ニワトリはそれを知っているでしょうか『ラカンはこう読め!』紀伊國屋書店 20081 61頁

もう何十年も前からラカン派の間では、〈大文字の他者〉の知がもつ重要な役割を例証する古典的ジョークが流布している。自分を穀物のタネだと思いこんでいる男が精神病院に連れてこられる。医師たちは彼に、彼がタネではなく人間であることを懸命に納得させようとする。男は治癒し(自分がタネではなく人間だという確信をもてるようになり)、退院するが、すぐに震えながら病院に戻ってくる。外にニワトリがいて、彼は自分が食われてしまうのではないかと恐怖に震えている。医師は言う。「ねえ、きみ。自分がタネじゃなくて人間だということをよく知っているだろう?」患者が答える。「もちろん私は知っていますよ。でも、ニワトリはそれを知っているでしょうか?」
ジジェク(鈴木晶 訳)『ラカンはこう読め!』紀伊國屋書店 20081 61頁

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