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逆噴射小説大賞2021振り返り

 800字の冒頭だけで勝負するパルプ小説の祭典【逆噴射小説大賞】、その2021年度のエントリー期間が終わりました。今年も2本ですが小説を無事投稿することが出来ました。感想やスキをくださる皆様、読んでくれた皆様、本当にありがとうございます。

 さて記憶が新しいうちに投稿作の振り返りを残しておきたいと思います。基本的に自分用のメモ書きで推敲なく滅茶苦茶ダラダラ書いてます(時間がなかった)が『この人は書く時にこんなこと考えてるんだなぁ』等ちょっとでも面白いと思ってもらえたら幸いです。例年やってるので下に張っておきますね。


1作目 オランダ幻覚旅行記

 お仕事もの書きたいかもな~でも俺社会人じゃないからREALさが出ないし……大学生ものだと幅が広いし……研究者ってとこまで行けなかったし……院生?院生良いなぁ、シチュエーションどうしよ。動きがないし……とかが発端になって生まれた作品。結果としてお仕事ものの要素がない。

 とはいえ背景になるお話はちょこちょこあるので解説をば。まずはライデンにある国立自然史博物館 (ナチュラーリス)。本当はな~大学の卒業旅行でな~ライデンに行きたかったんだよなぁ~このパンデミックでな~、ってのをインターネットでオランダがミームになったっぽいことがキッカケで思い出しまして。上野の科博の自然史展示も良いけど、やはり欧州でも屈指の博物館には行っておきたかったんですね。そうして舞台はオランダに。

 うちの大学で動物の系統分類をやってる先生がいて、その先生が研究してるとちょこちょこライデン行くらしいんですよね。なぜなら日本の動物のタイプ標本の多くはシーボルトによって作られてオランダに運ばれたから……(ニホンオオカミも)やっぱり予算がない日本の博物館よりリッチな標本庫してるらしいね……向こうは……そんな訳で僕も行ってみたかった。

 とは言え僕は系統分類の学生ではなく行動生態とかなので標本庫に入れはしないですけどね。タイプ標本を見る用事がない。作中の彼はオオカミの行動を研究する院生らしいですが……どう理屈をつけても修士学生が絶滅したニホンオオカミのタイプ標本を見る理由が趣味以外にない。研究室のボスはよくOKしたな。書きたいもの優先しちゃった感。でもバレへんやろ。

 タイトルもシーボルト関連。アジサイの呼び方に『オタクサ』ってのがあって、シーボルトの妻お滝さんに由来するとか。響きが良いので採用。何となく『アドルフに告ぐ』と繋がったのでこのタイトルに。問題はどうアジサイを絡ませるかですね……アサガオならチョウセンアサガオとかもあって幻覚作用が絡められて良かったんだけど。

 また鎖国時代の外交あれこれでライデン大学には歴史深い日本語学の研究室があるそうです。そのせいか割と大学自体日本の学生にも優しいとか何とか。こんなとこで日本語学の研究をしてるってことは酒井先生はすげぇ人だと思う。人文系の研究の世界はよく知らないけど……

 あとはオランダに何があったかなぁ~で切手……まぁ大麻が吸えるカフェの話だとか、ハイネケンだとかを要素に加えていって話が出来ました……ある程度は。部隊はライデン、葉巻を吸ってる(この葉巻もイリーガルなやつだと思う)ふくよかな教授、現地の妖艶な学生、海外に研究に来た修士学生……そのイメージは塊まっても展開が思いつかんかった。

 で……どうしたか。「ライデン タイプ標本」で検索!出てきたのはニホンオオカミ!これは皆知ってるし分かりやすいし、何より絶滅種には浪漫と謎があって良い。ありがとうGoogle。じゃあ狼に襲われるモンスターパニックにしようか、大麻を中心に狼の幻覚を見るサイコホラーにしようかとか色々考えたけど何ともしっくりこない。

 で……どうしたか。文章を書いてくれるAIに途中まで書いた小説を投げました。いやぁ凄いなぁこのAI。”狼憑き”ってワードを1発で吐いてくれて、それでビシっと全体が見えました。ありがとうAIのべりすと。

 そんな訳でAIにかなり助けてもらった小説でした。上手く雰囲気を作れたな~と思うので満足な出来。反省点はまぁ……逆噴射小説大賞なのに初めの800字をお店での会話に終始させちゃって動きがないことですかね。パルプみは薄い。いいもん、俺はこれが好きなんだから。


2作目 魔法の消えた世界で

 龍を長虫って呼ぶのカッコよくないですか?という訳で決まったタイトルが『屍人と長虫』。そこから難産だった。なるべくカタカナ語を使わず雰囲気を出すこととかは決めて……プールに泳ぎながら考えを巡らせてました。

 ドラゴンがいる世界観だからファンタジー。主人公は少年にしたい。辺境の遊牧民の子供はどうだろう。死人とは何だろう、主人公が死んでる?ゾンビパニック?ドラゴン=魔法の象徴みたいにして、そいつらが居ない魔法のない漂白された世界とかは?管理者側が魔法を独占してるとか?

 そうこうして悩んで産まれた第一稿がこんな感じ。

 屍人と長虫。『救世主』の発明によってこの世から消えたもの。余すところなく使い果たせる重大な資源。そしてあるいは、魔法を手にせぬ市民にとっては、魔法と可能性に満ちていた過去への憧憬を表す言葉でもある。
「屍体の継ぎ接ぎ野郎め!竜の血で動く救世主の傀儡め!呪われろ!呪われろ!お前ら皆!」
「呪いは最早この世にはない。世界が書き換わることはもうないのだ。感謝しろ、君の肉体は世界の資源になり社会を存続させる」
(中略)
「機能審査をパスしているのか?顔が赤いぞ、血の色だ。控え給えよ」 「少し戦闘がありましたから。後で血液は管理局に返却いたします」
 立ち去る11号を見送り、そのまま表情を変えぬように気を張りながら自室に入った。緊張からの解放、ただし息をつくことは出来ない。俺の呼気は既に竜の息吹と化している。模範的な身支度を済ませると寝台に入り、寝た振りをしてそのまま手を部屋の壁と寝台の間、隠した箱に伸ばす。俺の捨てきれぬ本能、欲求。まだ宝石と金には満たされないその小さな宝箱に今日の新たな収穫……銀の腕輪を入れるのだった。

 死体がエネルギーになるから死を弔うことが許されないリベリオン世界。エージェントは龍と人の死体の継ぎはぎ……そういうのが出来た。でも面白くならない。リベリオンってガンカタないと序盤が地味なんですよね、主人公に感情がないから小説にすると余計。という訳で主人公に本能を持たせて、対比として完全に感情がない上官を配置してみたんですが……あんまりワクワクしないので没に。

 そこから「親が親じゃないって怖いよな~」「SF読んだときに出てくるテレビ伝道師ってフレーズいいよな~」「父親にストーリーがあって息子が主人公は鉄板だな~」とかの要素を足していったのが今作です。

 いやぁ~書いてて楽しかったけど失敗した部分も多いなぁ。前年に続いて800字に入れるには要素を盛り過ぎてしまい、窮屈すぎる出来上がりになった。屍人で、長虫。とかは狙い過ぎた感もあって照れる。でも好きなもの詰め込んだだけあって嫌いになれないなぁ~~~ファンタジー好きなんだよなぁ~~~~


結び

 昨年から心の調子が悪くてちょっと今年は内的な振り返りを必要とされる執筆はあんまり出来なくて、そもそも色々人生が回っておらず今若干忙しくもなって時間も足りなかったのですが、それでも思い出深いお祭りに参加し好きなモノを書けたので良かったです。あともう一作書きたかったと思うのは求めすぎかなぁ~~

 ともあれ、本当に読んでくださった皆さんありがとうございました。来年もこの祭が出来ることを祈って!!

2021 11/02 夜 バッティ



おまけ

 こいつはおまけの今回用に考えてたタイトルリストです。タイトルから考えたやつもあれば中身から考えて決まったタイトルもあり。

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 中身も考えてるやつだと……

ゴシップメイカー:人が好きなのはゴシップかホラー。ホラーはよく知らないのでゴシップを基軸に書くか~という奴。ゴシップ好きがちょっとヤバイゴシップを掴んでしまうか、自分がゴシップの中心になるか……ってところで、もう一つツイストが欲しくなって放置。好きな感じの主人公造形は思いついたけどね。

メイキング・オブ・Z or ポルノ・ブードゥー・グラフィ:大学の後輩女子にAVを撮影してみたいと持ち掛けられた主人公。しかしその後輩はブードゥー魔術師でゾンビを巡る計画に巻き込まれることになる!!

西遊のシビト:屍人と長虫の派生タイトル。これ↓のリベンジ。

黄泉路道中膝栗毛:これ↓のリベンジ

オブライエンCEOへの華麗な革命:スーパーヒーローが何人も出てくるアクション作品。オブライエンはヴィランでメガコーポの社長で無敵。ほぼラオモト。そいつに雇われた不眠不休での活動が出来る傭兵(飯を食わんくても無限に活動できる。よって酸素も要らないしスタミナが無限)。主人公側には冷え性極まったブリザードDT、革命家の赤星、プラモデラー、そして通学鞄使いのオタクくん……それぞれ別個に考えてたキャラクターを全部集めてみようという試みでした。逆噴射でもできないし、もうやらないかな。

曾根崎蜃気楼:なじみ深い都市はやっぱり梅田なので定期的に舞台は梅田にしてる。妖怪モノが好きなのにまだ書いてないから現代の梅田に都市伝説の怪異みたいなのを放って~~とか考えてて出だしのシーンに詰まってしまった。


 3作目の余裕があったらこの中から何か出してたかな~書きたい舞台・キャラクター・設定・シナリオは結構あるので定期的に何か垂れ流していきたい所存です。




 





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