キュウリ『あなたの中のサル』268-269頁

二匹のフサオマキザルを左右に並ばせて、小石と食べ物の交換を25回ずつ交互に行なう。どちらももらえるのがキュウリなら、扱いは公平ということだ。フサオマキザルは喜んで交換し、満足そうにキュウリを食べる。では、いっぽうはキュウリのままなのに、もういっぽうにブドウを与えるとどうなるか。この扱いは不公平である。フサオマキザルの食べ物の好みは、スーパーマーケットで売っている値段と完全に比例しているから、ブドウはすごいごちそうだ。相手の給料が上がったことに気づいたフサオマキザルは、それまでキュウリも喜んでいたのに、とつぜんストライキに入る。交換をしぶるばかりか、いらいらして小石を投げたり、ときにはキュウリの薄切りも放り出す。ふだんならぜったいに拒絶しない食べ物が、欲しくないどころかむかつくものになったのだ!
フランス・ドゥ・ヴァール(藤井留美 訳)『あなたの中のサル』早川書房 2005 268-269頁

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?