率直な言明『ラカンはこう読め!』41頁

われわれがここで論じているのは、人間の発話に本来そなわっている、言表された内容と言表行為との間の、還元不能な落差である。学問の世界で、同僚の話がつまらなかったり退屈だったりしたときの、礼儀正しい反応の仕方は「面白かった」と言うことである。だからもし私が同僚に向かって正直に「退屈でつまらなかった」と言ったとしたら当然ながら彼は驚いて言うだろう。「でも、もし退屈でつまらないと思ったのなら、面白かったと言えばいいじゃないか」。不幸な同僚は正しく見抜いたのだ――この率直な言明には何かそれ以上のものが含まれている、そこには自分の論文の質に関するコメントだけでなく、自分の人格そのものに対する攻撃が含まれているにちがいない、と。
ジジェク『ラカンはこう読め!』41頁

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