筋痛性脳脊髄炎&慢性疲労症候群のケアを考える。

前回あんな記事を書いた後でしたが、リハビリ業界に明るい未来の話題にも触れることができたので、徐々に更新したいと思います。

11月に、青森学院大学主催の筋痛性脳脊髄炎のケアの講義と、
ロボットスーツHALの開発者の三海先生の講義を受けました。

まずはこちらから。

看護学部の基調講演ということで一般にも公開された公演でしたが、大変勉強になりました。
線維筋痛症の啓発の日が看護の日と重なっているのは、近代看護の基礎を作ったとされるナイチンゲールが慢性疲労症候群で50年床に伏したと言われるからだそうです。

そして講義は実際的な部分へ入っていきます。

筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群の実際と治療成功例

筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群は、
健康に生活していた人が、ある日突然原因不明の激しい全身倦怠感や疲労感、抑うつ等の症状が長時間持続して健全な社会生活が送れなくなる疾患のことで、確定診断に結び付く検査異常が特定されていないため診断が困難とされている疾患とのこと。

講義は治療成功例の論文から入っていきます。
Successful Treatment of Myalgic Encephalomyelitis/Chronic Fatigue Syndrome with Chronic Febricula Using the Traditional Japanese Medicine Shosaikoto (jst.go.jp)
伝統的漢方薬・小柴故湯を用いた慢性微熱を伴った筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群に対する治療成功例
こちらでは、西洋医学的診断と漢方医学的診断の両方で治療に成功した例で、VASと東洋医学の診療でPS6から1以下に1年3ヶ月で休薬にたどり着いた症例とのこと。

こちらはミノサイクリンの経口投与の治療についての論文です。

Oral Minocycline Therapy Improves Symptoms of Myalgic Encephalomyelitis, Especially in the Initial Disease Stage - PubMed (nih.gov)
ミノサイクリン療法が筋痛性脳脊髄炎の初期のステージで有効
概要だけ要約します。
<Abstruct>
・中枢神経システムの定義では、筋痛性脳脊髄炎が慢性疲労症候群の原因として提唱されてきた。
・慢性疲労の動物モデルで提唱され続けてきたミノサイクリン療法は、神経炎症の抑圧として作用すると報告された。
・ミノサイクリンは、このように長期にわたって筋痛性脳脊髄炎の患者に有効な治療効果であるかもしれない。
<方法>
・ミノサイクリンの経口投与については、100mgを2回(初日のみ)、あとは1日あたり100mgの41日間のフォローで筋痛性脳脊髄炎の患者に投与された。
・パフォーマンスステータススコアは0~9、10分間の起立不耐性テストと神経性の不安定性と神経痛が治療前後で比較された。
<結果>
・治療完了後、パフォーマンスステータスは27人の患者で2ポイント向上し好意的な結果が見られた。
・治療前、27人の患者の6人は起立性の不耐性があった(10分間の起立不耐性テストの完遂能力低下)。治療後、この兆候は4患者で消失したうえに、2患者で向上した。
・更に治療後、起立姿勢の頻脈は、繊維筋痛症もしくは神経疼痛の8人の患者中5人の患者で改善した。
<講義中の解説>
100名の参加者中、副反応なく内服を継続できたのは62名。
・副反応は、薬剤アレルギーがある参加者に多かった。
・先行研究でミノサイクリンは中枢神経におけるミクログリアの活性化を防ぐという報告あり。

ある日突然発症し、発症時の重症度は深刻

疫学調査では、こんなことが分かっています。
発症時の重症度はPS6~8でかなり重度の状態になってからこの病気が疑われることが多いとのこと。
そして発症に関与したと考えられるもので多いのが感染症と発熱。
そして症状を悪化させる要因としては、一番多いのが無理せざるを得ない状況で悪化するということ。
これは職場環境で理解が得られない所だと、かなりきついなという印象を受けました。

私も病院勤務だった時に親しかった内科医の先生が慢性疲労症候群で、
よく回復体位を取っていたので、当直に入る前にはリハビリ室を開けて
SSP(鍼治療と同等の効果がある物理療法機器)とリンパドレナージュの施術(ヨーロッパの理学療法過程では必須で、私はアメリカにいる時に片っ端から実技は取りに行った)をするのが日課でした。

そして疼痛の頻度では、4割の患者さんが常時痛みを抱えているということ。
そして8割以上の患者さんが睡眠障害を抱えていて導入剤を必要としていること。
家事をした後に7割の患者さんが寝たきりになるということ。
そして7割以上の患者さんが仕事が長く続けられないということ。
これは周囲の理解と助力が必要であることを示唆し、社会復帰には周りの支援が必要不可欠であることを物語っています。

通院が困難であれば、訪問看護利用対象であること

講義では、訪問看護の利用についても話がありました。
訪問看護は、原則通院が困難で、主治医が認めれば(指示書が出れば)、どんな疾患でも利用可能です。
訪問看護の良いところは、状態が安定していれば看護師の訪問最小限の時間ですが、
寝たきりや食事がとれなくなったときには、特別指示書が出れば自宅で点滴を受けることが可能です。
よく、線維筋痛症の診断名をつけてもらえないから利用できないという声を頂くのですが、
当事業所では、家族関係や友人関係がうまくいかずに拒食になった小学生でも訪問看護指示書は来ます。
なので、他の診断で指示書が出ても利用可能なので、在宅医療をしているクリニックを探してみるのが一番早いかなと思います。
血管炎でトイレに行けなくなったとリハビリ指示が出たりしますが、
初期評価で神経由来の筋力低下、ニューロパチーを疑う結果になって主治医に報告すると大学病院を紹介されて受診につながることもあります。
また看護師訪問で他の病気を疑う場合も、報告したら主治医から紹介状が出て、病院受診したら即日入院だったことも少なくないです。

訪問看護指示書は主治医の切り替えが可能

在宅医療では、原則通院が困難であることが前提なので、
最初の指示書は専門医で出してもらい、訪問看護指示書は在宅医療をしている近医に切り替えるケースも当事業所では多いです。

自宅で点滴が必要になると特別指示書というのが出ます。
特別指示書は原則毎日で、土日祝日関係なしで(指示期間)実施となります。

在宅医療をしているクリニックは、往診をしています。
なので通院が困難の方は、往診してくれる主治医を見つけておくのは必要かなと思います。
在宅医療をしている主治医を私が勧めるのは、
こういう所はケアマネージャーさんやヘルパーさん、訪問入浴、福祉機器業者や薬剤師さんがお薬を届けてくれるサービスが一度に整うからです。
訪問看護の依頼がきて、他のサービスを入れた方がいいという話からだと時間がかかります。
なので退院時に在宅医療をしているクリニックに主治医に紹介状を書いてもらい、
もしくは遠方の専門医にかかって指示書を出してもらい、
その後のフォローは近医で行う事が在宅医療では可能だということです。

在宅では、現在ICTを導入しており、患者さん毎に関係職種が招待されるアカウントがあります。

なので、毎日の変化に対する指示は迅速に関係職種が共有できます。遠方のご家族も加わってやり取り可能ですので、在宅医療の選択肢も検討してもらえればなと思います。            

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