炉の構成要素には、燃料である「核燃料」、核分裂によって発生する中性子の速度を減速して次の反応を起こしやすくするための「減速材」、発生したエネルギーを炉外に取り出すための「冷却材」などがあげられます。
代表的な核燃料であるウランには、核分裂しやすいもの(ウラン235)と、しにくいもの(ウラン238)があります。発電には、核分裂しやすいウラン235の割合を、天然のウランよりも高めたものを使用します。

■原子力産業とグリーン成長戦略
さて、「グリーン成長戦略」では、以下の4つがポイントとして挙げられています。登場する技術系のキーワードを、簡単に解説することとします。
①国際連携を活用した高速炉開発の着実な推進
②2030 年までに国際連携による小型モジュール炉技術の実証
③2030 年までに高温ガス炉におけ る水素製造に係る要素技術確立
④ITER 計画等の国際連携を通じた核融合研究開発

  • 高速炉:原子炉は、核分裂で発生したエネルギーを炉の外に伝える役割を果たす「冷却材」により、いくつかの種類に分けられます。高速炉は、冷却材に液体ナトリウムを使用する炉で、軽水炉よりも中性子を減速しにくいという特徴があります。

    • 参考:軽水炉→軽水(普通の水)を使用、重水炉→重水を使用、冷却炉→炭酸ガスやヘリウムガスなどの気体を使用

  • 小型モジュール炉:これは上述の「冷却材」による炉の種別ではなく、従来の大型の炉に比べて小型で低出力な炉を指します。安全性・工場生産性・柔軟性に優れます。

  • 高温ガス炉:「構成材」に耐熱性の高い黒鉛(減速材)やSiCのセラミック材料(燃料被覆)を、「冷却材」に化学的に安定なヘリウムガスを用いることにより、軽水炉(300℃程度)に比べてはるかに高温(~950℃)の熱を取り出すことが可能な炉です。「発電」だけでなく、熱利用や水素製造への期待も高まっています。

  • 核融合(炉):核融合とは、水素のような軽い原子核が融合し、ヘリウムなどの重い原子核に変化することです。そのしくみを利用した核融合炉は、最高 1,000℃程度に冷却材を熱することができます。炉の暴走リスクがなく、安全性が高いことも特徴です。現在開発段階にあります。

あとがき

さらっと概要を解説、と思いつつも、自分でしくみを理解しながら書く過程で3000字近くなってしまいました。参考文献も結構多くなりました。Outputしようとすると、自分が何が理解できていないかがよく把握できるな、と思います。
個人的な話として、原子力発電のもう少し具体的なメカニズムについて、理解してみたいなと思っていますが、現時点ではもっと詳しいところを分かりやすく書いてあるサイトを見つけられていないので、今後の課題とします。

参考文献

経済産業省ウェブサイト(閲覧日:2023年9月6日)https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/ggs/pdf/green_honbun.pdf

資源エネルギー庁ウェブサイト(閲覧日:2023年9月6日)

資源エネルギー庁ウェブサイト(閲覧日:2023年9月7日)

東京ガスウェブサイト(閲覧日:2023年9月6日)
https://www.tokyo-gas.co.jp/sustainability/activities/cnl.html

中国電力ウェブサイト(閲覧日:2023年9月6日)

神奈川県ウェブサイト(閲覧日:2023年9月7日)

電気事業連合会ウェブサイト(閲覧日:2023年9月7日)

電験三種まとめましたウェブサイト(閲覧日:2023年9月7日)

日本原子力研究開発機構ウェブサイト(閲覧日:2023年9月7日)

日本原子力研究開発機構ウェブサイト(閲覧日:2023年9月7日)
https://www.jaea.go.jp/04/o-arai/nhc/jp/faq/

三菱重工ウェブサイト(閲覧日:2023年9月7日)
https://www.mhi.com/jp/products/energy/high-temperature_gas-cooled_reactor.html

三菱重工ウェブサイト(閲覧日:2023年9月7日)
https://www.mhi.com/jp/products/energy/fast_breeder_reactor.html

量子科学技術研究開発機構(閲覧日:2023年9月7日)

内閣府ウェブサイト(閲覧日:2023年9月7日)https://www8.cao.go.jp/cstp/fusion/1kai/siryo3.pdf

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