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#3【セラピスト・トレーナー向け】脳振盪の定義② -Definition of Sports Related Concussion-

それでは、少し空いてしまいましたが、続きを。

今回もより詳しい内容になるので、セラピストさん、トレーナーさん向けの内容になります。

The 5th International Conference on Concussion in Sports held in Berlin 2016の本文と、その翻訳を参照に進めていきます。

もしかしたらすでに現場でこういった内容を経験されている方は理解されているかもしれませんが、脳振盪に馴染みない方にとっては、「そういうこともありえるの?」という内容が端的に網羅されています。

前回の記事に載せた一言だけでは説明できない部分の補足として、以下の症状が含まれていると考えられる場合、スポーツ脳振盪の判断基準とします。

Several common features that may be utilised in clinically defining the nature of a concussive head injury include:
1. SRC may be caused either by a direct blow to the head, face, neck or elsewhere on the body with an impulsive force transmitted to the head.
2. SRC typically results in the rapid onset of short-lived impairment of neurological function that resolves spontaneously. However, in some cases, signs and symptoms evolve over a number of minutes to hours.
3. SRC may result in neuropathological changes, but the acute clinical signs and symptoms largely reflect a functional disturbance rather than a structural injury and, as such, no abnormality is seen on standard structural neuroimaging studies.
4. SRC results in a range of clinical signs and symptoms that may or may not involve loss of consciousness. Resolution of the clinical and cognitive features typically follows a sequential course. However, in some cases symptoms may be prolonged.
The clinical signs and symptoms cannot be explained by drug, alcohol, or medication use, other injuries (such as cervical injuries, peripheral vestibular dysfunction, etc) or other comorbidities (eg, psychological factors or coexisting medical conditions).

https://bjsm.bmj.com/content/51/11/838
脳振盪の本質を臨床的に定義する糸口として,以下のような特徴が挙げられる。
1. 脳振盪は頭部,顔面,頚部への直接的な打撃もしくは頭部へ伝播する他部位への衝撃によって生じる。
2. 典型的な脳振盪では,自然に回復する短時間の神経機能障害が急激に起こるが,ときに症状が分~時間単位で続くことがある。
3. 脳振盪が神経組織の病理学的変化を生じている可能性は否定できないが,急性期の臨床症状は主に解剖学的障害よりも機能的障害を反映しており,一般的な神経画像検査では異常は見られない。
4. 脳振盪はさまざまな重症度の臨床徴候を示し,意識障害は伴ったり伴わなかったりする。臨床症状や認知機能は通常,時間経過とともに順次軽快するが,ときに症状が長引くことがある。
臨床的な兆候や症状は,いわゆるドラッグやアルコール,服薬履歴やほかの合併損傷(例えば頚部損傷や末梢性の前庭機能異常など)あるいは他疾患(心理的要因や合併する医学的状態など)では説明がつかない。

https://drive.google.com/file/d/1xLaDHVNWiGFb-1WgOyOL03q_ln9bbWsj/view

1つ目、簡単に言うと脳振盪は頭への衝撃だけで起こるわけではない、ということ。頭を打っていないから脳振盪ではない、と勘違いされてる方もいます。

2つ目、SCATのような脳振盪を評価するツールにも含まれている問診事項の中にもあるような(SCATについても後日お話します)、頭痛であったり、めまいであったり、ぼーっとする、集中できない、等の症状がみられるかどうか。通常の外傷とは違い、患部の痛みや、可動域制限、筋力低下などではなく、神経機能に関する症状。頭に衝撃を受けているので、そういった症状の有無が判断基準になります。軽度の場合はすぐに治まることもありますが、長引く可能性もある、との記述です。

3つ目、脳振盪は外傷性脳損傷(軽度、Mild Traumatic Brain Injury)に分類されますが(こちらも後日記事で記載します)、日本語に訳すとInjuryが「損傷」となっており、誤解されがちですが、必ずしも器質的な損傷があるわけではなく、むしろレントゲンやMRIでは損傷はみられない。でも、2つ目で説明したような神経的な症状が現れる。レントゲン/MRIで異常なし ≠ 脳振盪ではない、ということではないですよ、という内容です。

4つ目、意識を失っていない ≠ 脳振盪ではない、ではなく(否定形ばかりになってしまいましたが...)、意識障害の有無に関係なく起こりうる。しかも重症度はまちまち。症状が長引くかどうかもまちまち。それって、脳振盪って判断しにくいですね... ってなりますが、それがまさしく脳振盪なんです。

本当に脳振盪の症状の出方や予後、症状を悪化させる要因は様々で、その人によって全然違う。なので、少し幅広めの定義にならざるを得ないんですね。

経験されている方は理解できるかもしれませんが、脳振盪の症状は様々、ということがこの定義の中でも見て取れる。そんな内容を今日はお伝えしたい内容でした。

今日は新たにリンクも貼りましたので、興味ある方は是非ご一読ください。両方ともオープンアクセスです。

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