コラムVol.- テレビの中に/KANさんのご訃報に接して
多くのKANさんの、ファンの皆さんに比べれば、僕がKANさんにワクワクさせて貰った時間は、13年程なので、こうやって言葉にするのは烏滸がましいとも思うのですが。普段、なかなかLIVEに足を運ばない自分が、KANさんを知ってからは毎回、予定が合えば参加したいと願っていたくらいには、ファンであったし、これからもそうだと思います。
KANさんのお葬式、遺影は夏目漱石に扮したアレ、返礼品はPOPなポップコーンだったらしいですね。KANさんの「どう?」なんて嬉しそうに垂れた目尻とニヒルに上がった口元が容易に想像できます。忌野清志郎さんのお葬式も、青山ロックンロールショー(CDも出ています)と銘打たれたご本人らしい派手なものでしたが、KANさんも、らしくて素敵です。
そもそももそもそ『KANと要のWABI SABIナイト』というラジオ番組がありまして、放送開始から楽しんで聴いていました。これが13年程前、2010年の事ですね。当時、僕はKANさんのファンでも、要さんやスターダスト・レビューのファンだった訳でもなく、その場に居合わせた人でした。音楽趣向からFM COCOLOをよく聴いていて、なにやら新番組が始まるということで。
この番組がFMラジオだというのに、声を張らない感じで。なんか呑気なんですよね。話す内容も、
KANさん「お好み焼き屋さんに入りましてね、アルバイトの女の子が"ご注文どうぞ"というんで、注文したあと"マヨネーズ抜いて下さいね"と、言ったんです」
要さん「KANちゃんマヨネーズ苦手だもんね」
KANさん「そしたら持ってきてくれたお好み焼きに、ちゃんとマヨネーズがかかってるんですよ。いやいや、と思って、まあこれは言わなきゃいけないと思って"すいません、マヨネーズ抜きとお願いしたんですけど"と言ったら、アルバイトの女の子が店長呼びに行ってしまって、いやいや、そんな難しいこと言った訳じゃないくない?と思っていたら、コワモテの店長が出てきて"なんぞ、プロブレムですか?"と、言うので、僕はマヨネーズが食べられないので、マヨネーズを抜いて欲しいとお願いしたら、マヨネーズつきが来ました、と説明したんです。そしたら"・・それは、プロブレムですね!"と言って、取り替えてくれたんですよ」
・・みたいな、とてもマイルドでニヤリとしてしまう話題が多く、いつも和んで聴いていました。
このひと、どんなひとなんだろう?と思って、一枚CDを買ってみる事にしました。コレです。一曲目の発明王からやられました。「あー、ラジオのひとだー和むー」と思いましたが「アレ?けっこう音自体はタイトだね」とも思いました。
僕はこの頃、ビートルズやストーンズ、スティーヴィ・ワンダーなどの洋楽をよく聴いていて、KANさんの音楽には、それらや、ビリー・ジョエル、スティーリーダン(というよりドナルド・フェイゲンかな)のようなAOR、だけでなく、ハマショーみたいな曲を作ってみたり、Perfumeみたいな曲をやってみたり、色々研究して研究結果を作品にする学者さんの様な側面があるな、と思いました。
ジョークや物腰の柔らかさで和ませてくれるし、同時に専門的な音楽造詣の深さで知的好奇心やワクワクも満たしてくれる、それでいてキザなこともポンと言うし、一途に素直な言葉を一生懸命紡ぐ大切さも教えてくれる。
そんなひとがKANさんだなあ、と思い。亡くなったとは、まだどうもよく分かりません。
ひとまず今からアルバム『6×9=53』を聴きます。
ムフー。おすすめです。
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