カラーマネージメントの仕組み・基礎編

画像ファイルの多くはR,G,Bの値を持ちます。しかしR,G,B値だけでは正確な色が分からないのです。そこで画像ファイルに色空間の情報を埋め込んでおきます。sRGBやAdobe RGBがよく知られている規格です。なお、色温度も別途合わせる必要がありますが色温度は後に述べます。

デジカメやスキャナやモニタやプリンタはデバイス固有の色域を持ち、それはsRGBやAdobe RGB等とは一致しません。デジカメのセンサーで捉えた色を扱うにはsRGBやAdobe RGBやProPhoto RGB等、規格に則った色空間に変換されたデータを使います。(RAWデータをLightroomで読み込んだ場合、現像モジュール以外ではAdobe RGBに変換されて表示されます。現像モジュールではProPhoto RGBに変換されて表示されます。)

取り込んだRAWデータ等を高度なカラーマネージメントシステム上ではデバイスに依存しない、CIE Labに変換されます。カメラで撮影したデータには色温度の情報はないのでRGBの値が同じ場合に無彩色の扱いになります。Lightroomでは表示時にAdobe RGBやProPhoto RGB等に変換されて表示されますが、モニタプロファイルの色域に合わせて変換されて表示されてます。

モニターのキャリブレーションツールでは色温度を測れるため、絶対値のCIE XYZ*を用いてモニタプロファイルが作られる事が多いです。
例えばCIE XYZは D50の白色点が[0.9642, 1.0000, 0.8251]、D65の白色点が[0.9504, 1.0000, 1.0888]と定まった値であり、値が同じならば全く同じ色ということです。

モニタの色域はsRGBやAdobe RGBのカラースペースと一致しませんのでカラーマネジメントをしっかり行うPhotoShopなどではCIE LabのデータをCIE XYZの値で作成したモニタープロファイルに変換して表示します。
モニターのキャリブレーションツールではデバイス固有のネイティブな色域を計測し、指定した色温度でモニタープロファイルを製作します。カラーマネージメントシステムはCIE Labの値をモニターのネイティブな色域内に変換して表示してくれます。作成するモニタープロファイルはD50ネイティブやD65ネイティブのプロファイルを作るのが一般的です。

なお、モニターとキャリブレーションツールの組み合わせによってはモニターのネイティブな色域以外にsRGBやAdobeRGBの色域に近くなるような設定がある場合もあります。例えばD65でネイティブなプロファイルと、D65でsRGBのプロファイルをモニターの切り替えスイッチで切り替えてsRGBでの絵を確認するなどです。

プリンターに出力する場合、LightroomやPhotoshopではプリンタドライバに色を任せるのではなく、LightroomやPhotoshopが持つプリンタープロファイルを経由して印刷できます。プリンタドライバによるカラー処理をしないようにプリンタドライバを設定し、LightroomやPhotoshop側で、使用するプリンターと用紙に一致するプリンタープロファイルを指定します。プリンターと、印刷する用紙によってプロファイルが異なるので注意してください。そして印刷できる色域も用紙によって異なります。

この場合、プリンタードライバー上の色管理はオフにしておくことを忘れないようにしましょう。白色の基準は紙の色に依存します。また、印刷物を見るための光源は演色性の優れた光源でチェックしないと印刷物の色を正しく把握出来ません。印刷所で用いられる光源の色温度は5000Kが世界的にも一般的ですが、動画では6500Kが普通ですのでモニターを6500Kに合わせているプロも多いと思います。その場合、照明も6500Kの照明を使いましょう。部屋の照明の色温度が結構高くてモニターは5000Kだったりするとモニターを見た時に眼が錯覚して白が黄色っぽく見えてしまいます。

なお、いくらモニター等をキャリブレーションしても画像データのホワイトバランスは別途合わせる必要があります。グレーカードで現像時に合わせるだけでなく、撮影時にホワイトバランスをマニュアルにして合わせればカメラのモニターもホワイトバランスのとれた色で表示されますので撮影時に合わせるのは必須と考えるのが良いでしょう。

グレーカードを撮影していない場合は無彩色と思われる部分をLightroomなどのスポイトで吸って結果を見ながら合わせるしかありません。
グレーカードを写したデータは現像時にさらに微調整します。ただし電球色の色を出したりストロボにカラーフィルターを被せたりなど、意図的に効果を狙っている場合はグレーカードを写すのみで現像時も参考にする程度のことはわりとあります。

市販のグレーカードでは銀一のシルクグレーカードVer.2がA4で値段の割にムラも少なく使いやすいです。表裏で濃さが異なりますが明るいほうでホワイトバランスをとったほうが白に近い無彩色なのでカメラ側も精度良く合う可能性があります。18%グレーのほうは露出を合わせる目的で使う人もいると思いますが今のデジカメはクリッピング警告やヒストグラム表示が出来るので白飛びさせたくない場合はそちらの機能で白飛びに対して余裕のある露出にするのが良いでしょう。

また、光源の演色性が多少悪い時や、撮影環境が多少変わったりカメラが変わってもカラーターゲットを利用すれば同じ色に近づきますし、撮影時に使用したカラーターゲットを納品先などに渡しておけば撮影したカラーターゲットと見比べて貰えるかも知れません。販売されている製品ではDatacolor社のSpyderCheckrが48のカラーパッチがあってお勧めですが専用の遮光スリーブケースが重いのが少しネックです。反対面はグレーカードになってます。なお、利用にはLightroomなどの対応アプリケーションが必要です。SpyderCheckr:http://datacolor.jp/datacolor/camerasolutions/spydercheckr.html


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