シンディ・クロフォードと寝たんだぜ『ラカンはこう読め!』28頁

この大文字の他者への内在的言及をテーマにした、下品なジョークがある。貧乏な田舎者が、乗っていた船が難破して、シンディ・クロフォード(アメリカのスーパー・モデル)といっしょに、無人島に漂着する。セックスの後、女は男に「どうだった?」と聞く。男は「すばらしかった」と答えるが、「ちょっとした願いを叶えてくれたら、満足が完璧になるんだが」と言い足す。頼むからズボンをはき、顔に髭を描いて、親友の役を演じて欲しいと言うのだ。「誤解しないでくれ、おれは変態じゃない。願いを叶えてくれれば、すぐにわかる」。女が男装すると、男は彼女に近づいて、横腹を突き、男どうしで秘密を打ち明け合うときの、独特の流し目で、こう言う。「何があったか、わかるか?シンディ・クロフォードと寝たんだぜ!」目撃者としてつねにそこにいるこの〈第三者〉は、無垢で無邪気な個人的快感などというものはありえないことを物語っている。セックスはつねにどこかかすかに露出狂的であり、他者の視線に依存しているのである。
ジジェク『ラカンはこう読め!』紀伊國屋書店 2008 28頁

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